『ルナマリア&メイリン編』


 


「何とか家には帰れそうだな……げっ」

自宅が目前となり安心したのも束の間、またもや前方から見知った人がこちらへと歩いてきます。

「何よ、“げっ”って」
「まあまあ、お姉ちゃん」

ルナマリアさんとメイリンさんでした。
シンくんは一目散に逃げる事も考えましたが、ルナマリアさんに捕まるのが目に見えています。
この距離では走り出した瞬間に怪しく思われ、問答無用で捕まえるに違いありません。

「別に……」
「そのはぐらかし方は何かあるって言ってるようなものじゃない?」

つくづく自分ははぐらかすのが下手だと痛感してしまいます。
いつの間にか逸らしていた視線を前に戻します。

「まあ、いいわ。シンを探してたのよ」
「は?何で?」
「今日誕生日だからみんなで何かしようって」
「その割には祝う態度じゃ……何でもない」

ここは下手に反抗せずにおとなしくしていた方がいいと判断したようです。
ですが、その態度が二人におかしいと思われてしまったようです。

「何か……今日のシン変じゃない?」
「うん、少し」
「別に変じゃない!二人は何しに来たんだよ」

二人が距離を詰めようとしたため、シンくんは慌てて阻むように言いました。
近付かれてもしも帽子を取られてしまったら大変です。

「そうそう、みんな喫茶店で集まってるから呼びに来たの」
「家にもいないし連絡もつかないしどこに行ったんだー!って、なって」
「あ、そういえば携帯の電源切ってた。……みんな?」

ポケットにつっこまれた携帯を取り出し、電源を入れようとしました。
しかしボタンを押す前に“みんな”という言葉が引っ掛かったようです。

「そう。レイとヨウランとヴィーノ」

そこで友人に相談したらいいんじゃないかとシンくんは思いました。
決して今まで友人に相談しようと思わなかったわけではありません。ただ言ってどんな反応をされるか予想ができたからです。
でもこうなってはそうも言ってられません。

「そうなんだ。じゃあ待たせちゃ悪いから先行ってる!」
「え、ちょっと!」
「場所わかるのっ?」
「だいたい!」

集まる場所は大方予想ができます。二人が来る前に話したかったシンくんは急いで向かうのでした。
たとえこの状態を笑われても見放されはしないだろうと信じて。

「誕生日おめでとうも言わせないなんて……」
「すぐに店に行くんだしいいじゃない」

二人もシンくんのあとを追うのでした。




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