『アウル&ステラ&スティング編』


 


あの三人ならきっと笑って言うのだろう。

“ばっかじゃねーの?耳の一つや二つ増えたって困らないじゃん”
“それに……可愛い”
“そういう問題でもないが、帽子かぶればわからないしな”

光景がはっきりと思い浮かんで笑ってしまう。
でもあんな逃げ方をしたあとでは電話がかけにくかった。

「探させんな、よ!」
「うわっ」

突然頭部の風通しがよくなり驚く。
勢いよくフードを下げた人物がそのまま頭を叩いてきた。

「ま、すぐ見つかってよかったよかった」
「何がいいんだよ、アウル」

振り向くといつも通り掴み所がなく笑うアウルがいた。すぐ後ろにはスティングがいる。

「シン、携帯」

横から両手が差し出され、その手には先ほどまで手にしていた俺の携帯があった。

「あれ!?」
「驚いた拍子に落としたのをステラが受け止めたみたいだな」

スティングのその説明で納得した。落としたにすら気がつかないなんて。

「ばっかじゃん」
「お前のせいだろ!」

怒っていても仕方がないので力の入った肩から力を抜いて落ち着く。

「しかし本当立派な耳だな」
「ふさふさ……?」
「尻尾もあんの?」
「へ?って、ちょっと!」

スティングは頭についてる耳を凝視、ステラはその耳に触れようと手を伸ばす、アウルは回りこんで何やら確認しようとしている。

「冗談はさておき、ほら」
「え?」

頭に何か被せられた。
フードではなく、帽子。先ほど忘れてしまった自分の帽子かと思ったが、違う気がする。

「みんなでおそろい」

ステラがそう言ってから目の前の二人を見ると、二人共いつのまにか帽子をかぶっていた。

「帽子を忘れて、帽子をプレゼントって話も変だけどな」
「でもいいじゃん。お揃いだし」

後ろに視線をやるとアウルも帽子をかぶっていた。
アウルの手には俺が忘れた帽子が手にされている。

「何で……お揃いなんだよ」
「何、照れてんの?」

しまった。反応を間違えた。
言葉だけは嫌そうでも照れ隠しに俯いたら照れてますと言っているようなものだ。

「お揃いお揃い」
「シン、これが正しい喜び方だ」
「ほら、やってみろよ」
「できるわけないだろ!」

ステラが嬉しそうに小さくジャンプしてるのを見て少し羨ましくなった。
素直に伝えていたらこんな回り道にならなかったのに。

「さ、行くか」
「行くってどこに?」
「そりゃあ、あの笑顔が嘘くさい奴のとこだろ?」

アウルは多分キラさんの事を言っているんだろう。本人が聞いたらその笑顔で何か言われそうだ。怒らないだろうけど恐ろしい。

「シン、一緒に行くから怖くない」

ステラが腕を掴んで安心させるように言ってくれる。いや、キラさんが怖いわけじゃないんだけど。

「あの人なら何かしら解決策を出してくれるだろう」

みんなに認知されてるとは……。
でも一人で行くよりも心強い。それだけですぐにでも治りそうな気がする。

「ありが……うわっ!?」

突風に驚かせられ、かぶせてもらったばかりの帽子が飛んだ。
人気はないものの条件反射で両手で頭を隠そうとする。
が、両手は宙で止まった。

「お、重……」

三人の両手が俺の頭に集合していた。6つの掌が頭に乗っていてさすがに重い。

「重いとか言ってる場合かよ。あれ……でも」
「アウル、どうしたの?」

アウルの様子を見てスティング、ステラが手を離す。一番下、頭に直に触れていたアウルの手が離れる。

「耳、なくなってるな」
「ふさふさ……ない」
「ステラ、そこは残念がるとこじゃないし」

三人の会話から俺は自分の手で頭をまさぐった。いくら触ってもあの異質な感触はしない。

「本当だ。なくなってる」

どうしてなくなったかはわからない。でもなくなってよかった事には変わりなかった。

「シン……さっき何か言いかけた」
「そうだな」

二人に言われ、改めて言うのも気恥ずかしくてごまかす。

「い、行こうって言ったんだよ」

二人に納得しない様子で見られ言葉につまる。

「どういたしまして」

再び後ろから帽子をかぶせてきたアウルがそんな事を言った。
アウルの言葉が聞こえたのか、はたまた聞こえてたのにもう一度言わせようとしたのか、ステラとスティングもどういたしましてと言った。

「さて誕生日の仕切り直しといこっか」
「そうだな」
「うん」

俺を追い越して歩き出したアウルと共に三人は俺に背を向けた。
来いとも言われていないのに言っているようで何だか悔しい。
だから言ってやった。

「ありがとう!」

やっぱりちゃんと言わないと悔しいから。


H19.12.2



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