2章 entertainment


 


○はじめに○
時代パラレル同様何時代なのかよくわからないパラレルとなっています。
趣味突っ走りな吸血鬼ネタ交えのパラレルです。
CP要素はないに近くアス→ラク、キラカガ、若干アウラク。
登場キャラはアスラン、ラクス、アウル、キラ、カガリ、シン、ミーア、ステラが少し。
以上を了承いただけましたらおすすみください。



息ができない
一生懸命
空気を取り込もうと
口を開くのに
空気を出そうと
口を開くのに
感じるのは
流れる涙だけ
死ぬ
この世界から
いなくなる
もう何もないのに
親も殺されて
縋るものなんて
……安心ができる場所なんて
ないなら

死んでしまえ

「う……いや……だ」

それでも
生きたいと願ってしまうのは
どうしてだろう

「アウル、大丈夫ですわ」
「うん……」

そして
僕はジブンを保つ


◇◆◇◆◇◆◇◆◇


「でもそれだけだと被害者が昨日来たかはわからないだろ?」
「何の話だ?」

情報をまとめているものの真相を掴めそうな情報がない。

「カガリが昨日……」

キラはあからさまに顔を不機嫌なものにさせながら言おうとした。

「昨日?あぁ何か突然銃を向けられたな」

あっけらかんと物騒な事を言い出したカガリをアスランは驚きながら見た。ステラは訪問してきたカガリにお茶を出している。

「夜にか?」
「昼間。僕が通りかかったから怪我とかはしなかったけど」
「相手の怪我が酷くて謝るようになったけどな」

その様子が容易に想像できてアスランは二人から視線をはずした。

「それで何のために来たのか聞いたら今日……もう昨日か。昨日着いたばかりで誰かを探してるって」
「ステラには吸血鬼と出しておいてキラ達には何を探してるか言わなかったのか?」

引っ掛かる。
探しているなら街の人間に片っ端から聞いた方が早い。

「機密事項で言わなかった可能性もある」
「協会の人間だと?」

遠く離れた場所にこの街よりも遥かに大きな街がある。そこは一帯の中心ともいえる。
そこには協会と呼ばれるものがある。
何をしているかは知らされてはいないが正義の味方の類だと認識されている。
怪奇事件など少し大きな事件になると一般人にも報酬を与える。

