I deal Forest〜無差別恋愛〜
―何故、あなたは来ないの?
まだ、夜は明けないの?
金網の向こう乾いた錆の臭い
痩せた胸を締め付ける
この森に入ってしまったらもう、出れない……―
「はぁ……はぁ」
ラクスは暗い森の中を走り続ける。何に追われているかはわからないがひたすら走り続けている。
“何から逃げているの?
何に追われているの?”
ラクスの中で何回も問う。しかし答えは出ない。
“どうして痛むの……?”
―数時間前―
「結婚……してほしい」
アスランはラクスに突然求婚の言葉を贈った。手をにぎられ見つめられるラクス。
“この胸の痛みは恋なのでしょうか?”
ラクスはしばし考えアスランの手を握り返し微笑んだ。
アスランは喜びのあまり何をするかわからないから……と言って家へ帰宅した。
アスランが帰り少ししてから呼び鈴が鳴る。
「どなたでしょうか……キラ?」
ラクスがドアを開けるとそこにはキラが立っていた。
「久しぶりだね、ラクス」
しばらく行方をくらましていたキラ。ラクスはキラを家へと通す。
「今までどうなさっていたのですか?」
ラクスはお茶を容れながら聞く。キラは無言でカップを取りお茶は飲まず水面を見つめる。
「家にはいたよ。ただたんに誰とも連絡とっていなかっただけ」
「まぁなぜですか?アスランがとても心配してましたのよ。もちろん私も」
ラクスから“アスラン”という言葉がでた瞬間キラの顔が切なげになる。キラのその顔を見てラクスは顔を背けた。
“なぜ胸が痛むの?これは…何?”
困惑するラクス。キラは少し微笑みながら聞いてくる。
「アスランとはうまくいってるの?」
キラからその言葉がでた瞬間ラクスはまた胸が痛む。そして先ほどのキラのように切なげな顔になりキラを見る。
「うまく……いってないの?」
「そんなことは……!」
“ない”と口から出そうになるが言葉を続ける度に切ない顔になるキラに耐えられず途中で言葉をきる。
「好きなんだ」
突然キラから発せられた言葉に涙を流すラクス。悲しいからではなく“嬉しい”涙。キラの言う“好き”がどういう意味かもわかりながらも涙は流れ続ける。
「じゃあラクス、また来るよ」
キラはクライン邸の玄関でラクスに別れを告げる。ラクスは何も言わず切なげにキラを見つめたままだ。キラはラクスを引き寄せキスをした。
「……期待してもいいんだよね?」
胸が高鳴るラクス。
“これは……恋?”
ラクスは無言で優しく微笑みキラを見送る。しかし後ろから“あの人”の声が聞こえ何も見えなくなる。
「どういう事なんだ?」
しばしラクスの時は止まり振り返ると帰ったはずのアスランがいた。
「さっき来たんだけど客人が来ていたから待たせてもらってたんだ」
アスランはどこか傷ついた瞳でラクスに近づいてくる。ラクスは何も言えず佇む。
「俺への言葉、仕草は全て偽りだったのか?」
求婚してきた時とは違い低い声のトーンで静かに聞かれる。
「偽りなどではありません!」
「なら、なぜ?」
ラクスは何も答えられない。
「好きだ」
アスランはラクスに詰めより肩を掴む。
「こんなに愛してるのに……何で!?」
今にも泣きそうで下を俯きながら訴える。
“やはりこの人への思いは……恋なの?”
ラクスはアスランの頭をそっと抱きしめる。
「本当に……今も昔もあなたへの気持ちに偽りなどありませんわ」
アスランは顔をあげラクスに口づける。しかし口づけられた瞬間ラクスの頭にキラの顔が思い浮かぶ。
ドンッ
「あ……ごめんなさい!」
ラクスはアスランを突き飛ばし外へと走りだした。門のところまで行くと見覚えのある人影が見える。
「キラ……?」
キラは呼ばれてもただラクスを見つめるだけ。何もかも見透かされているようで体を両腕で隠すように包む。
「どうしたの?」
キラはほくそ笑みながら聞く。
「ラクス」
後ろからアスランがやってきて二人に挟まれるラクス。膝をつき崩れる。
「「ラクス」」
二人から呼ばれさらに困惑する。それでも胸は痛む。
“この痛みは恋なの…恋はこんなに苦しくて残酷なの?”
