あちちな夏の物語り Athlac side


 


夏。
海。
海といえば水着。


「アスラン早くパラソル立ててよ」
「想像途中で邪魔するな」
「人はそれを妄想と言うんだよ」

キラに急かされてパラソルを立てる。
パラソルによって作られた日陰の下にキラは座りこむ。

「体調悪いのか?」
「暑いだけ」

うなだれていて声に覇気もない。海に行くという話をした時乗り気じゃなかったのはこういう事か。

「アスランは元気だね」
「それはそうだろう」

何たってラクスの水着だ。どんなだろうと想像するだけで楽しい。

「ふっふっふっ」
「キラ?」

不敵な笑み…と言っても顔は見えないから声だけだがキラのその言動を不思議に思う。

「事前準備はちゃんとしておいたほうがいいよ」

少しだけこちらを向いた顔は確かに笑っていた。
この言葉の意味を俺はすぐに知る事になる。


「アスラ〜ン!こちらですわ〜!」

ラクスは少し離れた場所から手を振っていた。
靡く髪とスカートが涼しげだ。
そう、ラクスは白いワンピースを着ていた。
一方キラは水着姿で来たカガリと共に泳ぎに行ってしまった。
俺は水着を着ていたがパーカーを羽織ってラクスに砂浜を歩いていた。

「アスラン?」
「うわっ、はい」

考え事をしていたら間近にラクスの顔がありお約束だとは言っても驚いてしまう。
ラクスはくすくすと笑うと俺の手を取った。

「一緒に歩きましょう?」
「はい」

ラクスに引かれるように浅瀬を歩いていく。
その時ふわりと風が舞った。

「うわっ!?」
「……?」

ラクスが不思議そうに首を傾げている。
それはそうだ。俺がラクスのスカートに触れているのだから。
思わず風で舞い上がりかけたスカートを、ラクスの手を振り払い押さえつけてしまった結果だった。

「ス、スカート長いですね」
「そうですわね」

もっと言うべき事があるだろう俺。素敵ですねとか似合ってますねとか。
思っても言えない自分が情けない。思うからこそ言えないというか。
言ったあとの自分が非常に恥ずかしい事になりそうで。ラクスが可愛いからいけないんだ。
いや、違う。ラクスは悪くない。

「でも困りましたわ」
「な、何がですか?」

話が変わったのかと慌てながらも少し安心した。スカートからはさすがに手を離す。

「長いスカートは海に向いていません」
「へ?」
「だから結びましょう」
「ま、まっ!」

ラクスがにっこりと言い放ち裾を掴み出した時に止めようとしたが、止められるはずがなかった。

「これで海に少し入っても大丈夫ですわ」
「……そうですね」

視線をそらしながら答える。
太腿のラインで結ばれたスカートの裾。当たり前だが太腿がちらちら見えてしまう。その微妙な見え方にどきどきする。

「アスラン!アスラン!」
「え?っ!?」

口の中に僅かなしょっぱさを感じる。ラクスはにこにこ顔で膝あたりまで海に入っていた。
両手は俺の顔にかけた事がわかるように水が汲めるようにされていた。

「やりましたね」
「はい!」

返事と一緒に再び水がかけられる今度は身体に。
それが合図のように俺は海に入るとラクスに水をかけ返した。
ラクスは服だからかけすぎないように、足元を中心に。

「あっ!」

しかし手元が狂ってラクスの服にかけてしまった。

「大丈夫ですわ」

手が止まった俺に気がついたのかラクスはそう言った。

「すみま……ら、らくすっ」
「はい?」

ラクスは白いワンピースを着ていた。水をかけられれば透けてしまう。

「少し濡れてますけどこれを羽織って下さい!」

返答も聞かずに俺はラクスにパーカーを羽織らせた。
ラクスも透けてる事に気がついたようだが笑うだけ。

「アスランと二人きりでしたら全部濡れても大丈夫ですのに」
「そうですね」

確かに二人きりなら羽織らせなかったかもしれない。
誰にも見せたくないから隠すんだ。

「ラクス」
「はい」

じりじりと日差しが熱い。それでもラクスに触れていたかった。
だから羽織らせた時に触れた肩に手を置いたまま、耳元に口を寄せる。

「ワンピース似合ってますよ」
「はい」

今度は水着を着てほしいと言ってみよう。
まだ気恥ずかしいけどラクスはきっと俺のために笑ってくれるから。



H20.7.22



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