仮病をつかおう


 


「ちょっと……もうやめ……んっ」
「本当はやめてほしくないんだろ?」
「そんなわけ……あぁ!」

ミリアリアはディアッカ自身が深く入ってきた衝撃に耐えられず気を失う。

「何?このぐらいでイっちゃうわけ?」

ディアッカはそう言ってミリアリアの首に腕を回し軽くキスをして眠りにつこうとする。

「……気負いすぎなんだよ」
天井に向かってつぶやく。


「おい!なんでそんなに怒ってるのさ」

街中でディアッカがミリアリアを追っている。しかしミリアリアは振り向きもせず無言で歩いていく。

「おいって」

ディアッカはミリアリアの肩をつかみ無理矢理向き合うかたちにする。

「いいかげんにしてよ!」

ミリアリアの怒声で周りの人たちが二人に注目する。

「何でそんなに怒ってんの?」
「あんた、自分がした事わかってるの?」
「セ……ぶっ」

ミリアリアはディアッカが言わないように口を手で塞ぐ。

「言わないでよ。恥ずかしいから。とにかく私、これからバイトなんだから着いてこないでよ!」
「はぁ?さっきもバイト先から出てきたばっかじゃ……」
「違うバイト!」

ディアッカは無表情になりミリアリアを見つめる。

「何よ」

何も言わないディアッカ。

「見ないでよ」

それでも何も言わないディアッカ。

「見ないでったら!」

パンッ!
ミリアリアはたまらずディアッカの頬を叩いた。

「あ……べ、別に私あんたの事なんて好きじゃないんだから!」

そう言って走り去る。ディアッカは無言のままミリアリアの背中を見ていた。


「はぁ……つかれたっと」

ミリアリアは自宅に帰るなりベッドに飛び込んだ。しかし何やら違和感がある。

「ん……?きゃあっ!あ、あんた何やってんのよ」

ディアッカがベッドに潜りこんでいた。

「合い鍵使ってミリアリアを待ってたのさ」

目を大きくさせディアッカを見るミリアリア。しばしの沈黙。

「ぷっ、あはは!何やってるんだか、本当」

笑いだしたミリアリア。ディアッカはそんなミリアリアに口づける。

「ちょっ、やめて!」

突き飛ばされ少し笑うディアッカ。

「何がおかしいのよ?」
「いや……あんた、俺に惚れてるのに気づいてないからおもしろいなって思って」
「なっ!自惚れもたいがいにしなさいよ。そもそもあんたが勝手に家に来てあんな……」

ディアッカはミリアリアの言葉に聞き入る。その行動が恥ずかしく感じ赤くなるミリアリア。

「まだ死んだ元カレの事背負ってんの?」

パンッ!
本日二度目の平手打ちがディアッカの頬にくらわされる。

「図星だ。でもそれは愛情じゃないっしょ?」
「違う!私はまだトールの事っ……」

ミリアリアはそれ以上言葉を続けられない。

「せっかく俺がベッドで疲れさせて寝させようとしてるのにそれでも気負って自分の体にムチ打って生きてるんじゃ世話ねぇぜ」
「別にそうゆうわけじゃ……」

ディアッカの顔が見れなくなり目を逸らす。

「もう背負わなくてもいいんじゃないの?」
「あんた……結局何が言いたいのよ」
「ミリアリアが好きって事」

顔を背けていたミリアリアはその言葉に反応して思わずディアッカを見る。

「あれ?知らなかった?」
「あんた、バカよ」

そう言いながら泣き出すミリアリア。

「いっその事死ねればって思ったの。でも死ねなくて…夢を見ればトールが私を呼ぶ。だから寝たくなくて……」

途切れ途切れに子供のように泣きじゃくりながら全てをはきだす。ディアッカはそっと近寄り抱きしめ頭を安心するように軽く叩く。やがてミリアリアは眠りにつく。



「ん〜?今何時……え?えぇ〜!」
「どうした!?」

ディアッカがミリアリアの驚愕の声にかけつけると枕が顔面で迎えてくれた。

「なんで起こしてくれないのよ!」
「あ〜大丈夫、大丈夫」
「な、何がよ?」

ディアッカの“大丈夫”に少し安心するミリアリア。

「バイト先には“熱”って言っておいたから」
「は?」
「一つだけ残してあとは辞めますって言っておいたぜ。あ、時給いいところ残しておいたから」

わけがわからず唖然とするミリアリア。

「もう無理する必要ねぇだろ?」
「何でよ」
「俺がいるから」

ミリアリアはまたうぬぼれが始まった……というような顔をする。

「たまには仮病つかったほうがいいぜ。今まで頑張ったんだからな」

ディアッカの言葉でだんだん笑顔になる。ミリアリアは立ち上がる。

「さぁ〜て朝ごはん食べよっかな」
リビングへ向かう。その後をディアッカはついていった。




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