どうすればいいのかわからずキラをすりぬけ走りだす。
“どこまで走れば楽になれるの?”
ラクスは果てなく走る。しばらく走ると見たことのない森に入る。何かにつまずき倒れる。疲れていたのかそのまま寝てしまうラクス。
「ん……」
小雨が降りだし雨粒で起きるラクス。
“夢ならよかったのに……でも二人の事を考えるだけで胸が……”
そう思い胸を抑える。あてもなく何も考えず歩き出す。するとどこからか声がした。
「……誰かいるのでしょうか?」
声がする方へおそるおそる行く。
「……っ!?」
ラクスは驚きのあまり驚きの声を両手で抑えた。
「アス……ラン、んぁもっと」
「キラはよくねだるな…」
ラクスは全裸でつながっている二人を見てしまった。そして逃げようとする。しかし……
「誰だ?」
アスランが呼びかける。ラクスは息も止めじっとする。
「そこにいるのはわかってるんだよ、ラクス」
キラに言われびくつき思わず足元の枝を踏んでしまった。
「ラクスが来るのを待ってたんだよ」
アスランはキラの中に挿れたままラクスを招く。ラクスは何も言えず走り出す。
「逃げても無駄なのに…」
キラはラクスが行った方向を眺め怪しく呟いた。
「はぁ……はぁ」
“何から逃げているの?
何に追われているの?”
ラクスの中で何回も問う。しかし答えは出ない。
“どうして痛むの…?”
“この気持ちは一体何なの?”
ラクスが走っていると森の出口なのか光が見える。やっとこの森から出られる、そう思った瞬間。
「金網……?」
金網があり外へ出るのを妨害していた。金網の向こうも森だが更に向こうに光が見える。上るかどうか迷っていた時聞き慣れた今聞きたくはない声が聞こえた。
「無駄なんだ、だからこっちへおいで」
アスランとキラが現れる。先ほどの場所から距離があるにもかかわらず息ぎれ一つしていない。
「無駄な事なんてありません!」
「そうだね。じゃあ僕たちへの気持ちも無駄じゃなかったんだね?」
キラの言葉に胸が痛むラクス。
「きゃっ」
後ろから何かに引き寄せられ金網に縛りつけられる。
「痛っ」
腹部を刺が回り金網に縛りつけている。刺はまるで生きているかのようにきつくなり服に赤い染みができる。キラとアスランは笑ってそれを見ている。
「ラクスの胸の痛みと同じぐらい痛いだろう?」
アスランがラクスに近寄り首を噛む。ラクスはあまりの痛みに涙を流す。手は自由なためアスランを振り払おうとする。
しかしキラが両腕を金網におしつける。アスランは噛むのはやめひたすら舐め始める。
「ずいぶんおとなしくなったね」
ラクスを見下ろし言うキラ。ラクスは金網からおろされ地面に全裸で仰向けにされ二人に何度も“された”気の遠くなるほど何度も。時間は経っているはずなのに夜は明けない。
「次はどうして欲しい?」
アスランが怪しい笑いで聞く。二人はラクスの体を嘗める。ラクスはそれで喜びを感じ二人はその喜びを見て喜びを感じる。時には刃で傷つけ赤い鮮血が流れる。それでも喜びは溢れる……これが三人の愛のかたちだから。
―これは悪魔が見せた夢
ただ揺らめいて落ちてゆくなら…
誰を愛していたのかも解らないほど
この体中を切り裂く刺を抱きしめてる……―
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