僕も彼女もまだわからない
「カーテン開けてどうしたの?」
部屋に入ると暗がりの部屋に一筋の光り。
ミーアがカーテンから顔を覗かせて外を見ていた。
僕の声に驚いたのかわかりすぎるほどに身体がびくついて動いた。
「な、なにも」
カーテンを慌てて閉めて僕の方に身体を向けた。顔は斜め下に俯かせて。
「もう夏なのね」
「そうだね」
真夏だというのにこの部屋は夏にはほど遠い気温だった。少し肌寒いぐらいだ。
「海……見えないのね」
しばらくの沈黙のあとミーアはそう呟いた。
この部屋には彼女と僕しかいないのだから僕に投げ掛けられた言葉に違いないのに、聞こえないように呟いたようにも聞こえた。
「必要ないから」
だからわざとはっきりと言ってあげた。
予想通り俯いていた顔は勢いよく上げられる。悲しそうな瞳で僕を見る。
「……そう、よね」
必死に泣くのを堪えて顔は歪みかける。きっとくしゃくしゃにしてしまいたいのに、できない。
必死に、必死に。
僕はそんな彼女を見るのが好きだった。
「なに……?」
少し近づくだけで何かに怯えるように両腕で身体を包む。
そうしたって何も守れない。もう守るものなんてないに等しいのに。
それでも必死な彼女がいる。だから僕は動く。
「別に何もしないよ」
彼女との間にあるベッドを触ると冷たかった。
ずっとあそこにいたのかと思うと面白い。
「寒いよね」
「夏なのに寒いなんて変」
変なんて事はわかってる。僕も彼女も。
なのに切る事はない。
何故かは知らないふりをしているのだろう。僕も彼女も。
「ミーア」
シーツをはぎとって呼ぶ。何も言わずベッドの上へと来ると僕はシーツで彼女をくるんだ。
くるまれた彼女は見上げてすぐに俯く。
「っ!?」
気がつけばベッドの上に横たわっていた。肌寒いと感じていたのに少し温かい。
ミーアが僕をシーツの中へと巻き込んでそのまま倒れた。
触れてるけど、互いの腕は互いの身体を包む事はしない。シーツがその役割を得てるから。
どうしてこんなことになっているのか。
これは知らないふりではなく本当にわからない。僕も彼女も。
まだわからない。
H20.7.26
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