一番怖い話
どうしてこんなことになったのか。
「怖い話なんて思いつきませんってば」
「あれ、シンくん怖いの?」
暗がりの部屋に男が4人円になるように座って、中央には蝋燭が一本火が点され置かれていた。
「違います!」
「ムキになるとこが怪しくね?」
「ムキになんてなってない」
両隣に座るアウルとキラさんが急かしてくる。目の前にいるアスランさんは傍観していた。
「アカデミー時代とかあったんじゃない?」
「あるといえばありましたけどよくあるのばっかりですよ」
「トイレの太郎さんとか電話のリリーさんとか?」
「それ微妙に違う気がする」
別に怪談とか怖い話に弱いわけじゃない。お化けだって見た事ないからよくわからないし。
「男子よりも女子の方が盛り上がってた記憶はあるんですけど……アスランさんの時はどうでした?」
「へっ!?」
アスランさんの素っ頓狂なその声に思わず黙る。というか予想外の反応で驚いてしまった。
キラさんとアウルもそうだったのか三人の視線がアスランさんに集中した。
「まっさか、あんたがだめってオチじゃないよね〜」
アウルが聞きにくい事をさらりと聞いてしまう。
アスランさんはその問いにわかりやすい態度で答えてくれた。
「そっ!そんなわけはないっ!」
そんなわけあるんですねとは口に出すまい。
「僕の記憶だとあまり弱かった記憶はないな〜」
「だから弱くない!怖くない!」
もう話さないほうがいいんじゃないかと思う。
だから今まで話さないでいたのか。
「お前らこそどうなんだ。キラは少し弱そうに見えるが」
「僕?」
何とか自分から話をそらそうと他に振るアスランさん。キラさんが振られて、自分で自分を指さすと笑んだ。
「たまのスリルはいいもんだよ」
「「うわぁ……」」
思わずキラさんを見ながらアウルとハモってしまった。説得力が何故かある気がする。
「シンくんは?」
「俺は別に。日本人形とかの雰囲気は暗がりで見ると怖いと感じるぐらいで」
「お前微妙に冷めてるよなー。そして面白みがない」
こんな話に面白みを求めてどうすんだか。正直に答えて文句を言われるのは心外だ。
「そう言うアウルはどうなんだよ」
「んな事言われてもよくわかんねー」
「さっきトイレの太郎さんとか言ってたのにかよ」
「変態仮面が面白がって聞かせてきたけど反応がつまんないって言われた」
誰に聞かせられたかはつっこむのはやめておく。
この分だとスティングもステラも一緒だったんだろうけど反応は想像できるようなできないような。一番まともな反応はスティングがしそうだ。
「つまりこの4人で怖い話をしても楽しいのはアスランだけなんだね」
少しつまなさそうに言うキラさん。アスランさんは嫌な予感がしたのか慌てて蝋燭を消した。
すぐに電気が点いて部屋が明るくなる。
「俺も楽しくないからやめだ!」
そういえば何で怖い話をすることになったのか。
「あいつがやりたかったからだろ」
「ああ……」
アウルが親指でキラさんをひそかに指して納得する。
「怖い話をして楽しむ気だったのか」
「ん?何、シンくん」
「何でもないです」
怖い話に弱くなくてよかったと心底思った。
この人の餌食になってしまうから。
実はこれが一番怖い話なのかもしれない。
H20.7.27
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