耳かき


 


「今日は耳の日ですわ」

突然脈絡もなく言い出した愛しき人。
手には……

「……耳かき?」

ラクスは両手で耳かきを手にしながらアスランへとじりじり詰め寄る。

「ら、らくす?」

笑顔でかつ異様な雰囲気で近寄るラクスから後退するアスラン。

「耳掃除……させてくれませんの?」

アスランのツボを知っていますといわんばかりにラクスはしゅんとしたのち上目づかいで問いかける。
そんなラクスを見つめながらしばし制止する。
しかし答えは決まっていた。

「ぜひしてください」


「いかせていただきますわっ」

意気込みをつけたラクスはアスランの頭を半ば強引に自分の腿に置き耳かきを耳へと伸ばす。

「ま、待ってください!」
「……お嫌ですの?」

アスランはしばし固まり口を開いた。

「……俺、くすぐったがりでその」

つまり自分はくすぐったがりだから耳かきの類は苦手であるからにやめてほしいというのであろう。

「かまいませんわ」

かまわなくはないだろうとツッコミたくなるがそうではないと言ったように首を振り再び口を開く。

「動いたりしてやりにくいですから……だから」

やめてほしいという言葉がいえずしどろもどろするアスラン。
仮にも好意でやってくれると言っているのにそれを否定する言葉など言えず、それが恋人ならなおさらだ。
……それに膝枕は気持ちがいい。
アスランがそんな事を思っているうちに耳に違和感があることに気がついた。

「ラクス!?」
「……動いたらだめですわ、危ないですし」

言いながら耳かきを俊敏に動かす…アスランの耳に入れながら。

「痛くはないですか?」
「大丈夫です」

痛いどころか心配していたくすぐったさもなくむしろ気持ちがよかった。
彼女の膝のうえということもあるのだろうが自分を知ってくれているようでこの心地よさはすごく幸せだとそう感じた。

「眠かったら寝ても……あらあら」

ラクスがそう言う前にアスランは静かに寝息をたてていた。
ラクスはいそいそと毛布を持ってくるとその毛布を見つめアスランへとかけた。
そして寄り添うようにして願わくば夢の中でも…と思いながら眠りについた。


H16.3.3



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