3章 secreting


 


○はじめに○
時代パラレル同様何時代なのかよくわからないパラレルとなっています。
趣味突っ走りな吸血鬼ネタ交えのパラレルです。
CP要素はないに近くアス→ラク、キラカガ、シンミー、若干アウラク、アウステ。
登場キャラはアスラン、ラクス、アウル、ステラ、キラ、カガリ、シン、ミーア、。
場面転換が多く少々読みにくさに拍車をかけております。
以上を了承いただけましたらおすすみください。



「もう朝……?」

アウルはまだ寝たりない体を起こし、横で眠るラクスに自分のコートをかけた。

「さむっ」

さすがに寒くてはだけたシャツのボタンを止めていく。

「本当ぼろいのによく人が来る礼拝堂だよな」

扉が開く音が聞こえ、こちらに近付く足音が聞こえる。
いくつも連なる長椅子で座りこんだままでは誰が来たのかはわからない。
だがアウルには誰が訪れたのかわかっていた。

「昨日話が聞けなかったからな……っ」
「どうしたの?そんな驚いてさ」

訪問者、アスランを見上げながらアウルは笑った。
予想通りの反応に笑わずにはいられない。

「ちょっとここにいてよ」

アウルは立ち上がると扉の方に足を進ませた。

「どこに……行くんだ?」

やっと話したアスランに振り返る。

「食料調達。ラクスをそんな格好で置いていけないし、あんたがいれば平気だろうと思って」

アスランは何も言わない。アウルは扉を開けた。
曇ってはいるが暗い中にずっといたせいか眩しく感じる。

「あ、そうそう。何かやったら殺すから」

警告のように勢いよく扉は閉められた。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇


「あーあ、本当お堅いんだから」
「仕方ないわよ」

文句を言っているシンをくすくすと笑いながらミーアは言った。
5人分の朝食を片付けている。
食器は5人分あるもののそこにはシンとミーアしかいなかった。

「あの二人だって一緒に住んでるんだから一緒の部屋だっていいのに」

昨晩アスラン宅に泊まった。無理やり泊まったのはいいが、キラとカガリまで泊まる事となった。
そんなに部屋もベッドもない、と言われダブルベッドがある部屋をミーアとカガリが使った。

「あたしの方は普通に寝られてよかったわよ」
「俺の方なんてどっちが床で寝るかって事になって……」
「なって?」
「……負けた」

ミーアが聞き返すとシンは怒らず、肩を落とした。
シンとキラはシングルベッドがある部屋を使う事となった。
どちらかが床に寝なければならない。結局ジャンケンで決めたようだ。
うなだれ始めた体を起こし、シンは再び文句を言い始める。

「ミーアと一緒ならシングルベッドでも二人で寝られるのにっ!…ってミーア聞いてる?」

鼻歌を口ずさみながら食器を洗うミーアに返答を求めるが鼻歌のみしか返ってはこず再び肩を落とした。

「……今日協会の連中が来るって」
「早い到着ね」
「それだけ危険分子って事だろ」

シンはドアを見て少し笑むとミーアに視線を戻した。

「アウルが生きてるなんて思わなかった」
「あの事件で生き残ったのはシンだけだものね」

一通り食器を洗い終わり、シンと向かい合うように椅子に座る。

「そう、吸血鬼討伐のきっかけになったあの事件。あまりにも残虐すぎてこちらも強行手段に出るしかなかった。でも……」

再びドアを見る。ミーアもその視線を追うようにドアに視線を移した。

「見つけられなかった吸血鬼がいたのよね。長い髪の女性……」

ミーアのその言葉のあと二人は黙った。
しばらくの沈黙のあと視線を向けていたドアが開く。

「二人して何の話してるの?」

キラはドアノブに手をかけたまま問い掛けた。

「別にただの世間話ですよ」
「何か企んでるでしょ?」

その問い掛けには答えずシンはただ笑みを向けるだけだった。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇


「……寒いな」

アウルが礼拝堂を出ていき、しばらくして出た言葉がそれだった。
アウルが座っていた場所に座りこみ横目で寝ているラクスを見た。
二人分のコートを体にかけ寝息をたてているラクス。

「笑えるな……」

はだけたシャツ。緩んだベルト。すぐ横で体を隠すようにコートをかけているラクス。
一瞬で視界にいれ理解しようとした自分がおかしかった。
そういう関係でもおかしくはない。男と女だ。当たり前な事といえばそうなのかもしれない。
それでも驚きは隠せなかった。

「何か面白い事があったのですか?」
「あっ、いえ、……おはようございます」

突然話しかけられ慌てつい挨拶をしてしまった。
いつの間に目を覚ましたのだろう。しっかりと目を開き寝起きではないように思える。
ラクスはそんなアスランに笑みを浮かべながら挨拶を返した。

