それは君が笑う未来
「赤い糸というのをご存じですか?」
ラクスは言いながら左手の小指を立てて軽く横に振った。
「赤い糸?」
「見えない赤い糸が運命によって繋がってる、というお話ですわ」
「見えない糸、ですか?」
自分の左手の小指を思わず見てしまう。
見えない糸なんてあるわけがないのに。
「でも必ず一緒になれるわけでも、幸せになれるわけでもないのです」
「ラクス?」
ふいに俯き悲しそうに呟く。
気がつかぬうちに俺はラクスの頬に触れていた。
するとラクスはその手に手を重ね微笑んだ。
「おかしいですわね、突然こんな話」
「おかしくないですよ。俺はそんな糸があるなら……」
たとえ、さきはしあわせでなくとも
「ラクスと繋がっていたいです」
少し溜めてから吐き出された言葉。
でも半分は吐き出さず飲み込む。
彼女を悲しませたくない。悲しませたくないからこんな事を言っているのだろうか。
「アスランはきっと……」
わたくしとはつながってませんわ
そう言われた気がした。開かない彼女の口が笑みを作り、その笑みが言っているかのよう。
それ以上俺は何も言えなくて、ふとポケットに入っていた物に気がつき取り出した。
薄い赤のハンカチ。
前に彼女の家を訪ねた時にお茶をこぼして借りたもの。今日来たのはこれを返す事が目的だった。
「アスラン?」
ラクスの物なのにも関わらず、俺はラクスの断りなくそれを破いた。
ラクスから借りた、俺とラクスを繋いだもの。
細長く破いたハンカチの一片をラクスの左手の小指に結ぶ。
そして俺の左手の小指にも同じように結ぶ。
「繋がりなんてすぐにできるんですよ」
自分自身怒っているのか、悲しんでいるのか、何なのかよくわからない。
でもラクスの何かを諦めているような態度で俺は何かを伝えようと思った。
「すぐに切る事もできる。嫌なら突き放せばいい、でも俺はすぐに納得できるほど……」
言葉を切られた。と言うより飲み込まれた感覚。
ラクスの唇が自分の唇に触れている。
離れて微笑むラクスに今度は俺から口づけた。
それが運命というならば
運命で
これが必然というならば
必然なのだろう
ただの糸に縋るしかないぐらいの偶然で
必然のように繋ぎ合う
逆らっても迎えたい先がある
それは君が笑う未来
H18.2.17
※続きものでアウラクSS【これはあなたが笑う現在】、アスラクSS【あれは君が笑う過去】があります。
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