COPPELIA


 


「これ、なに?」

ラクスの部屋のベッドに置かれている箱。きちんとされている部屋では無造作に置かれているソレはやけに目についた。

「オルゴールですわ」

名は耳にした事はあるものの実物を見るのは始めてで興味が惹かれた。

「見ていい?」

返答を聞く前に箱を手に取ると開けていた。特に駄目という事はなかったのでラクスはその光景を見ていた。

「へー、音が鳴るんだ」

開けると静かに音が鳴り出す。特に面白い事はないが見入っていた。
音にあわせて一体の小さな少女の人形がくるくると回る。バレリーナの何というポーズかはわからないが同じポーズのままくるくると回り続ける。
不思議と同じようには見えなかった。同じポーズなのに同じようには見えないという考えにアウルは笑った。

「これどうしたの?」
「誕生日プレゼントに以前いただいたのです」

振り返り聞くとそんな答えが返ってきた。自然と笑みが消える。

「アウル?」

様子がおかしいと思ったのか不安そうに呼び掛けてくるラクスに何でもないと笑って返した。

「不思議だよね……面白くもないのに見ていたくなる」

オルゴールに視線を戻すと呟く。
背中に暖かいものが触れると目を伏せた。

「言葉にはできない事はたくさんありますわ」

首に腕が回され目を開けると、ラクスの両手がオルゴールの蓋を閉めていた。

「ねぇ、もっと顔近付けてよ」

アウルが言うとラクスは言われたままに近付く。
近付けてくれた顔に更に自分から近付き頬に唇を寄せた。
離すと少し驚いた表情を見せるがすぐに笑みを浮かべ名前を呼んでくれた。

「今度はラクスからシテよ」

アウルは言うと顔をラクスに向け瞳を閉じた。


─何もなければ動かぬ世界
彼女を動かしたのは誰だろう
螺子を巻いて
永遠にその姿を手にいれたのは誰だろう
命を持たない人形も
音という静かな愛をもらって
ただ回りだす
それは哀しくも
とても綺麗な光景
ただ魅入るしかできなくて
せめて螺子を回す事はできないだろうか
なんて思う
きっと動かされたのは僕
回り続けるのは僕
ならせめて
この世界で一緒に回り続けよう─



H17.10



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