100 CARAT HEART
数日の悩み事を久しぶりに訪れた男性に話してみることにした。
「シンが欲しいもの、か……」
「普通の男の子が欲しいものでいいんだけど」
正面に座るアスランはそれが難しいと言い腕を組んで目を閉じて考え込んでしまった。
キラに聞くのは最終手段にしたい。
「じゃあアスランはラクスさんに何を貰ったら嬉しい?」
腕は組んだまま見つめられる。
「……なんでも」
「ダメ!それがダメなのよ!“何でも嬉しい”は確かに嬉しいけどそれは女の子のこと考えてないっ!」
アスランの言葉を遮り両手をテーブルにつき身を乗り出す。あたしの勢いに押されたのか背もたれに背中を押し付けて退く。
「じゃあ……どうすれば?」
「さりげなく普段の会話から推測するのよ。プレゼントされたらあの時話してたこと覚えててくれたって喜ぶわ!」
「そうか……」
相変わらず引いているというよりは気圧されている様子のアスラン。咳払いをして座り直し姿勢を正す。
「女性の気持ちはわからないが俺は一生懸命考えてくれたなら嬉しいよ」
「気持ちは伝わる?」
「当たり前だろう」
確証なんてないのにアスランの言葉には説得力があった。不器用なアスラン。何をプレゼントしたらいいのかわからず手製のものをプレゼントして喜んでもらえたから沢山作ったと聞いていた。ただ相手に喜んでもらいたいだけでその気持ちだけで十分でラクスさんもキラもアスランからの贈り物を大切にしている。
「何も手作りでなくていいんだぞ?」
「どうしてわかったの?」
「いや、沈んでいってるように見えて……他は知らないがミーアは機械関係苦手だろ?」
あからさまにわかる態度をしてしまっていたのが悔しくて無言で立ち上がり通信機に向かう。
「キラ・ヤマトに今すぐここへ来るよう伝えて下さい」
コーディネーターがみんな機械に強いわけじゃないんだから。ここでできる手製のことができないことが悔しかった。
シンの誕生日まではあっという間だった。あのあと男性物の通販ファッションカタログをあるだけここに持ってくるようキラに言った。金銭問題は外に出るまで何をしないのもいけないとラクスさんの提案で事務作業を手伝っていたけれどもしかしたらシンの誕生日までに少しお金を貯められるように早めてくれたのかもしれない。機密事項に触れない事務作業。それでも関われば何かあった時に疑われる。それでも準備をして任せてくれた。
「これからもっとがんばらなくっちゃ」
机に置いたラッピング袋を見ながら呟く。せめてラッピングは自分でと色々なラッピングをしてみた。結局赤に落ち着いた。
「シンの瞳の色だもの」
部屋に来客を知らせる機械音が鳴り通信機に駆け寄る。
『シンを連れてきたよ』
『わかったわ』
液晶にはキラが映り暗証番号を押すと少しして扉が開いた。
「誕生日おめでとう、シン」
両手を上げてお祝いするとシンは驚いた表情をして照れたのか目を逸らしてありがとうと呟いた。
扉の向こうにキラが見えて閉まる。
「はい、プレゼント!」
早く渡したくてすぐに袋を差し出した。
「開けていい?」
「もちろん!」
片手に持っていた紙袋を置いて渡したプレゼントを開き出す。
「帽子だ」
「そう!シンに似合うのを一生懸命探したのよ。かぶってかぶって」
カタログとにらめっこしながらシンがかぶるのをイメージした。数日ずっとやっぱりあれでもこれもいいと考え続けて決めた。きっと似合うと思ってもやっぱり実際かぶってもらわないとわからない。
包装紙を受け取りずっと見つめているとかぶりにくそうだったから畳み始める。
「どう?」
「似合う!想像以上にかっこいいわ!」
嘘ではなく想像以上にぴったりだった。でもふとこの帽子をかぶっているシンの隣を歩くのは当分先なのだと思うと少しだけ寂しくなる。
「ミーア」
「なに?」
表情に出ないよう意識して笑顔を浮かべると紙袋を差し出された。
「外に出てるから着替えて」
「着替え?」
「外出許可貰えたから」
夢かと思った。呆然としているあたしに紙袋を持たせる。
「どうして?今日はシンの誕生日なのに」
「ミーアの誕生日の時に驚かせられたし外出する方向になってたのもその時初めて知ったからおかえし」
悪戯っぽく言う様に泣きそうになる。
「俺の誕生日に一緒に出掛けたかったし」
「うん、うん」
「早く着替えないと時間なくなるから」
「うん、急ぐ」
私が着替える間シンは通路へ出た。急いで紙袋から服を取り出す。中には帽子も入っていた。形が似ていて何だか嬉しくなる。
シンの誕生日なのにまた貰っている。悩んだけど楽しかった。数日シンに喜んでくれたらいいなと考えると一人の時間も眩しくて輝いて思えた。
早く早くシンに会いたくて好きを伝えたくて急いで着替えて髪を整え帽子をかぶり通信機に向かった。
すぐに扉が開く。シンも赤い軍服から私服に着替えていた。
「シン、大好きっ!」
抱きついて顔は見えないけどきっと笑ってくれていると思えた。
H26.8.26
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