確かめられた大事な日


 


「すまないな、誕生日なのに建物内の食堂になってしまって」
「ううん。前にラクスが訪れて凄い美味しかったって言ってたから楽しみだよ」
「そうか」

オーブの建物内の通路をカガリと並んで歩く。申し訳なさそうなカガリに言うと安堵したようだった。カガリとこうして過ごせるなら本当に気にしたりしないのに。以前なら口にしたけれど今はあまり言わないようにしていた。

「あ!」

突然カガリが大きな声を出し立ち止まる。一緒に足を止め見つめると身体をまさぐり始めた。

「キラへの手紙を執務室に忘れた……」
「じゃあ一緒に取りに」
「アスハ代表」

行こうかと言う前に男性がカガリに声をかけてきた。僕に視線を向け話しにくそうにする。

「僕が取りに行っても平気?」
「それは大丈夫だ。だが」
「じゃあ取りに行くよ」
「わかった。警備はキラを知っているから平気だとは思うがもし止められたらこのカードキーを見せてくれ。私専用の物だから」

カードキーを受け取り執務室へ向かった。
時は過ぎ数年前から変化はしても変化し辛いこともある。ザフトの服を着用していれば話しにくそうにもするだろう。


警備には止められず執務室へと入る。

「どこにあるか聞いてこなかったな」

僕が取りに行ってもいいということはまずい場所にはしまわれていないのだろう。
机へ歩みより引き出しを開けていく。
三番目の引き出しを開けると僕の名前が書かれた封筒を見つけた。

「これかな?」

手にとるとその下には文字が記された便箋があった。たまたま僕の名前が目に入り一枚手にとって目を通してしまう。

「これは……」
「キラっ!」

勢いよく扉が開かれ顔をあげると息を切らしたカガリと目が合った。

「やっぱり見ちゃったか……」

ため息を吐いて呟き扉を閉める。

「ごめん」
「いいんだ。その引き出しはキラに宛てたものしか入れていないから」

引き出しに目をやると束になった便箋があった。

「この手紙最近のものじゃないよね?」

内容から推測すると僕がまだオーブで暮らしていた時。戦いから遠ざかっていた時だ。手紙にはその日あったことやカガリが悩んでいること、でも頑張っていきたいやれることはたくさんあるし、やるべきことがあると書かれていた。僕を心配していることも書かれていた。
カガリとは手紙のやりとりをある時からしている。途絶えた時期もあったけれど再開していた。内容は食べ物の話や思い出などお互いを知るものだった。

「ごめんな。渡さないものでもキラ宛てにそんなこと書いて」

カガリは微笑んでも泣きそうに見えた。彼女は強くあろうとする。国を守るために立とうとする。でも常にそうしていられるわけがないということはわかっていたし、知っていた。

「カガリは僕のことを怒りはしても嫌わないよね」
「それは……そうだろ?心配したり納得できなかったりしたら怒る」
「うん。僕もそうだよ」

長い時間を過ごしたわけじゃない。血の繋がりがあっても突然のことで肉親とは完全には思えない。カガリとして出会って一人の人として好意をもった。
時間でも血でもなく感覚的なもので言葉には表せないもので絶対的な好意がある。それはカガリも僕に対してそうなのではないかと思えた。だけど言葉にしないといけない時がある。この手紙をずっとしまっていたのを見てそう思った。

「カガリのことが好きだよ」

カガリは驚いて俯いて早足で近寄ってきた。

「キラが好きだ。何があってもずっと」
「ありがとう」

嬉しくて笑うとカガリも笑顔を浮かべた。時が経ち考えられずにはいられない立場、状況なのもわかっている。それでも居場所があるのも、言葉にして伝えあうことも大切で余計な思考は捨てて伝える。ただ好きなのだと。

「ご飯、ここで食べられるかな?」
「そうだな!二人で食べよう!せっかく二人で過ごせる誕生日だからな!」

食事がくるまでの間手紙を読みながら当時のことをカガリから聞いたり、食事中は他愛ない話をした。別れる時は次会う約束はできない。予定が互いに空けにくいからだった。それでもまたと別れる。
お互いに居場所だと、変化しながら変化のしない場所。確かめられた大事な日になった。



H26.5.17



book / home