今はその間の時間
眠いような眠くないようなそんな時間。
真っ昼間に椅子に座って、机に突っ伏して外を見ている。
ただ、見ているだけ。
「すずしー」
穏やかに吹く風。
気温もちょうど良くて、それで少し冷たい風。
特に言う必要もないのに感じたままを口にしていた。
そろそろかなと思っていると視界にピンク色の何かが映った。
「ラクスだ」
「はい」
僕が寝ていないかを見に来たのだろう。
僕が声を出すとピンク色の髪は引いて視界から消えた。
「暇ですか?」
「ん〜、ヒマ?」
自分でもわからなくてはてなをつけてしまった。
何もしてないんだけど別に死ぬほど退屈ってわけじゃない。
「ヒマって言ったらどうすんの?」
「どうしましょう?」
なんだそれと僕は笑った。
きっと僕の答えを知ってたから聞いてきたんだろう。
「手、出して」
机から身体を起き上がらせると両手を突き出した。
同じようにラクスにも両手を出してほしかったから。
「手が繋ぎたかったのですか?」
「そんなとこ」
出してくれた両手に触れて、指や掌や手首を触っていく。
くすぐったかったのか時々抑えた笑いが漏れてきた。
「アウルの手は暖かいですわね」
「ラクスの手があったかいからじゃない?」
さっきまでは少し冷えていたぐらいだった僕の手は暖かいというよりは熱く感じた。
ラクスの暖かさが移ったのか、それとも……。
「歌うたってよ」
ラクスは微笑むと目を閉じて、息を軽く吸った。
ふいに聞こえてくる歌声も好きだけど、歌い出す前のこの瞬間も好きだ。
何を思って歌っているのかはわからない。でも、僕のために歌ってくれようとするこの瞬間。
冷たい風を受けても冷えない手はまた熱くなった気がした。気のせいだろう。
ただ冷えないだけ。
ラクスの手に触れたまま、外を眺める。
歌が聞こえはじめて、さっきまでの景色が少しかわった。
もう夕方だ。
はじまる時と終わる時。
今はその間の時間。
H20.10.18
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