成長に伴う迷い
書類の確認をしていると日付が何度も目に入る。近づいていく度にため息が出そうな回数が増えて飲み込んだ。
私の誕生日、ということはキラの誕生日でもある。
会えないことも多い。最後の肉親。キラはあまり外出することはなく家にいることが多い。ラクスや育ての母親、孤児院から避難してきた子供達やマルキオと共に暮らしている。
「手紙を書くか」
引き出しを開けると束になった紙が積み重なっていた。渡す必要もなく封筒にすら入れていない。内容も他愛のないこと。時には迷いもあったし疲労したともある。全て私が書いたものだ。
「誰にも見られないように処分しないとな……」
もうすぐで引き出しに入りきらなくなってしまう。
見られたくない。でもキラには言える気がした。キラに向けたものだから書いてしまった。キラは笑ってくれるだろう。心配しながらもこんなことをいう私に失望も嫌悪もしない。そんなに長く共にいたわけではないのになぜかそんな確信があった。私もキラに対してそうだからなのかもしれない。
そう思っても渡せないのは何故だろう。
送ってくれた運転手には口止めをして車から降りた。アスランに知られたら怒られるだろう。アスランが戻るまで待っていられない。スケジュールを確認したら出るなら今しかないと思った。
「ラクスの歌か」
目の前には海岸。遠くに数人の人影が見え聞こえる歌声にラクスと子供達だとわかる。
「ラクス!」
「カガリさん?」
階段を降り砂浜を駆けていく。ラクスが驚いた顔をしていた。
「少し久しぶりですわね」
「ああ、元気か?」
「はい。子供達もみんな元気ですわ」
珍しい来訪者に子供達が足元に寄り声をかけてくれる。
「キラなら家にいますわ」
「そう、か……」
ラクスが教えてくれたのに歯切れ悪く返していた。
「キラと何かあったのですか?」
「もうすぐ誕生日だから何か欲しいものがないか聞きに来たんだ。でも自分で考えた方がいいよな」
本当はただ会いにきただけだった。ラクスに心配をかけてしまうと咄嗟に言ったけれどラクスは首を少し傾げた。
そして子供達に遠くに行かないよう言ってその場から私の手を引いて離れた。
「キラなら何でも喜んでくれますわ。カガリさんが一生懸命自分のために選んでくれたとわかりますから」
「……そうだよな」
俯いてしまうとラクスの手が頬に触れた。軽く撫でられ温もりに安心する。
「キラから手紙がなかなか来ないんだ」
「キラも悩んでましたわ。代わり映えない生活だから報告するようなこともないし毎回同じような内容でいいのか」
「そんなこと気にしないのに……」
ラクスの手が離されて見つめられる。
「キラはきっと嫌わないとわかってるのに嫌われたくないんだ……」
「それは好きな相手ならそう思いますわ」
好きな相手という言葉にどきりとした。好きは何も男性相手だけではない。わかっていてもどきりとする。
「キラに手紙が欲しいと言ってみたらいかがですか?」
言いたいのかもしれない。繋がりがほしいのかもしれない。嫌われないとわかってるのに嫌われたくないから欲しがるのに返せないかもしれないのが怖いのかもしれない。
「色々考えてしまいますわね。成長すればするほど」
「え?」
「言うのも勇気ですわ。大丈夫です、カガリさんは一人じゃありませんから」
ラクスの言葉は力をくれた。昔の私なら考えずに走っていけたかもしれない。でもそのままではいられない、いてはいけない。だから少しの安心が欲しいのかもしれない。
「ありがとう」
ラクスに告げ走り出した。
椅子に揺られているキラを見つけ家の前までくるとキラが気づいて歩み寄ってくる。
「久しぶり、キラ」
「うん。元気?」
「ああ。キラ」
すぐに言おうと切り出そうとするとキラは私を待つように見つめた。
「キラのことが知りたいんだ」
「僕のこと?」
「好きな食べ物とか子供の時の思い出とか何でも。手紙で送ってほしい」
「カガリも書いて送ってくれる?」
微笑んで問いかけられ私は勿論と答えた。
H26.5.14
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