熱い身体も一緒


 


「あっちー……」

机に突っ伏して数分。
言わないでいたかった言葉が口から漏れた。
口にしたら余計暑くなりそうだから絶対言いたくなかったのに。

「あー……」

冷たい場所を探してテーブルの上をまさぐる。
どこもかしこもぬるかった。

「アウル」
「ん〜」

呼ばれて顔をあげればそこには涼しげな顔をしたラクスがいた。

「暑くないの?」
「暑いですわね」

困ったかのように手を頬にあてるが、全然困ったように見えない。

「アウル、こちらにいらして下さい」
「なに?」

手首を掴まれて立ち上がる。引かれるままに行こうとするが、行き先に気付いて反対に手を引いた。

「きゃっ」
「外はやだ」

日差しが明らかに強い外に連れ出そうとするなんて。
はっきり言って雨よりたちが悪い。

「来てくださらないのですか?」
「いっ……いかない」

そんなお願いするみたいな目で見られてもいかないものはいかない。

「そうですか……」

残念そうに呟くと手首を掴んでいた手が離された。
そのままラクスは中へと行ってしまう。
再び座ってしまえばいい話だけど、何だか悪い事をしてしまった気になって座るに座れない。
今更外に出ようかなんて思いはじめていたらラクスが戻ってきた。

「掃除でもすんの?」
「いいえ」

にっこりと、バケツを持ちながらラクスは答えた。
掃除に使わないならどうする気なのか。

「わっ!?」

それは一瞬だった。

「本当は外のホースで水をかけてあげたかったのですがアウルが嫌だと言うので」
「だからってバケツにわざわざ汲んでくるなよ!」

僕はびしょ濡れだった。
ラクスらしからぬ行動に少し唖然としながらも文句は言う。
だってラクスがバケツの水を僕にぶっかけるなんて思わないじゃん。
せめてコップにしてほしい。

「涼しくなりましたか?」
「何か、ぬるい」

確実に外のホースからの水の方が冷たかっただろう。
中の水だと何故かぬるい気がする。それともバケツ一杯とはいえ一瞬だから冷たさも一瞬だったとか?

「では外に行きましょう?」
「もう好きにしろよ」

はじめから目的を言ってくれれば素直に行ったのに。
たまに反応を見て楽しんでいるような気がする。

「その前に仕返しする」
「仕返し、ですか?」

さほど離れていないラクスにはすぐに近づけた。
近づいた勢いのまま抱きしめる。

「アウルっ!?」
「ラクスも濡れちゃえばいい」

髪から雫が落ちてラクスの髪に落ちる。
服の水もラクスの服に染み込んでいけばいい。

「暑いのではないのですか?」
「いいんだよ」

笑ってるラクスに仕返しが成功かはわからない。
でも一緒ならいいか。
暑いのも一緒、濡れるのも一緒。
ラクスの熱い身体を抱きしめながら僕も笑った。



H20.7.22



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