妄想疑惑再び
「ねぇアスラン」
キラはアスラン宅のベッドに寝そべりつつ雑誌を読んでいるアスランをつつく。
「なんだよ」
「まだこの前の事怒ってるの?」
“この前”というのは先日キラがアスランに“なぜラクスのマタニティ宇宙服を見て驚いたか”を聞きキラが勝手な妄想をした事である。
「別に」
ぶっきらぼうに答えるアスラン。
「やっぱり怒ってるんじゃん……」
「怒ってなんかない」
そう言いつつ声はあきらかに怒っている。
「そんな怒らないでよ。僕がおもしろい話をしてあげるから♪」
アスランは何も返事はせず雑誌を見ている。キラは構わず話しだす。
―ある所にアスランとキラという二人が山に住んでいました。キラは山に芝狩りにアスランは川に洗濯に行きました。すると上流からきれいな桃色をした桃が流れてきました。
どんぶらこっこ
どんぶらこっこ
と流れアスランは迷わず桃を掴み家へと持って帰ろうとしました。すると突然桃が持てなくなるほど揺れはじめたため地面に置くと自然にスパッと半分に割れました。
「はじめまして、ラクス・クラインでしゅわ」
すると桃から5歳ほどの少女が出てきました。アスランは思わず押し倒します。
「な、なにをなしゃるのでしゅか!?」
ラクスはあわてるがアスランはひたすら続行。ついには……
スパンッ
「痛い……」
「雑誌だからまだマシだろう」
雑誌を丸めキラの頭をはたくアスラン。
「お前はそんなに俺を変態にしたいのか?」
「アスラン……目が怖い、怖い」
キラはしょうがないな〜という顔をし違う話しにする事にした。
「じゃあこれは?」
リーンゴーン
12時の鐘が鳴り階段を急いで降りているラクス。
「待って!君の名前は?」
アスランが追いかけてくる。しかしラクスは答えられない。
「アスラン様……答えられない私を許して下さい」
呟くラクス。ラクスは階段を踏みはずし落ちる。
「きゃあっ」
整えている暇はなく急いで立ち上がり駆けていく。
「これは……」
アスランの手にはラクスが穿いていたガラスの靴があった。
やがてガラスの靴を手がかりにラクスを見つけアスランとラクスは結婚しました。
「終わり?」
キラは満足そうな顔をし頷いていた。
「え?そうだけど……」
スパンッ
「なんでだよ〜」
アスランはわけもわからずキラをはたいた。
「オチがないだろ!」
「だって〜」
キラはぐちぐち言いながら話しだす。
白馬に乗ったアスランは七人の小人が泣いているのを見つけた。
「どうしたんだ?」
小人は何も言わずある所を指さす。アスランはびっくりする。
「すごい格好だな……」
ピンク色の髪の少女が花に囲まれて寝かせられた。しかし少女の格好はほぼ裸と言ってもいい姿で半透明なワンピースを着ていた。
「毒りんごを誰かに食べさせられちゃったんだ」
小人の一人に言われるが
“なんで毒りんごでこの格好になったのだろう”
とそんな疑問浮かんだ。
「早くしろ!」
今度は違う小人の一人がアスランを少女の近くにひっぱる。
「え〜と……」
どうすればわからずアスランはとりあえず口づける。
「……あれ?」
ありきたりな展開なら目覚めるはずが少女は目覚めない。
「何やってるんですか?」
「そんなんじゃ目は覚めないぜ」
「そんなんじゃって言われても……」
他に目覚めさせる方法がわからずラクスを見つめていると薄緑色の髪の小人が呟いた。
「そんなこともわからないわけ?」
「純情ぶったってヤる事わかってるんだろ?」
「まったく、これだから王子というのは嫌ですね」
文句を言う3人の小人を茶髪の小人がなだめていた。そんな様子を見てため息をつくアスラン。
「さぁアスラン」
「へ?」
なぜか赤い服の小人3人がラクスの足を広げつつアスランを見る。
「ま、まさか目覚めさせる方法って……ラクスに挿」
スパンッ!
「ぐはっ」
アスランの勢いのいいハリセンに頭が耐えきれず床にぶつける。
「キラ」
「目が怖いってアスラン」
今にもハリセン百連発をお見舞いしかねないアスランをなんとかなだめようとする。
「ちなみにまさかとは思うがオチは俺と小人が……」
「よくわかったね!すごい、アスラン」
スパンッ!
「なんで〜」
「お前と意志疎通ができて俺も嬉しいよ」
顔は笑っているが頭に怒りマークがついてるような雰囲気のアスラン。
「で?」
「へ?」
「“へ?”じゃないだろ!結局キラはなにがしたいんだよ」
キラは出されたケーキを食べつつキョトンとする。
「だからアスランとラクスの初めての」
「分かった。俺の聞き方が悪かった。キラは何で俺とラクスの……“初めて”が知りたいんだ?」
ピンポーン
アスランが聞いた瞬間に呼び鈴が鳴る。
「誰か来たみたいだから僕見てくるね」
キラが部屋を出て玄関へ向かう。
「っ!?」
アスランは何かに気づき急いでキラを追う。しかし時すでに遅しでキラはドアを開け客人と話していた。
「キラ……お前わかっていて速く行ったな?」
「なんのこと?」
キラは少し勝ち誇ったかのようにアスランに振り返った。
「アスラン、こんにちは♪」
「ラクス、キラに何か聞かれた?」
客人はラクスで、キラはそれがわかっていて玄関へきたに違いない。ラクスに何か聞きに……そう思いアスランはラクスに聞いた。ラクスはキラを見つつ言う。
「初めてアスランに迫られたのはいつかと……聞かれましたわ」
ラクスは平然と笑顔で答えた。アスランも笑顔でキラに近づいていく。
「アスラン?」
無言で近づいてくるアスランにキラは不思議に思い問いかける。しかし返事はない。
「ラクス!あんなところに羽がはえてぷりちーなピンクハロが!」
「まぁ!どこですか?」
アスランに外をゆびさされ振り返って“羽がはえていてぷりちーなピンクハロ”を探すラクス。
スパパパンッ!