「協会の人間か……」
「わざわざ出向くなんてよっぽどだね」

結局今の情報では何も得られないため各自情報収集をする事にした。
ステラは連絡係としてアスラン宅へと残った。

「じゃあ俺はあっちを回る」
「うん。一人で大丈夫?」

アスランは一人で、キラとカガリは二人で情報を集める事が多い。いつも交わされる言葉。
アスランはいつも通り少し笑みを浮かべ大丈夫だと返した。

「私も一人で大丈夫だぞ?」

カガリが二人を見ながら言うと二人は顔を見合わせてから、再びカガリに顔を向けると同時に言った。

「「それだけはやめた方がいい」」
「誰?」

礼拝堂の扉が開かれた音でアウルは目を開いた。
ラクスに自分にかけられていたコートをかけ立ち上がる。

「ここにいると聞いたから来たんだが……」
「何か用?えっとーアスラン……だっけ?」

礼拝堂に訪れたアスランに一歩一歩近付いていく。

「こんなボロい礼拝堂にお祈りに来たってわけでもないんだろ?」

明らかに警戒しているアウル。アスランを奥にいるラクスに近付かせないよう、アスランの前に立ち塞がった。

「聞きたい事がある」
「話せる事は多分ないと思うけどね。それでいいならどうぞ」


◇◆◇◆◇◆◇◆◇


「なかなか目撃者っていないものなんだな」
「そこまで犯人も馬鹿じゃないって事だろうね」

手当たり次第人に聞いてはいるものの新しい情報は得られていない。
気味悪がって逃げて行く人もいるぐらいだ。

「昼時だしお昼にしようか?」
「そうだな」

一度アスラン宅に戻り食事をしようと足を進める。もしかしたらアスランが何か新しい情報を得たかもしれない。

「お腹減ってたの?」
「そ、そんな事はないぞ!」

早歩きでスキップしそうなほど笑みを浮かぶたカガリを見てキラは笑った。
しかしその笑みもすぐに消えた。

「カガリ!危ない!!」
「え?うわっ」

キラはカガリに飛び付き地面に転がった。
カガリが立っていた場所にただならぬ音と何かが駆け抜ける。

「誰だ!」

カガリを抱いたまま叫ぶと靴音と共に人影が二つ現れた。

「人を探しているんです」

銃を右手に持った黒髪の少年。赤い瞳はキラではなくカガリを捉え銃の先を向けていた。
その少年の後ろに長い桃色の髪の少女がいた。

「探してるってわりには行動が危ないね。まずは情報収集からしなきゃ」
「情報を元に行動に出てるんですよ」

キラの右頬を何かが掠めると傷ができ血が流れた。

「貴方の身のためですからその人を置いてどっか行ってくださいね」

少女がにっこりと笑いながら忠告をした。
血を拭う事もせずキラはカガリを抱く腕に力をこめる。

「あー!?」
「か、カガリ!?」

腕の中にいるカガリが何かに気がついたように声をあげた。
今の雰囲気にはあまりにも不釣り合いでキラは少し拍子抜けをしてしまう。
それは相手の少年と少女も同じようで威圧感はなくなっていた。

「お前昨日の夜に会ったよな?連れは大丈夫だったのか?」

カガリの視線は少女に向けられていた。
少女は覚えがない事を言われ困惑した表情を見せていた。

「……知り合い?」
「そんなわけないでしょ。ずっとシンと一緒にいるのにいつ会えるのよ」

何やら小声で話し始めると少年はため息をつき銃をおろした。

「君らは何?」

訝しげな目でキラとカガリを。特にカガリを見るが少年はもう一度ため息をつくと、少女に小声で何か言いこちらを向いた。

「無礼お許しください。少しお話しを聞かせていただいてもよろしいですか?」


◇◆◇◆◇◆◇◆◇


「君の名前は?」
「アウル・ニーダ」
「名前は教えてくれるんだな」
「別に聞かれて困る名前じゃないし」

昨日訪れたというこの二人。
何か目的が旅をしているのかもしれない。それでも昨日の事件と関係があるように思えて仕方がなかった。
無関係とわかればそれでいい。
だから二人がどこにいるか街で聞き回ったのだ。
比較的目立つ風貌なのか雰囲気なのかすぐにどこにいるかはわかった。

「どうしたの?もう終わり?」

無言のアスランに痺れを切らしたのかアウルは言葉をかけた。

「いや……何のためにこの街に来た?」
「来たかったから」

飄々として答えるアウル。確かにそう言われたらこれ以上は聞けない。
無言であれば突っ込んだ質問ができたり怪しめる。
しかし即答だ。読めない。何を考えているのか。

「私達はただ旅をしているだけですわ。身寄りがなく留まる理由もないものですから」
「ラクス!?」

いつの間にか起き自分の後ろにいた事にアウルは驚いた。

「……こんにちは」
「こんにちは、アスラン」
「そういえば貴女の名前を聞いていませんでした。教えていただいてもいいですか?」

アスランが聞くとアウルはラクスがそれ以上アスランに近付かないように、手で制した。視線はアスランを睨むように向けられている。

「ラクス・クラインですわ」

名前に嫌な高鳴りを感じた。聞き覚えがある名前。

「クライン……ですか」
「はい」

何もかも見透かし、かといって自分は決して見せないような笑み。
もしかしたら自分が疑っているのがわかっているのかもしれない。
そう思うとそれ以上言葉が出てこなかった。
それでも視線がはずせない。ずっと見ていたいと思うほど。
自分はどうしてしまったのだろう。

「今度は誰?」

再び扉が開かれた。アウルがうんざりしたように扉に視線を向ける。
アスランの時は静かに開かれたが今度は勢いがよく、礼拝堂内に開かれた音が響き渡った。
その音にアスランは我に返り扉の方へ振り返った。

