シャンデリア-Athrun Side-


 


あなたの上に落ちて
粉々になってしまいたい



ラクスの歌声を聞かなくなってからどれぐらいが経っただろう。
会いたいからで会える人でもない。立場もそうだが、気持ちが会えない。
どこが終わりだったのかが俺にはわからなかった。

「俺が護衛?」
「心配するな。お前以外にもこちらから何人かつける」

電話越しに言われた事は受け入れるには少し酷で、正直断るべきだと思った。

「お前だけではこちらが心配だからな」

だったら俺に言わなければいいじゃないか。いつも思うが一言多い気がする。

「イザーク、オーブからの迎えなら俺以外にもいるだろう?」

しばしの沈黙のあと、明日オーブへ来いとだけ伝えられ回線は切れた。

「ラクス、か……」

少し大きな扉の前。
両脇にいる護衛を見ると何も言わずに扉が開かれた。
まだ心の準備も何もできていないのに。
そんな事をしていたらここでずっと佇む事になるんだろうが。

「オーブよりお迎えにあがりました、アスラン・ザラです」

『はじめまして、アスラン・ザラです』

そう言ったのは遠い昔でもないのに、彼女は遥か遠く。
振り返っても背中だけしか見えない。

「気になります?」
「いや、別に気にしてない」

メイリンに聞かれても目をあわせて答えられない。

「あの人を見て偽ラクスでも思い出してたんですか」
「シンっ!」

いつの間にか近付いていたシンとルナマリア。二人とも相変わらずのようだ。

「偽ラクスと言うのはやめろ」

シンは何か言いたそうに俺を見たがすぐにそっぽを向いた。
俺はミーアをラクスだと思った事はない。全く別の人だ。
でも唯一同じなのは義務から生まれた好意を俺に向けた事だろう。

「勝手に一人で塞ぎこんで悩んでればいいんじゃないですか」
「シン?」

捨て台詞のように言い放ちシンは俺達から離れていく。

「あれでもきっと心配してるんですよ。シンってああだから」
「わかってるよ」

悩んでるわけじゃない。
悩んでも仕方ないと諦めただ。終わった事なんだ。
そう思うしかないんだ。

「急にお呼びだてしてすみません」
「いえ、大丈夫です」

いつもは俺が謝って、彼女が大丈夫と笑みを浮かべてくれた。
そのいつもはもうない。

「では向かいましょう」
「はい。アスラン、……を」
「……え?」

こんなに近くにいて聞き違えるわけがない。
手?
ラクスは何でこんな表情を……駄目だ。
駄目だとわかってるのに。

「アスラン……?」

ラクスの顔が見えないように抱き締めた。
本当は自分が泣きそうだった。押し潰されそうでラクスを押し潰してしまいたかった。
これで終わり。
もしかしたらラクスが俺を呼んだんじゃないのかという期待。
もしかしたら俺に触れてくれるんじゃないかという期待。
もしかしたら……。


あなたの上に落ちて
粉々になってしまいたい
本当に粉々になったのは
何なのか
落ちたのは自分の上
大きな光の塊が落ちてきて
大きな音をたてて
暗闇
それにも気付かず
手を伸ばすのは
愚かだろうか
声も出ずに
か細い息だけが
今の自分の生きる術



H18.1.12




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