贈ったプレゼントは彼女の胸の中


 


予定の確認をしていて月が変わったのだと気がついた。
年が明けてから1ヶ月。数字を見てあれから二年経ったのだと思うと早い気もするが遅くも感じた。


「2月?」

口にしてある人物がすぐに浮かんだ。
ラクスの誕生日まであと少しだ。だが彼女は今プラントにいる。婚約者時だって誕生日後に帰還してプレゼントを渡した。日にちには頓着せずに渡すのが礼儀であるように。誕生日以外にもプレゼントを渡していたから特別な思いがなかったのかもしれない。

「でも段々悩んでいったな」

始めの悩みは女性へのプレゼントとして、次第にラクスへのプレゼントは何がいいかと悩み出していた。
予定を見ると何の偶然か過ぎてはいても数日プラントに滞在する予定があった。


「悪いな、イザーク」
「そう思うならもっと早く連絡しろ」

通路を前を歩くイザークについていく。

「無理ならいいと言ったん、わっ」

突然立ち止まられ慌てて足を止めて衝突を回避する。鋭く睨まれ相手が怒りを露にしているのだとわかる。イザークとは昔衝突をよくしたが今は良き同志、だと俺は思っている。

「今の彼女が多忙とわかりながらコンタクトしてきて、そんな彼女が予定を空けたんだ。空いていたんじゃない。空けたんだ」
「それは迷惑を」
「絶対にそんなことを言うな」

遮られ忠告される。問いただす間を与えないように早足で歩きだしてしまい慌ててついていく。
聞くことはできないまま目的の部屋前まで来てしまった。

「時刻は彼女がわかっている。そんなに時間はないからな」

それだけ言って背を向け来た通路を戻っていく。見送っていたら振り返られそうでまだ背が見えても扉に向き直り、横にあるボタンを操作し呼び掛けた。
久しぶりに聞く声に名前を告げると扉が開いた。

「久しぶりですわね、アスラン」

数日前に議会の場で互いに姿は見ていても言葉を交わすのは久しぶりだった。
椅子から立ち上がり出迎えてくれる。

「突然ですまない」

謝罪するとラクスは少し困ったように苦笑し中央にある応接用の椅子に腰かけるよう促される。

「こうして会いに来て下さって嬉しいですわ。それに何か私に用件があって連絡されてきたのではないですか?」

カップを双方に置いてラクスは向かいに座った。

「お茶、いただいてもいいですか?」
「はい、どうぞ」

俺の言葉にラクスはくすくすと笑いながら手で促してくれた。カップを持って自分が昔の口調で話していたと気づき少し恥ずかしくなる。
こうして向かい合って紅茶を飲んでいるとあの時に戻ったような感覚になったのかもしれない。

「四年、経ちますのね……」

一瞬何のことかわからずその数字に互いに道を違えた時を指しているのだとわかった。あの劇場で初めてラクスの思いや考えに触れて揺さぶられた。それが以降ずっと俺自身への問いとなり今も答えははっきりとはわからない。
道を違えたとは違うのかもしれない。キラがいつか話していたみんな望むものは同じなのかもしれないという言葉を思い出す。方向は同じなのにすれ違いでずれ、疑念になり迷った。

「ラクスがプラントに戻ってからは2年だから早いものだな」
「はい。まだ2年。ですが年月は過ぎても形にはできていません」

先程の4年といいラクスがこういった話をするのを珍しく思う。
ラクスにも不安はあるのだとわかっている。俺の前で彼女が不安を出せなかった、見過ごしてしまった。
過ちとは違うのかもしれない。それでもあの時何かできていればと思う出来事はある。でもそれはできないしできたとしては俺はそれをしないだろう。

「ラクス、ハロを持ってますか?」
「ピンクちゃんですか?」

聞きながら立ち上がり執務机に回り込みかがみこむとピンクの球体を取り出した。
アタッシュケースから小型端末を取り出しハロに線を繋げる。

「メンテナンスですか?」
「アップデートだよ」

すでに組み上げていたプログラムをハロにインストールしていく。

「……すみません、アスラン」

作業が終わるまで端末を見ていると突然謝罪され顔を上げる。ラクスは俯きハロを見つめていた。

「懐かしく思ってしまったのかもしれません。久しぶりに会ったのにこんな……」
「いいんだ」

これ以上辛そうにしてほしくなくて遮るとラクスと視線があった。同時に作業が終わり線を抜く。

「誕生日おめでとう」
「え?」
「今日会いたいと言ったのは誕生日プレゼントを渡したかったんだ」

ハロの背のボタンを押すと目の部分から光が射出され机にキーボードと上に画面を映し出した。そして横には小さなカレンダー。

「簡易手帳になってるんだ」
「予定がすぐに確認できて便利ですわね」
「あと回線に繋ぐと俺と交換日記みたいになる」
「交換日記?」

聞き返されるとたまらなく恥ずかしくなる。ごまかすようにハロが映す小さなカレンダーに視線を向けた。

「書きたくないことは書かなくていい。でももし言いたいことやそれこそ聞いてほしいことがあれば……書いてほしい」

情けないことに段々声が小さくなっていく。
あの時には考えつかなかったこと。あの時があったから考えついたこと。

「……ありがとうございます」

ラクスの細い指がハロのボタンを押し光がなくなる。視線を向けると大切そうに胸に抱いた。

「素敵な誕生日プレゼントですわ」
「そう言ってもらえて良かった」
「アスランも書いて下さいね」
「はい」

最初に贈ったプレゼントは今も彼女の胸の中。



H26.2.3



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