スターチス
誕生日はわからないと言ったアウルに一年に一回祝いたいと話した。アウルは了承してくれて今年もその日が近づく。
「何か欲しいものはありますか?」
「今年は直球だね」
夕食後食器を洗いながらそれとなく聞いてみた。
「ラクスが」
「“私が欲しいもの”というのはなしですわ」
「じゃあラクス」
蛇口を止めてアウルを見つめる。しばらくアウルも私を見ていたけれど持っていたお皿を取り洗い物を再開しだした。
「ラクスが考えてよ。それだけで嬉しいし」
顔は正面に向けたまま言われる。それ以上は聞けずにアウルが洗った食器を拭き部屋に戻った。
数日いつも以上にアウルの様子を見つめてみる。無意識に好むものを手にしたり見たりするはずと思ってもこれといったものはない。アウルは私の行動をわかった上で指摘しないようだった。
これまでもこれからも渡していくプレゼント。だからこそ難しい。
買い出しに出た際に店を覗いてみる。私が貰って嬉しいものからアウルに繋げていく。
プレゼントするものを頭に浮かべ材料を揃え帰り道を急いだ。
「ラクスー?」
部屋の戸が叩かれ驚く。
「は、はい!あ!」
驚いた拍子に手にしていた小瓶が滑り落ちそうになりかろうじてもう片方の手で掴む。
「どうしたの?」
「何でもありませんわ!そろそろお茶の時間ですわね」
「うん、だから呼びに来たんだけど」
「先に行っていて下さい。すぐ行きますわ」
「わかった」
階段を降りていく足音がし息を吐いた。声音から特に怪しまれてはいないけれどわかっていて知らぬふりをしてくれているのだろう。
日にちはもうすぐ。まだ完成はしていないけれど間に合う。焦る気持ちもあるけれど作る過程も楽しく、アウルへの想いを込めた。
当日。前日から落ち着きがなくなっていたのかさすがにアウルに何かあるのか聞かれてしまった。わかっているのに聞くアウルはどこか嬉しそうに見えた。
「アウル、誕生日おめでとうございます」
祝いの言葉を送りプレゼントを差し出す。両手にちょうど乗る大きさ。アウルは受け取る。
「瓶?」
「開けてみて下さい」
包装を開けていくとアウルが言った通り瓶が表れ中の青が目に触れる。
「花?」
「プリザーブドフラワーですわ。飾っておけるんです」
「このまま?」
「はい」
物珍しそうに掲げて色んな角度から眺める。
「スターチスなんです。花言葉は変わらぬ誓い、永遠に変わらない心」
私の言葉に動きが止まりゆっくりと視線を向けられる。
「複雑」
「はい」
笑いながら言うアウル。瓶を両手でしっかりと持った。
「ラクスは花を貰ったら嬉しくて、僕は変わらないものが欲しい。無理だってわかってるけどさ」
「アウルと過ごしてきたからそのプレゼントに辿り着いたんです」
時を止めたような瓶は共に進んできたから辿り着いたもの。
瓶を持つアウルの手に自分の手を重ねた。
「ラクス」
「はい」
「ありがと」
そうして笑い合った。
H26.10.20
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