『アウル&ステラ&スティング編』


 


シンくんはさすがに疲れたのか公園のベンチに座って休んでいました。
濡れた帽子もだいぶ乾いたようです。

「今日はよく人に会うな……」

ぼそりと呟いて何かに気付いたようです。
うなだれた肩をあげて周りをきょろきょろと見回しています。

「あいつは変に勘がよさそうだからな。会う前に帰らないと」
「シン、帰るの?」
「えっ……!」

立ち上がって公園を出ようとした時後ろから声がしました。
慌てて振り返って身構えると、声の主はきょとんとシンくんを見ていました。

「ステ、ラ?」
「何だ?そんな身構えて」
「大丈夫……?」

声の主であるステラさんと横にスティングくんがいました。
今会いたくない人物ではなく安心したのも束の間、再び身構え聞きます。

「あいつは?」
「は?」
「あいつ……?」

聞くよりもこの場を離れた方が早いと思ったのでしょう。
シンくんは二人にそれ以上何も言わず、背を向けて公園を出ようとしました。

「あいつってどいつ?」
「あっ!……うる」

振り返るとぶつかりそうな距離にアウルくんがいました。

「変な区切り方すんなよ」

今一番会いたくない人物に会ってしまったシンくんは、視線を逸らしながら後ろに後ずさっていきます。

「シン、危ない」
「歩くなら前へ歩け」

後ろにはステラさんとスティングくん。前にはアウルくん。まさに挟み撃ちです。
今走り出せばアウルくんが追ってくるに違いありません。すでに怪しんでいる視線でシンくんを見ています。

「あいつってもしかしなくても僕だよね?」
「アウルだなんて……言ってない」
「ふーん」

シンくんは“あいつ”がアウルくんなのだと言ってるようなものだとわかっていました。
どこから聞いてたかはわかりませんが、アウルくんはわかっていて聞いてきているのです。

「……帽子、半乾き」
「あ、本当だな」

後ろの二人が気付いた時に思わず帽子を押さえようとしましたが、掴んだはずの帽子の感触がしませんでした。

「みみ?」
「みみ……」
「みみだ」

アウルくんの手にはシンくんの帽子が手にされていました。
帽子がなくなったシンくんの頭には犬耳が。僅かに動くその耳を三人は凝視していました。

「違うんだー!!」

そう言いながら耳を両手で隠すように押さえ、シンくんは走って行ってしまいました。

「……何が違うんだ?」
「自分の趣味、知られたくなかった?」
「というより、自分で望んであんな耳つけてるわけじゃないんだって感じ?涙目だったし」

三人はシンくんが帽子を取りに来るかと公園の出入り口を見ていましたが、シンくんは戻ってきませんでした。


「何で俺がこんな目に……」

シンくんはフードをかぶって耳を隠しました。
一日でこんな事になるなんて、もしも明日以降も治ってなかったらどうしようと不安がこみあがってきます。
ポケットから携帯を取り出し、シンくんは歩く足を止めました。
こうなってしまったのもシンくん自身が誰にも相談出来なかったからです。
笑いはするでしょうが見捨てる人達ではありません。

「……よし」

シンくんは決意して切りっぱなしだった携帯の電源を入れました。
結末はシンくん次第です。彼の望むようになるかはわかりません。
でも決して悪い一日にはならないでしょう。
今日は彼の誕生日なのだから。




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