キラカガ編
目の前で倒れ込む身体を見つめる。一瞬で気を失ったのか受け身も取らず床へと倒れ伏した。
「お疲れ様、シンくん」
倒れたシンに対し呟き、自身の上着から携帯を取り出した。
自分のではない。シンに動いてもらうために先程抜き取ったものだ。
これでカガリは生徒会室へ向かい、いないのを確認したら他を探しに行くだろう。
シンの上着へ戻そうと膝をついてふと思いつきから携帯を開いた。
“誰しも君のように出口を探しているわけじゃないよ”
文面を打ち、未送信メールとして保存しておく。
気を失わせる直前の反応から僕が会話を聞いていたことはわかっているだろう。だから会話を聞いての言葉を打った。
上着に携帯を入れ、肩を担ぎ引きずりながら準備していた教室へと向かった。
ミーアが去るのを見届け再び窓の外へ視線を移した。
「彼女がこの階に来るのは予想外だったかな」
あえて僕がいることを教えてカガリに会っても教えないようにした。
僕を嫌っていてもそのあたりは信用できる子だった。どちらかといえば彼女は僕寄りの子だからわかりたくないのにわかるのだろう。
きっとカガリは僕が避けてるとわかれば探しだそうとはしない。彼女の言う通り下準備をしてきたから。近づかないように縮めないように。
「キラ!」
背に聞き覚えのある声がして驚きながら振り返る。
「カガリ……?」
出入口に立つカガリは一瞬笑顔を見せすぐに怒ったような表情になりこちらに勢いよく迫ってきた。
勢いに押されて立ち上がるけれどそれ以上動けない。
「どうしたの?」
何でもないようにいつも通りに問いかけると足が止まる。まだ僕には手がぎりぎり届かない距離。
『カガリさんがここに来たらイベントを楽しんで』
先程した彼女の賭けという名の提案。我ながら面倒くさいとは思う。でも僕の中ではまだカガリは到達できていない。
「見回りしてないんだな」
「アスランとアウルが主にやってるからね。時間交代で僕も回るよ」
「シンは?」
「さあ?」
あえてミーアと一緒じゃないかとは言わない。だからわかるだろう。カガリはシンと会っている。僕が何かしたのをわかっている。でも踏み込んでこれないようにしたのは僕。
俯いて考えこむカガリを見つめる。見つめるぐらいいいだろう。
「……キラは器隠してないんだよな」
「うん」
僕はそもそもイベントに参加する気がなかった。見つけてほしくないのに隠すなんて卑怯だ。それ以上何もできはしないのに。
「え?」
間の抜けた声が出ていた。
強い瞳が僕を射抜くように見上げてくる。手には器と鍵が。
「私のだ」
「どうして?」
「キラがいらないなら私は窓から投げる」
「危ないよ」
苦笑しながら言ってもカガリはそんな事はしない。きっとちゃんと隠して鍵も隠して誰かに見つけられるまで待つつもりだろう。
試されている。カガリらしくない。先程のミーアの表情が過る。何でも計算通りにはいかないと言われ、カガリらしくない行動をしてしまうほど僕が追い詰めたと責められているようだった。わかりたくないのにわかる。それは僕は彼女寄りだから。
拒むなら引き付けようという事か。
「開けないけどもらっていいかな」
手を伸ばして問いかけるとカガリは驚き涙を目に溜めながらも笑顔で頷いた。
カガリの手から容器と鍵を受け取る。
「一緒に見回り行こうな」
「うん」
何かが変わったわけではない。でもカガリは確かに僕を見つけていた。
H25.6.24
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