閑話・カガ&シン編
「……落としたかな」
廊下を歩きながらブレザーをまさぐり携帯を探す。
ズボンのポケットにももちろんない。生徒会室に向かう前は確かにあったから鞄の中という事はない。
アスランさんとの確認後に教室へ向かったらキラさんからまた生徒会室に戻るよう言われて時間のロスとなった。携帯を確認したのはキラさんからの連絡を受けたのが最後だ。
「早くしないと始まるしな」
ミーアと共に探す約束をしていた。と言っても生徒会役員は自分の容器は自分で隠しているため場所はわかる。ミーアに説明はしたけど一緒にいるのがイベントの醍醐味だと言われた。
「とりあえず教室で待ってるか」
連絡がつかなければ俺のクラスに来るだろう。
行き違いにならない内に階段を駆け降り急ぐ。
「う、わっ」
踊り場で曲がりそのまま下ろうとしたら隅に人がうずくまっていて、手すりを掴んで何とか停止する。
「……カガリさん?」
見慣れた後ろ姿に呼び掛けるとうずくまっていた人が振り返った。
階段を一つ降り横に立つと見上げてくる。眉が下がり覇気がない表情をしていた。
「体調でも悪いんですか?」
「いや、悪くない」
「なら早くしないと始まりますよ。キラさんと……」
言いかけてやめる。キラさんは俺を生徒会室で見送っていた。約束していたなら生徒会室に残るはずがない。
「迷ってるんだ」
俯き膝を抱える。弱気な姿に悩んでいる事はわかる。
「迷い続けてもあの人には辿りつきませんよ。カガリさんが迷ってるんじゃなくてあの人が迷子なんですから」
「どういう意味だ?」
意味がわからないと言いたげに首を傾げる。
階段を降りていき振り返り見上げた。
「故意に迷子になってるように思えるんですよ。だから引っ張らないと」
カガリさんにキラさんが打ち明けていない事情を言うわけにはいかない。
でも俺はあの人が嫌いなわけじゃない。借りもある。
だから嫌がらせをする。今あの人は望んでいないし予想していないだろう。
無責任かもしれない。でも止まったままのあの人も見ていたくはない。
「引っ張る、か。わかった!ありがとうな、シン!」
「キラさんなら生徒会にこもってますよ」
笑顔が戻り立ち上がったカガリさんに告げるとカガリさんは礼を言い上へと駆けて行った。
「あ、早く行かないと」
駆け出そうとした瞬間に視線を感じ意識を向けたと同時に後ろ首に鋭い痛みが走りその場に倒れた。
気配も感じさせないなんてさすがだけど盗み聞きなんて趣味が悪いですよとあの人に言う力はなく意識をなくした。
H25.4.15
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