「どこにいるのでしょうか?」
「羽がはえているせいか光のごとく駆け抜けて行ってしまったよ」
「まぁそれは残念ですわ」
ラクスは心底残念そうにアスランとキラの方へ向き直る。そこには笑顔のアスランと頭から煙がでて倒れているキラがいた。
「キラ!?大丈夫ですか?」
ラクスはキラに寄り揺り起こそうとする。
「昨日遅くまでゲームしてたから疲れて寝てしまったんだよ。そっとしておこう」
「そうなのですか。では何か掛けてさしあげないと」
「あぁ大丈夫。キラはきっと風邪ひかないから」
「今日はいきなりどうしたんだ?いつもなら電話してからくるのに」
キラを玄関に放置したままアスランはラクスを自分の部屋に招きお茶をいれていた。
「電話しましたわ。キラがでまして私がくることをアスランに伝えておくと言われまして」
「え?」
“だから玄関へすぐに行ったのか……”
「で、ラクスはさっきのキラの問いに答えたの?」
ラクスはお茶を一口飲み一呼吸おく。
「はい、アスランと婚約して一年ぐらいしてから迫られたと言いましたわ」
笑顔で答えられアスランはそんなラクスを見つめ続けた。
「……キラはなんか言ってた?」
「えぇ、“やっぱり”と笑顔で言われましたわ」
“やっぱり”って何だ!“やっぱり”って!と心の中で突っ込むアスラン。
「ちなみに状況とかは言って……ないよね?」
「すぐにアスランがいらっしゃいましたから詳しくは言えませんでしたわ」
詳しく話すつもりだったのかラクス!とまた心の中で突っ込むアスラン。
「“あの時”は本当にびっくりしましたわ」
「え〜と……ごめん」
しみじみと思い出しながら言うラクスに謝る。
「ラクスと一緒に過ごしてたらなんていうか……」
口ごもるアスランに微笑みかけるラクス。
「いいえ、私嬉しかったですわ。あの時のあなたはまだ私にあまり話してくれませんでしたし婚約した事が嫌だったのではないかと心配してましたから」
「ラクス……」
微笑んでいるラクスの頬にそっと触れる。
「それで“初めて”はやっぱりアスランから迫ったんだ?」
「あぁ……なんか理性がとんだというかタガがはずれたというかって……え?」
いつの間にかドアが開いていてそこにキラが寄りかかってアスランの顔をにやにやしながら見ていた。
「キラ!お前!」
アスランは立ち上がりキラに近づく。キラはただ立っているのをやめアスランをすりぬけ部屋に入る。
「アスラン、あんまり怒ると……」
「怒ると?」
「血圧あがるよ」
しばしの沈黙。
「キラ〜!」
部屋の中をキラとアスランがぐるぐる回り中心でラクスはお茶を飲み二人を見ている。
「“知らなかった時”を埋めたいのですよね?」
聞こえるか聞こえないかぐらいの声でラクスは呟いた。
−“で?”−
「お前は本当に何が知りたかったんだ?」
何度となく聞かれた質問にキラはため息をつくとこう答えた。
「やっぱり知りたいじゃない?アスランのこと」
「なっ!?」
アスランは過剰ともとれる反応を見せ後ろにあとずさった。
「何でそんなに驚くのさ」
「お前にそんな趣味が…」
アスランの過剰な反応はコレが理由かと判断したキラは一瞬口元をゆるめるがすぐに膝をつきアスランの腰にしがみついた。
「ひどいよ、アスラン!僕はずっと君の事……」
言いかけうぅと泣きながらアスランの服に顔を埋める。
「キラ……俺」
「アスラン!」
キラをなだめようと腰を低くしたアスランの首に腕を回すキラ。
その瞬間…
バサバサッ
「何……やってるんだ、お前等」
雑誌を落としたカガリが二人を目撃していた。正確には二人を見て雑誌を落としてしまったわけだが。
「あらあらどうしましたの?…まぁまぁ」
するとどこからともなくラクスがやってきて相変わらずなテンションで反応する。
ここはキラ宅。カガリがいるのはわかるがラクスがいるとは知らなかったアスラン。
「……ハメたな、キラ!」
「僕何も言ってないよ〜?」
手元にあった雑誌を丸めキラの頭を叩こうとするアスラン。
「最近アスランの痛いんだもん」
と、言いながらカガリの後ろに隠れるキラ。その言葉を聞いて顔を赤らめるカガリ。
そしてそのカガリを見て顔を赤くするアスラン。
「誤解されるような事言うな!」
そんな光景をラクスはくすくすと笑いながら見ていた。
「アスランは面白いですわよね」
「からかいがいあるよ、本当」
ラクスの言葉に返事をするキラ。その余裕が気にさわったのかアスランは何としてでも捕まえようと手を伸ばす。
「キラっ!」
「あははっ」
しばらくラクスのくすくすという笑い声、カガリの誤解……そうか誤解か…でもでもという声、アスランのキラを呼ぶ声、そしてキラの笑い声が響いた。
“僕はずっと君の事を見ていたいんだ。幸せな君を”
H15.7 加筆修正
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