変わっても変わらない
「ごめんね、時間かかって」
「いえ……」
通路を歩きながら手にした大きめのプレゼントを持ち直した。
「裂いて確認されるよりは良かったです」
「それは回避したかったから」
少し先導して歩くキラさんは苦笑した。未だに白の隊服を着用した姿は見慣れない。
「知った者でも確認はしていかないと穴ができてしまうから」
「それで守れるならそうすべきだと思いますよ」
どこか辛そうに聞こえたものだからついそう言うとキラさんはありがとうと微笑んだ。
「帰宅時に通信をくれれば僕が迎えにくるから」
何度か来たことのある扉の前までくるといつもなら中へ通してから去るのに今日は扉の前で去ろうとする。
「これは僕から彼女へのプレゼントだよ」
いいのかと問う前に顔に出ていたのかキラさんが言い歩き去った。
後ろ姿が見えなくなり改めて扉を見つめる。中への通信回線のボタンを押し声をかける。
「……シンだけど」
返答はなく扉が開いて中へ視線を向ける。
「いらっしゃいシン!」
意味はないとわかっても慌てて手にしたものを後ろに隠したが驚いて落としてしまった。
呆然として動かない俺を首を傾げて見つめてくる。やがて近寄り片手を両手で取った。
「ミーア?」
思わず問いかけてしまうとミーアは笑顔で頷いた。
「あ、これあたしへのプレゼント?」
後ろに落とした物に気がつき手にする。前に抱えて片手で俺の手を引くと扉が閉まった。
「ありがとうシン!」
「あ……誕生日おめでとうミーア」
部屋内に入るとミーアの手が離れその場でミーアは回った。持ってきたプレゼントのくまの大きなぬいぐるみを抱き締めて嬉しそうに言われて今更の祝いの言葉を口にした。
「シンって呼んで過ごせば寂しくないわね」
「それはちょっと……」
くまに向かってシンとしかも一度ならず連呼している姿を想像すると恥ずかしい。
くまの後頭部に頬を擦り寄せ嬉しそうにする姿にくまで見えにくい髪を凝視する。
「髪、切ったの?」
「そう!ばっさり!」
話を振られるのを待っていたかのように勢いよく答えられて驚く。
髪は女の命と聞いたことがあるし髪型を変えるしかもかなりの長さを切るのはなかなかないことなんじゃないかと思う。妹も髪を気にしだしていたのを思い出す。
「シン?」
「え?……何で切ったの?」
呼び掛けられて我に返り素直に疑問を口にしてみる。
「試しに外出してみようかって話になったの」
「外に?」
ミーアが外に出ては現状どうなるか予想もし辛く生存も悟られないように隠されている。いつかミーアが顔を変えればいいというものではないけどそれだけのことをしてしまったのだからこうして生きていられるだけ幸せなのだと話していたのが過る。ミーアはたまたまラクスクラインと歌声が似ていただけで巻き込まれただけではないかと今では思えるが多数はそうは思わないこともわかっていて何も言うことはできなかった。
「もしわかってもキラがついてくれるからある程度の混乱は抑えられるだろう、って。でも一応変装をしてばれないようにはしていかないといけないから髪型を変えたの。長いと目立つから」
先程の勢いは今はなく俯き加減でぬいぐるみをどこかすがるように抱き締めているように見えた。
「ずっと動かないままではいられないから」
「それもキラさんが?」
「うん……」
俺は何も言えなかった。キラさんと俺では立場が違うのはわかっている。それでも結局何もできない自分が不甲斐なく思い悔しかった。
「「あのっ」」
同時に切り出して見つめ合う。ミーアが再び後頭部に口元を隠したのを見て俺から話すことにした。
「ザフトの服では駄目だろうけど着てなかったら外出時に同行していいかな」
「してくれるの?」
無茶を承知でまずはミーアの了解を得ようと切り出したのにミーアの言葉に微かに首を傾げる。
「シンに同行してもらえないかなって頼もうと思ってたの……ほら、誕生日だし」
「そんな普通に頼んでくれたらいいのに」
僅かな沈黙のあとミーアが笑う。くまのぬいぐるみをソファに置いて髪が短くなったミーアを改めてちゃんと見る。
「髪切ったって聞いてなかったから驚いた」
「キラさんがシンには黙っておくって言ってたから」
キラさんが通路で言っていた言葉を思い出す。プレゼントは俺の驚いた顔だったのか。
「もう少しいられる?」
「うん」
頷くとミーアは紅茶を用意し始めその様子を見つめた。
やっぱり嬉しそうにしている姿が一番好きでそれは髪型が変わっても変わらなかった。
H26.6.29
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