束の間の温かい空間
こちらへ来る用事があり連絡をすると時間を作ってくれたのか誘いがあり通路を歩いていく。
私室前の警備に通され中へ声をかける。
「ラクス、アスランです」
しかし応答がない。警備にはラクスは中で待っていると聞かされたから確かに部屋にはいるはずだ。
試しに開閉スイッチを押すと扉は開いた。
「ラクス?」
呼び掛けながら中へ踏み出し扉が閉まる。
テーブルの上には用意された茶器と菓子があった。そしてソファには見慣れた髪の色の少女が眠っていた。
「ん……あら?」
横たわっていた体が起き上がり目を擦る。
「ラクス?」
「はい、わたくしはラクス・クラインですわ」
呼び掛けに律儀に答えられ驚く。ピンクの髪、声も顔も知っているのに歳が合わない。目の前にいる自分はラクスだと答えた人物は幼かった。
「貴方は?」
ラクスは座り直し首を傾げる。
「アスラン・ザラ……です」
「アスランですわね。はじめまして」
はじめましてと言われることに違和感があり何と返していいかわからずにいるとラクスは座る位置をずれ隣に座るよう促した。
「わたくし、ここがどこなのかわかりませんの。良かったら教えていただけませんか?」
「はい」
気を遣わせてしまったかと思いながら隣に腰を掛ける。
しかし何と説明していいかもわからないし俺自身も状況が把握できていない。もしかしたら俺の夢なのではないかと思えてきてしまう。
「アスランは大人ですわね」
「そうですか?」
隣に座るラクスはいつもより目線も下で見上げられる。幼い顔立ちで初対面の時を思い出す。初対面の時よりも更に幼く可愛らしい。
「軍に所属されているのですか?」
「ああ……そうですね。俺は戦うしかできませんから」
初対面が過っていたせいで自分の服装を忘れかけていた。指摘されてオーブの軍服の自分を確認して言う。
「戦う……」
「自分にできることが何なのか俺もわからないんです」
自然と敬語になってしまっている。なのに内容は子供にするものではないなとどこかで思う自分がいた。
「何かのために戦っていらっしゃるんですね」
幼いラクスがいつかのラクスの重なる。驚くもやはりラクスはラクスなのだと納得する。
「そうですね……目指す未来があって、守りたいものがあるから戦っています」
大人と言われても大人も子供も関係ない。巻き込まれ生きていく。境界線は何なのだろうとふと考えてもこの場で出す答えなど区切りでしかなく結局明確なものなど精々歳だろう。
「ラクスはラクスですね」
「どういう意味でしょうか?」
「可愛らしくも凛々しいですよ。大人の俺以上に」
笑いながら頭を撫でると不思議そうにしながらも微笑んだ。
「茶器もありますしお茶にしましょう」
「俺が容れますよ」
幼くては扱い辛いだろうと用意を申し出た。
「美味しいですわ」
こうして笑いかける彼女を見ると幸せな気持ちになる。それは幼くても変わらなかった。
やがてうとうととし始めたラクスに眠るよう促すも眠らないよう抗っていたようだったが眠りについた。
膝に頭を乗せて眠る彼女を見つめる。
「俺ももう少しきのきいた話ができたらいいんですが」
昔から変わらない。それでも彼女は沢山話をしたいと言ってくれた。
顔にかかった髪を払いながら頬を撫でる。次第に眠気が訪れ目が覚めたらきっと覚えていないだろうと妙な確信があった。
束の間の温かい空間。どんな姿でも変わらない。守りたいもの。
H26.6.25
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