『キラ&アスラン編』


 


「やっぱだめだ……」

いざ通話ボタンを押そうとはしてもなかなか押せない。

「だって絶対からかわれるじゃないか!」
「はい、もしも〜し」

後ろから聞こえた声に驚き振り向いた勢いで倒れそうになってしまった。

「大丈夫か、シン」
「あ、アスランさん」

倒れかけた身体を支えてくれたのはアスランさんだった。
俺を驚かせた声の主は言わずもがなキラさん。笑顔で片手をひらひらさせている。

「驚かせてどうするんだ」
「先読みして返事しただけだよ。ごめんね、驚かせちゃって」

先読みって……あえてつっこまない方がいいだろう。

「ラクスとミーアにも捜すのを頼んだんだが逃げたと聞いて」
「いい案だと思ったんだけど」
「それはどういう意味をこめた案だったんですか」
「まあ、見つかってよかったよ」

逃げる事がわかっていてラクスさんとミーアに頼んだに違いない。

「まだその……」
「耳はそのままなの?」

言いにくそうなアスランさんとは対象的にためらいもなく聞いてくるキラさん。
腫れものに触るような態度でも困るからいいけど。

「はい」
「こういうのは気持ちの問題な場合が多いんだよね」
「やけに詳しいな」
「何か迷ってたり、言えなかったりしない?」

心あたりといえば今の状態の相談だった。
逃げてばかりで誰にも言えない。

「こういった事をきっかけにして言うと治ったりするんだよ。ね、アスラン」
「何で俺に振るんだ」
「そういえばシンくん誕生日なんだよね?」
「はい」
「おめでとう、シンくん」
「おめでとう、シン」

同時に言われた今年はじめての祝いの言葉。
何だかんだいってやっぱり言ってもらうのは嬉しい。

「プレゼントは家にあるんだ。それにみんな待ってるよ」
「みんな?」

聞き返すと二人は頷いた。今日目の前で逃げだしてきてしまったみんなだと何となくわかる。
理由も言わずに逃げだしたのに待っていてくれるなんて。

「だから早く解決して行かないとな」
「はい!」

今日はじめてはっきりと返事ができた気がした。
俺の返事を聞いたキラさんが何か思案げに考えていると手が伸ばされる。

「わっ!?」

勢いよくフードが下げられた。二人の視線が頭から目線に合わされる。

「よかったな。もうないぞ」
「本当ですか?」

ああと言いながらアスランは俺の頭を撫でた。
自分で確認しなくてもその態度でもうないのだと確信できた。

「シンくんが自分から言おうと決意したからなくなったんだね」
「決意、ですか?」
「みんな君の話を聞いてくれるよ」

アスランさんの手が離れた頭をキラさんがひとなでして歩きだした。

「行こう」
「はい!」

もう一度勢いよく返事をすると先に歩く二人の背を追い掛けるように歩きだした。


H19.12.2



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