制止
海が近くて良かったと思う。人と関わることを少なくした生活をしてる中で僕がここにいても世界は動いているみんな生き続けているのだと思える。
だからこうしてたまに砂浜をあてもなく歩いていく。ひとけも滅多になくただ砂と海が広がる視界。
いつもと変わらない日々のはずなのに見慣れない人影がそこにはあった。
「どこか痛いのか?」
足を止めて人影を見つめていたはずなのにいつの間にかその人影はそこにはあらず足元にいて見上げていた。
幼い少女。でも幼くてもあまりにも知っている人物に似すぎていて何より見上げてくる瞳で確信してしまった。
「……カガリ」
「私を知っているのか?」
「名前、だけなら」
夢に決まっていると思い咄嗟にそう答えていた。すると幼いカガリは落胆したように肩を落とし俯いた。
「そうか、じゃあ帰り道は知らないな」
「迷子なの?」
「帰る場所はわかる!」
顔を上げて強く言う様がカガリらしくて笑ってしまう。
「痛いわけじゃないんだな」
「え?」
そういえば痛いのかと先程問いかけられた。聞き返すもカガリは背を向けて歩き出す。そのあとを追った。
「どこにいくの?」
「帰るんだ。私は帰らなきゃいけない」
前を見据えてひたすら歩いていく。
「夢だとは思わないの?」
僕の問いかけに足が止まる。どういう意味かと聞くかのように見つめられた。
「突然こんな場所に来てるなんておかしいと思うよ?」
「夢でも動かないでいいわけがない」
言い切って歩き出す。僕はまるでカガリを阻むものみたいだ。邪魔をしているような。
気づいたら追っていた足は止まっていた。俯いて足元を見つめる。
「僕は動くべきではない」
「疲れたのか?」
呟いたら突然顔を覗き込まれて驚いた。
「大丈夫だよ。カガリは行って」
「駄目だ。置いていきたくない」
そう言って僕の手を掴む。引くことはせずに僕が歩き出すのを待っているようだった。
「痛いなら一人でいたら駄目だ」
「どこも痛くないよ」
心配してくれているようだから安心させるように言ったのにカガリは眉を下げて悲しそうな表情を見せた。
「さっきひとりぼっちで寂しかったんだ。でもお前の姿を見てこの世界には一人じゃないってわかって歩きだすことができた」
掴んだ手に力が入る。とてもそうは見えなかったのに語るカガリが僕を元気づけようと嘘を言っているようには思えなくて握り返した。
「もう少ししたら行くから」
「わっ」
手を引いて抱き上げる。僕より高くなった目線だからか突然抱き上げたことよりも少し違って見える景色に驚いているようだった。遠くにある水平線を見つめる瞳は力強い。
「広いな」
「うん」
しばらくそうして見つめていると大きな波が迫ってきた。
やはり夢だったのかと思いながらカガリを抱き締めるとカガリも小さな体で僕を抱き締めた。
今はまだこの場所にいる。いつか動く時が来たらその時は迷わない。大切な場所を守るために戦うよ。
H26.7.27
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