アウ→ラク編
企画開始のアナウンスが終わった。
廊下を歩いていると女子一人や数人で探しているのもいれば、男女で探しているのもいる。
夕刻までの制限時間まで騒がしく行われる企画。僕はただそんな奴らを見ているだけ。
「アウル」
後ろから呼び掛けられて振り返ると廊下の先にラクスがいた。
立ち止まりラクスが来るのを待つ。近くで呼ばれたような気がしたけど意外と距離は離れていた。
「探してんの?」
「はい」
ラクスが近くまできて話しかけると頷いて、俺の前で立ち止まった。
アスランといない事に違和感はもたない。ラクスはきっと一人で探すと思っていたから。
「僕は見回り中」
「アウルは……」
ラクスにしては珍しく中途半端に言葉を切った。何を聞こうとしているのかはわかる。
ジッと見つめられる。僕より身長が低いから見上げられる。年々差は開いていく。
「生徒会役員は強制なんだって。だから隠した」
「鍵はどちらに?」
「捨てた」
ラクスは驚いたようだった。
本当は参加なんてしたくなかった。でも休む事も参加しない事もラクスに知られたら悲しむんじゃないかと思ったらこうして来てしまった。
どれだけラクスを中心に考えているのか。そう考えると嫌になってくる。
ラクスは気づいてるだろうし、僕もそれに気づいてる。
「わかりましたわ」
「は?」
にっこりと微笑んでラクスは僕の横を横切り走っていった。
「ラクスが走るなんて珍しい……」
そう呟いてラクスを追いかけた。
ラクスは僕のクラスに迷う事なく向かった。
教室に隠す奴も探す奴も少ないのか今は誰もいない。
「何してんの?」
ラクスがきょろきょろと教室内を見回す。
近づいていくとラクスが振り返って両手の平を突き出してきた。
「近づいてはいけません」
「……わかった」
それ以上は近づかずにいるとラクスは机の間を歩いていく。
「アウルの席はここですわね」
当たりと言う前に椅子を引いて、屈んで机の中を見る。
そして中に手を入れてから出すと何かを手にしていた。
「それ、どうすんの?」
ラクスが教室に来た時点で何となくわかっていた。
僕の隠した入れ物をラクスが探しに来たのだと。迷う事なく向かうとは思わなかったけど。
「貰ってもよろしいですか?」
ラクスは振り返ると入れ物を両手に持って問いかけてきた。
本来の意味としては告白と同じ事なのにラクスと僕の場合は違う。
でもやっぱり嬉しかった。
向けた好意を埋もれさせずに拾いあげられたようだった。
「見つけたのはラクスなんだから好きにしなよ」
ラクスが他の奴を好きだとわかってる。
別にラクスとどうにかなりたいとは望んでない。
この感情が正直何なのかはわからないけどラクスが好きなのは確かだった。
「時間なくなるよ」
「はい」
ラクスは大事にするように入れ物を持つ手に力を入れた。
そして教室を出ていくラクスを見送った。
「捨てようとしてたんだけど」
上着のポケットから鍵を取り出す。
どこに捨てるか考えていた時にラクスに会った。そして入れ物はラクスの手に渡った。
「いいか」
もう一度鍵をポケットに入れ直す。
開かれなくていい。開かなければどんな感情なのかわからないままだから。
好きなんだと伝わっていればそれでいい。
H24.2.7
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