澄んだ知らせを聞いて


 

高い、不思議な音が聞こえた。
澄んでいて、何かを知らせるような音が聞こえた。


「……ラクス?」
「起こしてしまいましたか?」

ソファーの上で眠ってしまっていたようで、上半身を起こそうとして毛布が掛けられている事に気がついた。

「まだ眠いようでしたら眠っても大丈夫ですわ」
「いえ、いつのまにか眠ってしまってただけで。それに……ラクスがいるのに眠るなんて勿体ないです」

気恥ずかしくて視線が定まらずにいたが、ラクスがふっと微笑むとまっすぐに彼女を見れていた。

「ソレは何ですか?」
「コレですか?」

ふふっと笑うと鐘のようなものから出ている紐と紙に息を吹き掛けた。
すると綺麗な音が響く。

「風鈴というものだそうですわ」
「ふうりん?」
「本当は自然の風に揺れて聞こえる音で涼しむのです」
「音で?」
「はい。でももう夏も終わりですから出番はなさそうなのですけど」

にっこり笑って手を揺らすと風鈴からまた音が聞こえた。
起きる時に聞いたのはこの音か。

「音は不思議なものですよね」
「アスランからそういう事を聞くのは初めてですわね」

確かにこういう事は疎いというかあまり興味がない。
ラクスと一緒にいて今まで興味がなかったものに興味を持ちはじめたと言ってもいいほどだ。

「ラクスの歌もそうでしたから」

空を見つめながら何かを思い出すように呟いた。

「私の歌はアスランにはどう伝わりましたか?」

きっとラクスはいつものように微笑んでいるだろう。
でも今は見えなくて、声だけ。その声は不安を含んでいるように感じた。

「ラクス」
「はい」

ソファーから立ち上がり、ラクスに近寄ると彼女を抱きしめた。
これでラクスからも俺が見えない。

「穏やかな、戻る場所を伝えてくれてましたよ」

ラクスの顔が俺の肩に埋もれる。くぐもった声ではいと聞こえた。

「来年、風鈴を窓に吊しましょう」

そう言うと背中に回された手からまた風鈴の音が聞こえた。


きっと来年も暑いから。
二人でまた暑い夏を過ごすから。
澄んだ知らせを聞いて一緒に過ごそう。



H20.8.30



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