copper plate


 


「ラクスが書く字って綺麗だよね」

書き物をしていたラクスを後ろから覗きこんだ。ラクスはそうですか?と笑む。

「“ラクス”って感じ。字が好きっていうのも変だけど僕は好き」
「私もアウルの字好きですわ」

くすくすと笑うラクスにアウルも自然と笑んだ。

「僕の字きったないのに?ラクス変わり者〜」
「字は何度も書けばうまくなりますわ。上手い下手で好き嫌いと思うのではないかと思います」
「つまり……上手いから僕の字を好きだと言ったわけではないと」

少し前にしたラクスとの会話を思い出しながらアウルは呟いた。
ラクスは今はおらず、アウルはラクスが書き物をしていた机の前に佇んでいる。

「やっぱ好きと言われるなら上手い方がいいよな〜」

椅子に腰かけ、紙を用意しペンを握る。しかし何を書いたらいいかわからず唸る。
いっそ同じ字をたくさん書くとか自分の名前を書くとか考えるがやる気が起きない。

「……手紙」

でも宛てる人もいない。一人だけいるが一緒にいるのに書く必要があるのだろうか。

「渡さなければいいんだし」

そう思って書いてみる事にした。
決して長い文ではないものの手紙を書くなんて初めてで、書きながら何だか嬉しく感じた。
ずっと宛てる人の事を考えられる一瞬が嬉しくも楽しかった。

「アウル」
「何?」

自分の部屋にいるとラクスの声が聞こえ答える。
いつもなら扉が開くのに何故か開かない。
どうしたんだろうと扉を開くとそこにラクスはいなかった。

「あれ?確かに呼ばれんだけどなー」

一歩踏み出すとカサッと足下で音がした。視線を下に移すと白い封筒。

「僕宛て?」

封筒の宛名には自分の名前、裏にはラクスの名前があった。
封を開けると一枚の紙が入れてあり開くと綺麗な字が広がっていた。

「はっ……捨てたはずなのに何で手紙書いたなんて知ってるんだか」

手紙を封筒にいれ、自分の部屋のベッドに置くとアウルは部屋を出て行った。


─何も記しておく事なんてできないけど
一秒一秒はさらさらと流れて
どこかに溜まっていくんだろう
君を記すものになんてなれなくてもいい
君を見れるなら
それだけで……
錆ないように
掠れてしまわないように
壊れてしまわないように
僕が抱えてるから
だから記す続けて
だから綴り続けて
どんなに重たくても
どんなに小さくても
僕が抱いてるから─



H17.10.20



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