あの空に夢を見て
「生身で飛んでみたいよね」
「無理だろ」
「何の話?」
テーブルでシンと向かい合わせで座っていると、キラが話に加わってきた。
対した話はしていない。MSの話をして、MSなしで飛んでみたいという話になっていただけ。
「それは昇て」
「縁起でもない事言わないで下さい!」
シンは立ち上がってまでキラの言葉を遮った。何て言おうとしたのは僕にはわからない。
「そういう事じゃなくて、背中に羽を生やすとかそういう話だろ?」
「シンめるへんちっくだねー」
座り直して話を続けてくるがどうも伝わっていないようだった。
「何もしなくても飛ぶ」
「それはまた……」
キラも予想外だったみたいで言葉が続かないようだった。
「じゃあMSに乗るとか」
「あの露出女みたいに?」
「せめて名前は呼んであげようよ」
ミーアがMSの手の部分に乗って踊っていたのを思い出した。
あれも確かに飛ぶに入るんだろうけどイメージとしては違う。
「やっぱり羽生やすしかないんじゃない?」
「そんな簡単に言うほど簡単じゃないんじゃ」
「いやいやいや、夢は大きく持たないとね」
これははたして夢なんだろうか。
そんな疑問を持ちながら、自信満々なキラを眺めていた。
「無理だ」
すぐにアスランを引っ張ってきての一言だった。
キラが不満そうに何か言ってる。
「トリィとかとは違うんだぞ?人に羽つけるよりMSに乗った方が早いじゃないか」
聞き飽きた案。
ここで無理な事を考えるとできるだけそれに近くなるようにその方法を考えるのだとわかった。
それは妥協?
はじめに考えた事とは違うのに。
「そもそも何で飛びたいだ?」
「なんとなく」
三人は何も言わないでいたが何故か頷きはじめた。何かムカつく。
何そのこいつの事だからそう言うと思ったみたいな態度。
「でもいい事だよね」
「何がだ?」
「あえてチャレンジしたいというチャレンジ精神」
「アウルは何も考えてないみたいですけどね」
何故飛びたいんだろう。
そんな気分?
ただ空を飛んでみたいなと見上げてみた空が真っさらだったから思っただけ。泳げたらいいのに。
「よし。じゃあ競争しようか」
「脈絡なかったな」
「この話自体脈絡ないですから」
「競争?」
僕が問い掛けるとキラがまた自信満々に言った。
「とぶ競争をするんだよ」
「飛ぶってフライの方じゃなかったのか?」
「これはどう見てもジャンプですね」
特に移動する事もなく、壁にいくつかテープが貼られていた。テープには何cmかが書かれている。
「誰が高くとべるかだと身体能力的な問題があるから、宣言した距離により近くとべた人の勝ち」
「俺とシンのツッコミはスルーなのか」
一番上の天井近くのテープを見上げていると背中を押された。
「さ、何cmとぶ?」
僕が一番最初らしい。
シンもアスランも呆れた感じだが特に異論はなく、参加するようだった。
「地面から跳ぶのもいいものだよ」
「外でも?」
「空との距離がいいものだよ」
そっかとまだ僕にはわからないけど、距離を言って壁際に立つ。
人であるかぎり生身でなんて飛べない。だから跳ぶ。
高く、高く。まだその良さがわからないけど、今から跳ぶのは楽しく感じた。
あの空に夢を見て、現実を知る。
それも楽しいものだと知っていきながら。
H20.10.20
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