シンミア編


 


『企画名キラさんが考えたんですか?』
『そうだよ。わりと耳馴染んでいたほうが興味を持ってもらえるからね』
『でも悲恋ですよね』
『恋焦がれて相手に伝えたいっていうイメージでつけたんだけど駄目かな?』


「ん……」

意識が戻る。目を開けてまだはっきりとしない頭で薄暗い視界をぼんやりと見つめる。

「あれ、俺なにして……っ」

一気に覚醒して顔を上げると後頭部を打って蹲る。

「縛られてる?」

状況がやっと理解できてきてどこかの空き教室の柱に手錠をつけられ身体を固定されていることがわかった。座った体勢なのがまだマシではあるけどこれではどうしようもない。さすがにこのイベントが終わればキラさんがくるとは思うけれどそれも癪だった。

「会えたのかな……」

こんな状況になってキラさんとカガリさんが会えたか気になりなんて緊迫感も何もない。キラさんがなぜこんなことをするのか、カガリさんから逃げるのかがわかってしまうから怒る気にならない。

「ミーアなら来てくれるだろうし」

俺も散々逃げて拒絶したけれどミーアは掴んでくれた。ミーアは俺に感謝していると言うけれどそれは俺の方だ。

「シーン!」
「はや……って、そっちから来るのかよ」

物音と声がした方に自然と顔を向けるとそちらは窓だった。
木に登ったミーアが窓の先から手を振っている。すぐに窓を開けて屋内に入ってきた。

「これじゃあシンがジュリエットよね」

言いながら服や髪についた葉を払う。
辺りを見回し始めて何かを探し出す。

「何で窓から来たの」
「この教室の前に段ボールの山ができてたからどかすより登った方が早いと思ったの、あった!」

物を退かしながら話しているとそんな声を上げて前に来て座り込んだ。

「鍵」
「ああ、手錠の」

言い終わる前に身体が近寄りまるで抱き締められているような体勢で鍵を外し出した。

「外しにくいだろ」
「早くシンに触りたかったの!シン欠乏症」
「そんな数時間で大袈裟な」

見えにくいのか苦戦している様子のミーア。金属音が止み身体が更に密着した。
柔らかくて温かい。髪には払いきれていない葉がついていた。

「見つけられなかったらどうしようかと思った」

学園内の一つの教室を探し当てるには時間がかかる。キラさんのことだからヒントは出したんだろうけどミーアが今にも震えそうな様子に抱き返せないことがもどかしく感じる。

「シンのことわかってるつもりだっただけなのかと不安になったりして」

金属音が再び鳴り出して手首から戒めが外れた。

「俺だって全てわかってないんだからわかるわけがない」
「うん」
「いつも信じるって言ってるんだからそれでいいんだよ。だから俺もミーアを待っていられたし」
「あたしを待っていてくれた?」
「当たり前だろ」

ミーアが身体を離すと微笑んだ。不安は残ってるかもしれない。それでもいい。俺達はそうしてきて今がある。お互いがお互いを好きで共にいたいと伝えて信じてるからこそ一緒にいる今がある。

「それじゃあ容器を探すか」
「容器はジュリエットならぬロミオ救出と共に見つけたわよ」

立ち上がりミーアに手を貸すとミーアは容器を出して見せた。
ポケットから鍵を取りだしミーアの手に置いた。

「俺がいないところで、って最後まで聞けよ!」

聞く気などない様子で鍵を容器に差し込み開き出す。
やはり目の前は照れ臭い。中の紙を開くとすぐに顔を上げて嬉しそうに笑った。
俺と共にいてくれる君に感謝を。



H26.1.9



book / home