「本当にそっくり〜」
「生き別れた双子かなんかなんじゃないの?」
「違うわよ。あたし一人っ子だから!!」
「別に威張る事でもないし」

見た事がない少年と少女。いや、少女はここにいるラクスと容姿がうり二つだった。
二人共黒い服を纏っているせいか見分けがつかない。だが雰囲気はだいぶ違うと思う。

「アウル……?アウルじゃないか?」
「は?」

少年が奥に視線を向けるとアウルと目があった。
するとアウルに向かって駆け出す。

「生きてたんだな!あの時生きてたのは俺だけだと思ってた」

アウルに飛び付き喜びながらそう言う少年にアウルはわけがわからず呆然としていた。

「誰……?」
「シンだよ!シン・アスカ!!隣の家の奴忘れるなよ」

少年はシンと名乗りアウルから体を離した。しばらくシンを見つめるとアウルも驚きながらも笑みを浮かべた。

「シンっ!?まじでシン!?」
「まじに決まってるだろ。生きてたなら顔見せろよ」

二人のやりとりをよくわからずにアスランは見ていた。すると肩に手を置かれた感覚がして振り返るとキラとカガリがいた。

「協会の人だって」
「俺達とそんなに年齢は変わらないように見えるが……」

今まで報酬をもらう際に会ってきた協会の連中は自分よりも年齢が上の者だった。
しかし今いる二人は自分と同じぐらいに見える。

「何でも担当が決まってて二人はそれを追って、昨日の事件を聞いて来たみたい」
「昨日の今日だぞ?」
「たまたま近くに来てたんだって」

そんな偶然があるのだろうかと二人に視線を向ける。言われなければわからない。
しかしよく見てみれば二人共左腕に協会の印が記されている腕章をつけていた。


「昨日の事件を聞いて来たって事は担当は」
「吸血鬼よ」

少女が振り返ってアスランが言いかけた言葉を口にした。

「本当にそっくりだな」

ラクスと少女を見比べ言うと少女は微笑んだ。同じ容姿でも雰囲気が違うと表情も違うものに見える。

「本当そっくりね。でも血縁者でもないし知り合いでもないわ」
「そうか……えっと名前は?」
「ミーア・キャンベルよ」

名前に共通点も見られない。それだけで判断するのもどうかと思うが本当に関係はないような気がした。
それよりも昨日はしていなかったラクスの首に巻かれたスカーフがアスランは気になった。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇


「ステラは帰ったのか?」

自宅に帰ると出る前にはいたはずのステラがいなかった。

「さっき僕が戻ってきた時調子が悪そうだったから帰したんだよ」
「そうか」
「少しふらついていただけみたいだから。今カガリが見に行ったし」

あまり体調が悪い時を見掛けないものだから心配になるがカガリが行ったと聞き少し安心した。

「で、何でお前らまで来るんだ?」
「だって泊まる所ないし」
「野宿しろっていうの?」

ちゃっかり付いてきたシンとミーア。どうやらアスラン宅にお世話になる気のようだ。

「同じ犯人を追っているなら協力した方が早いじゃないですか」
「確かにそうなんだが」
「態度がでかいんだよね〜。一応僕らの方が年上なんだから態度改めたら?」

銃を向けられ発砲までされた事は許していないといった風にキラは言った。

「謝ったのにまだ怒ってるんですか」
「根に持つ男はモテないですよ?」
「だから態度が……いい!僕も泊まりこんでこの二人の性格を叩き直す!!」

何かを決意したように握り拳を掲げるキラ。アスランは疲れきったようにため息を吐いた。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇


「一緒に行かれなくてよかったのですか?」

明かりもなく月明りが差し込む薄暗い礼拝堂。
アウルが椅子に座りこんでいるとラクスがその隣に座った。

「僕には……ラクスだけだから」

アウルは俯かせていた顔をラクスに真っ直ぐに向けた。

「ラクス……」

ラクスに手を伸ばすと体に腕を回し強く抱き締めた。
何も言わず自分を抱きしめてくれる腕が心地よくて瞳を閉じた。


★2章 完★

H17.8.21




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