『ラクス+アスラン&キラ編(アスラク前提)』
いざ電話をかけようとボタンの上に指を追いたと同時に、まるでそれを警告するように音が鳴り出した。
「え?」
警告でも何でもない。ただの充電切れ。
そして画面は真っ暗になってしまった。
「こんなときに……」
さっきまで電源を切ってたにも関わらず充電が切れるなんて。
「ここにいたのですね」
「えっ……あ、ラクスさん?」
一瞬幻かなんて思ってしまう。今まさに電話をかけようとした人が目の前に現れるなんて。
長い髪を揺らしてこちらに向かってラクスさんについみとれてしまった。
「アスランとキラが心配してましたわ」
「あ……そうですか。すみません」
まさかラクスさん自ら俺を探してくれたなんて思わないけど、少し期待をしてしまっていた自分が恥ずかしい。
ふっと微笑んだラクスさんが伸ばした手が頭へと近付いて、つい後ずさってしまった。
ラクスさんの腕は伸ばされたまま止まっている。これじゃ怯えた小動物じゃないか。ラクスさんが怖いわけじゃないのに。
「不安でしたのね。大丈夫ですわ。もう一人で走らなくていいんです」
ラクスさんに言われて自分が不安だったのだと初めて気がついた。
ずっとこのままだったらどうしようと、誰にも言えず逃げるしかなくて。本当はみんなに言えば良かったのに。どうしてか言えなかった。
「俺、みんなに言えなくて」
「言うタイミングも大事です。でも逃げていても解決しませんわ」
俺が頷くとラクスさんは俺のフードを取り去った。
犬耳には視線を向けずに俺に微笑んでいてくれた。安心させるように頭を撫でてくれながら。
「帽子はどうされたのですか?」
「落としてしまって……だからフードをかぶってたんです」
そう言うともう片方の手があがり犬耳に触れた。
「こうすれば隠れますわね」
近い距離に胸を高鳴らせながら頷くしかなかった。でもこれはこれで目立ちそうな気がする。
「誕生日、おめでとうございます」
「えっ!?あ、ありがとうございます!」
思いがけぬ言葉にあからさまに驚いてしまった。今まで沈んでいた気持ちが浮き上がるのがわかる。
「ラクス!?な、何をやってるんですかっ?」
静かだけど心地いい空間を壊したのは、そんな騒々しい声と走る足音。
ラクスさんの後方を見るとアスランさんが走ってくるのが見えた。その僅か後ろにキラさんもいるようだ。
「アスラン、キラ。シンを見つけましたわ」
「ありがとうございます、って、近くないですか!?」
俺とラクスさんの間の距離を言っているみたいだ。引き離そうとするけど、ラクスさんが名前を呼んで制した。
「でもこれは……何でこんな事に」
「シンの耳を隠しているのですわ」
「意外ともうなくなってたりしてね」
歩いて追ってきたらしいキラさんがほがらかに告げるとアスランさんはそれに同意した。
「試しにちょっと手をあげてみて下さい。俺が確かめますから」
「そんなにラクスさんが俺に触ってるのが嫌なんですか……」
「いくら誕生日だからってこれは贅沢すぎる。俺なんて触るのにどれぐらいかかったと」
「はいはい、とにかく手を離してみようよ」
ラクスさんはゆっくりと犬耳から手を離した。わずかの隙間からでも確認しようとアスランさんが俺の頭をかじりつくように見ている。
「ラクス、もう少しあげてもらえますか?」
「はい」
ラクスさんの手のぬくもりは完全になくなった所でアスランさんが結果を口にした。
「良かったな、シン。もうないから安心していい」
「何か複雑です……」
「良かったじゃない、願ってもみない誕生日プレゼントをもらえて」
こんな事でもないかぎり確かにラクスさんとこんなに近くで話す事もなかった。どうにも緊張してしまっていつもろくな会話ができずに終わってしまうのだけど。
「ありがとうございます、ラクスさん」
「まだ誕生日は終わってませんわ。皆さん待ってますから行きましょう?」
「は、はいっ!」
ラクスさんは俺の手を握った。その手に引かれて歩き出そうとする。
「ラクス、手を引くなら俺が!」
アスランさんが割り込む前にラクスさんは走り出した。その手に引かれるままに走り出す。
ラクスさんの楽しそうな笑顔と一緒に俺も笑いながら。
H19.9.12
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