繋いでいく数は思いに似ていて
「羊が12匹、羊が13匹」
「愛がこもってな〜い」
ベッドに座りながら、文句を言い出したミーアを見下ろした。
寝ているミーアはシーツから顔半分を覗かせ不満を伝える。
「何で羊を数えるのにそんな事言われなくちゃ言……わかった。どうすれば伝わるか教えてクダサイ」
言ってる途中であまりにも泣きだしそうな顔をするから折れてしまった。
確かに半ば強制的にやらされてるけど愛がないなんてことはない。
ただ数えるのに必要なのかとは思うけど。
「顔見てくれてないんだもの」
「そりゃあ、恥ずかしいし。ミーアだって寝顔見られたくないだろ」
数えはじめたらミーアには背を向けて、数え出した。
それが嫌だったのか?
「わかったよ」
「うんっ」
嬉しそうにされるとそれはそれで恥ずかしい。
床につけていた足をベッドに乗せてミーアを横目で見れるようにする。
「羊が14匹、羊が15匹」
いない羊を数えてるのはミーアが眠れない時の定番だと言ったからだった。
自分で数えればいいじゃないかと言ったら俺に数えてほしいと30分近く粘るものだから折れた。
……折れてばかりな気がする。
「羊が……104匹、羊が、105匹。ミーア?」
「あたしの前にシンが寝そう」
シャツの裾を引っ張られて数えるのを中断する。
確かに少し眠くなってきていた。数がわからなくなるのも時間の問題かもしれない。
「ミーアよりは先に寝ないって」
「嘘。あたしを置いていっちゃう」
何でそんな悲しそうにするのかがわからなかった。
たかがどちらが先に寝てしまうかなのに。
「そんなに眠くないの?」
「そういうわけじゃないんだけど……シン」
「ん?」
シャツの裾を握る手が強くなって、伸びると言いそうになったけどミーアの伏せがちな目を見たら言えなくなった。
「あたしを見つけてくれる?」
「ここにいるのに?」
「埋もれても」
何にとは聞けなかった。
羊を数えてるのだからたくさんの羊の中からなのかもしれない。
それでもどうしてか土、海がちらついた。
「ミーアは何もしないで待ってるわけないよ」
本当は抱きしめたかった。
でもそれはせずにそっと頭を撫でた。目を潤ませはじめていたミーアが目を伏せると涙が零れた。
「羊が106匹」
ミーアが中断した数から再開しはじめた。
でも次の数がミーアは数る事はなかった。
「羊が107匹」
そして俺が次を数える。またミーアが数えて、俺が数える。
いつのまにか俺は身体を横にして、ミーアを手を繋きながら数を数え続けていた。
寝てしまったからいくつまで数えたのかはわからない。
段々声も小さくなって、口にもしなくなって、ただ互いを見ていた。
でもやっぱり数は数えていて。
“羊が400匹”
覚えているのは最後の数。
きっとミーアもそうなのだろう。
繋いでいく数は思いに似ていて。
もしもの俺達もきっとこうするに違いない。
互いを求めるかぎり、繋がり続けられるのだから。
H20.8.29
book /
home