笑顔衝動


 


「そろそろ帰ろっかなー」

町中を歩きながら呟くとある店のショーウインドウの前で立ち止まった。
たくさんのケーキが並ぶショーウインドウ。別に甘い物が好きなわけではないが何となく眺めていた。

「ん?」

ショーウインドウに映る何かに気がつくとアウルはさっと横に避ける。すると何かがぶつかる音がした。

「アーウールー」
「僕のせいじゃないし」

ショーウインドウに顔面をぶつけた黒髪の少年、シンは怒った様子でアウルに体を向けた。

「本当に仕返ししようとするなんて馬鹿じゃねぇ?ショーウインドウに映って見えてるっつーの」

以前自分がシンにやった事をシンは根にもっていたらしく仕掛けてきた。しかし不発に終わってしないシンは不満そうだ。

「何ケーキ何か見てるんだよ」
「別に。見てちゃ悪い?」

ショーウインドウから顔を逸らし答えるアウルに、シンは先ほどアウルが見ていた場所からショーウインドウの中を覗いた。

「でかいケーキでも食べたいの?」
「だーかーらー!……辛気くさい顔」

少し大きな白いケーキにロウソクが立てられていた。
別にそんなつもりで言ったわけではないが顔に出てしまったかと思うと気まずくなりシンはアウルから顔を逸らした。

「シーンシンっ!」
「うわっ」

後ろから誰かに飛び付かれシンは体勢を崩しそうになるが何とか耐えた。

「……誰?」

アウルは訝しげにシンの背中に飛び付いた少年を見ていた。

「お前が髪の毛が性格表してるような跳ねっかえりか」
「は?あんた誰?」

いつの間にか横に見覚えのない少年が立っていた。初対面で失礼な事を言われているような気がする。

「ヴィーノ、ヨウラン!お前ら神出鬼没すぎ」
「知り合い?」

シンに飛び付いた方がヴィーノ、アウルの横にいるのがヨウランだとシンは説明した。

「シンとは悪友ってやつだ。よろしくな、アウル」
「……悪友なんていらない」

シンがぼそりと呟くがヨウランは聞こえなかったかのように流した。いつもこんな感じなのかと思うとアウルは笑った。

「ケーキ買うの?誰かの誕生日?」

ヴィーノが聞くと二人は先ほどの事と共に気まずさを思い出し、黙ってしまった。
何かを察したのかヨウランが口を開いた。

「アウル、手出して」
「え?何で?」

いいからと笑顔で促されアウルは片手を差し出した。

「あっ……」
「まあまあ、悪いもんじゃないし」

どこかで見たその光景から何かに気がつきシンは止めようとするがヴィーノに口を押さえられてしまった。
ヨウランから何かを手渡され、手の平のそれをアウルはまじまじと見る。

「シンにもやったんだ。アウルにもやるよ」

アウルの手にはシンの誕生日の時にシンに渡された物と同じものがあった。

「コレ使った事ないんだよね〜」

予想していた反応と違ったのか三人は驚いていた。
見た目的には可愛いといえる少年とソレは不釣り合いで、でも少年は平然と手にしている。

「アウル!ペッしろ、ペッ!」
「食べたわけじゃないんだから〜」

ヴィーノの手を退けると言うシンにヴィーノは苦笑した。

「シンももしかしてコレ使った事ないの?」
「掲げて近寄るなよ!」
「シンは使った事どころかヤった事もない」

ヨウランの発言にシンは怒ったようにヨウランの名を口にした。
アウルがそんな面白いネタに食いつかないはずがなく渡されたものを掲げたまま笑む。

「へぇ〜そうなんだ?」
「な、なんだよっ」
「でも生でヤっちゃうとこんなの使いたくなくなるよ?」

生々しい発言にシンは顔を真っ赤にし口をパクパクさせた。その様が面白くて余計からかいたくなる。

「それは何ですか?」

陰ったかと思うと聞き覚えのある声が聞こえ、二人は同時に横に顔を向けた。

「ラクスさん!?」
「ラクス?」

まじまじとアウルが持っているものを見つめるラクス。
シンは何も言えず元凶の二人を探すが二人はいつの間にかいなくなっていた。

「何か知りたい?じゃあ試そっか」
「アウル!」
「何?シンも試したいの?」

違うと言いたいがラクスに見つめられ言葉に詰まる。
何も言えないシンがおかしくて笑うと、アウルはラクスの肩を抱いた。

「何も言わないやつは置いて行っちゃお?」
「よろしいのでしょうか?」

いいのいいのとシンを置いて歩き出す。
そのままにするわけもなくシンは追いかけアウルの肩を掴む。

「何もしないって」

アウルは笑って言った。



H17.10.19



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