それでもわかりたい友達がいる
「イチゴがない!」
「いちご……?」
シンの大きな声がして、ソファに座っているであろうシンを見ようとするが床に座ってるらしく見えなかった。
キラがやれやれと息を吐きながら向かいに座る。
「どうやらシンくんが少し離れてるうちに食べられちゃったみたいだね」
「食べられたって、アウルにか?」
キラが二人のいるテレビの前に視線を向ける。
俺もキラと同じようにそちらを見ていた。
「はじめからなかったんじゃん?」
「あった!」
「証拠は?」
「イチゴがあった窪みがあるだろ!」
止めた方がいいだろうかと思うが止めない方がいいような気もしてくる。
さすがに手が出る事はないだろうし、口喧嘩ぐらいなら仲がいい証拠だろう。
「あれは怒るね」
「イチゴ食べられてか?」
イチゴを食べた事を未だに認めたいアウルの声を聞きながら、キラの言葉に疑問を持った。
「確かに子供の頃はショートケーキのメインは乗ってるイチゴみたいな感じはしたけど」
シンもアウルが食べたと認めて謝れば許すんだろう。
でもアウルはそれをしないどころかシンを煽っているようにも見える。余計怒らせるような言い方をしてるというか。
「まさか」
「そのまさかだね。というかこの間喧嘩について聞かれたし」
わかっているなら止めろと言うよりも自分でそうしたほうが早いだろうと椅子から立ち上がる。
「待って」
手首を掴まれて止められる。片方がわざとやってるなら終わるものも終わらないだろう。
それにわざとやられていたとわかれば更に怒りかねない。
「お前この間もそんな事言って謝らなかったじゃないか!」
「あれはわざとじゃないっつーの」
そういえばこの前もシンが怒っていた気がする。でも今回みたいに続く事はなく、すぐ終わっていたから今まで忘れていた。
「謝らなかったのか……」
謝るタイミングをはずすと謝れない時もある。そのまま引きずって後々に謝らなかった事を後悔したりもする。
ただ謝ればいいものでもないだけに難しい事だ。
「でもやっちゃいけなかった事だってのはわかった」
「え?」
シンの声だったが俺も同じような反応をしたに違いない。
いつのまにか手首を掴んでいた手も放されていた。
でも二人の所に行くのはやめて、再び座り会話を聞く事にする。
「だから悪かった」
「わかってくれたなら……いいよ、別に」
シンも落ち着いたようだった。でもそのあとが続かずに沈黙が続いてしまう。
「はいはい、シンくんのショートケーキは僕のと交換」
「え、でも」
キラはまだ手をつけていなかった自分の皿を持って、二人の所へ行った。
俺も手をつけていないが残念ながらショートケーキではなかった。
二人の様子が気になって食べれずにいたが、キラはもしかしたら知ってて食べなかったのかもしれない。
「アスラン、お茶いれてくれる?」
「ああ」
イチゴの乗っていないショートケーキを持ちながらキラは言った。
「でもいいんですか?」
「ショートケーキ?うん、大人になるとショートケーキのイチゴはすっぱいものにしか感じないからね」
「うわー、それ大人っていうよりただ単に好みの問題だし」
「ありがとうございます」
三人の会話を聞きながら人数分のティーカップに紅茶を注いだ。
アウルとシンの会話も聞こえてきて笑ってしまう。
わからない事を知る。それが相手のいる事柄ならば余計理解しがたくて、でもそれでもわかりたい友達がいる。
簡単な事でも難しいから大切にしたいと思う事もあるのかもしれない。
H20.10.20
book /
home