二人の時間
今日の予定が終わり執務室の机に向かう。ハロの目から机にノートが映されペンを走らせた。
私の誕生日以降アスランと定期的にやりとりをしていた。他愛ないことが大半で文面からアスランが机に向かって悩んでいるのが目に浮かんだ。少し口下手な人。それは出会った時からずっと。出会った時よりは彼から話してくれるようになったけれど。
書き終わり保存しようとして日付がアスランの誕生日が近いことに気がついた。
「何回かあげてる方が困ってきますよね」
「何をあげても喜んではくれるとわかっているのですが……」
ミーアさんに頼まれた物を届けにきた際に相談してみることにした。
一つ考えてることはあるものの迷っているのもあった。
「アスランが今欲しいものはわかってるんですか?」
「あまり話さない人ですからはっきりとは……ですが」
迷いが出たのか言葉が止まってしまう。ミーアさんは首を傾げて語尾を繰り返した。
「あまり会いに行けずにごめんと謝罪されるんです」
「それはお二人とも忙しいし……そういうことじゃないんですね」
「はい。あまり会話ができず途切れたら別れるのでそれも含めてだと思うんです」
「アスランらしいといえばアスランらしいですね。真面目というか」
それが彼らしくて好きなところでもある。気を使わなくてもいいと言っても無意識に考えてしまうだろう。
「自然にアスランが気にせずに一緒にいられる時間を作れたらいいのですが……お茶会ではいつもと変わりませんし」
「買い物、は目立ちますね」
二人で唸りだしてしまう。
しばらくしてミーアさんが顔を明るくさせて私を呼んだ。
「一緒に探せばいいんだわ!」
「探し物?」
「はい」
アスランの誕生日当日。手にした紙を眺めるアスランと共に歩く。
暗号が書かれた紙。私も解答は知らない。ミーアさんがある二人に頼むと言っていた。あの二人なら簡単に解けない暗号なのだろう。
「解くと何かあるのか?」
「それはわかりませんわ」
そう告げるとアスランは特に追及はせず真剣に紙に目を移す。解こうとしているのか何かを呟くアスランを後ろから見守る。こうして見るのはオカピやハロの点検時以来だろうか。
ほほえましく思って見つめているとアスランと視線が合い少し驚いてしまった。
「ラクスも一緒に解かないか?」
「は、はい」
アスランから言ってくれたことが意外で嬉しい。距離を縮め見やすいように紙を向けてくれた。
その後暗号が解け移動すると新しい暗号が置かれていた。
数回繰り返し気づけば執務室へ戻ってきていた。
「建物内を一通り回ったみたいだな」
「そういえばそうですわね。普段立ち寄らない場所も一緒に行けて楽しかったですわ」
私の言葉に顔を逸らす。それが照れだとわかって何も言わない。
「さっきまではなかった箱がある」
「私達が出たあとに置かれたんですね」
「それは反則じゃないか?」
そう言いながら机に置かれた箱に向かう。明らかにプレゼントとわかる包装に私を見やる。
「開けてみてください」
暗号が解けた先には誕生日プレゼント。アスランも察したのか何も言わず包装を外していき蓋を開ける。
「誕生日おめでとうございます、アスラン」
中の物は手に取らず私を見つめるアスランに笑みを向け、そっと中から取り出した。
「コートですわ。交換日記に上着のことを書かれてましたから」
はっきりとではなくアスランも意識して書いたのではないだろう。探しているのは読み取れ物としてのプレゼントはすぐに決まっていた。
「アスランが気に入るものだといいのですが」
「いい色です」
「着てみてください」
色は合格をもらえ、次は着心地。コートを広げ促すとアスランが背を向け袖を通した。
「着心地も凄いいい」
「良かったですわ。私が着心地が良くてもアスランが良いかはわかりませんから」
「着たんですか!?」
思わず敬語が出てしまったのかしまったという顔をするアスランに笑いかける。
「ありがとう、ラクス」
「はい」
「こうして一緒の時間が過ごせて嬉しいよ。いつもラクスに」
アスランの唇に人差し指を置いて言葉を遮った。アスランも意図がわかったのか笑みを浮かべる。
「一緒にいるだけで私とアスランの時間ですから」
人差し指を外しコートの襟に触れ正す。
「それだけで嬉しいですわ」
H26.10.28
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