「あちらを向いていただいてもよろしいでしょうか?」
「あ、はい」

ラクスがいる方向とは反対の方向に体を向ける。
だが考えるよりも早く体がラクスの方へ振り返っていた。

「アスラン……?」
「あ……」

何も身に纏わない姿。今つけたのか首に黒いスカーフだけ巻かれていた。
胸が高鳴る。嫌なものが混ざったように鳴り続ける。
聞いてはいけない。
そう訴えかけるように鳴り続ける。
そうであったらどうする。
それでも目を逸らして聞かないままではいられなかった。

「貴女は吸血鬼なんですか?」


◇◆◇◆◇◆◇◆◇


「アスランがいるってわかってて“世間話”をしてたんでしょ?」
「あれ、いたんですか?」

白々しく言うシンにキラはため息を吐くと睨むように見つめた。

「どうしてアスランをけしかけたの?」
「けしかけたわけじゃないですよ、確かめてほしかっただけ」

ミーアが答えるとキラはミーアを一瞥し再びシンに視界を戻した。

「俺達が吸血鬼担当のハンターだとは言いましたよね?」
「わざわざ討伐されて、いるはずのない吸血鬼担当になるくらいだ、何か理由が……」

キラの言葉の途中でシンは机を両手で叩き、言葉を遮った。
先ほどまで年齢相応の笑みを見せていたが、その笑みは消えていた。

「吸血鬼討伐のきっかけとなったのは吸血鬼が町を襲ったから。何もしていないのに……あいつらは……!」
「町の人を皆殺しにしたんだったね」

キラの言葉のすぐあとに何かを殴り叩く音が部屋に響いた。
シンは右手で拳を作り壁を思いきり殴っていた。

「シン……」

ミーアがシンの右手を包み宥めるように呼び掛けた。
包まれた手に縋るように額につけた。泣き顔を隠すようにも見える。肩が僅かに震えていた。


◆◇◆◇◆◇◆◇


「やめろぉぉーー!!」
「シンっ!?」

夜なのに明るい町。
火に灯されて焦げた匂いが鼻についた。
家も焼かれ人も焼かれ、穏やかだった空気さえ焼かれて。
何が起こったかはわからない。
ただ逃げなければ。
なのにシンは行ってしまった。
逃げなければいけないのに。
辺りには食い散らかされた亡き骸が転がっていた。
全ての血を吸われ見るに耐えない姿になっている。
襲われた。吸血鬼に。

「シン……逃げなきゃ、駄目なんだ」

亡き骸から発せられているのか、独特な匂いで気持ち悪くなる。

「うっ……ぇ」

逃げなきゃいけないのに。
僕は膝をついて、吐いて……涙を流していた。
まだ幼い僕達は逃げる事さえできない。
目を覚ましたらどうなっているだろう。

「えっ……うわっ」

突然何かにぶつかりアウルは地面に倒れこんだ。
壁や障害物はないのにぶつかった。人にぶつかったとすぐにわかる。

「前見て歩けよー」
「ごめんなさい……」

相手も地面に倒れ座りこんでいる。
自分とさほど年齢は変わらなさそうな少女。
一瞬何も言えずその少女に見入っていた。

「謝るんだったらさ」

アウルは立ち上がり少女に手を差し出す。少女は首を傾げてアウルを見ていた。

「何か奢ってよ」


◇◆◇◆◇◆◇◆◇


「あれ、シンは?」
「部屋」

カガリはアスラン宅を訪れリビングを覗くとキラとミーアがいた。
もう一人いるはずの少年がおらず聞く。

「君は何も話してくれないんだね」

キラはミーアに苦笑混じりの笑みを向けた。ミーアはにっこりと笑う。

「シンが言わないならあたしからは言えないから」

さっぱりわからない会話にカガリはその場に立ち尽くしていた。

「っ!……シンの様子見て来ますね」

ミーアがリビングから去ったのを確認するとキラは口を開いた。

「協会から連絡が来たみたいだね」
「わかるのか?」
「何となく……ね」
「シン……入っても平気?」
「……うん」

ミーアが部屋に入るとシンはこちらに背を向けて寝ていた。

「連絡が来たわ」
「殺したって?」

協会から派遣された人がくるのは連絡が来ていた。
吸血鬼を今度こそ根絶やしにし悲劇がひきおこされないように。

「殺された……って」

シンは寝ていた体を勢いよく起こしミーアを見た。
ミーアは険しい表情を隠せずシンに見せないように俯かせた。

「定時連絡が入ってないだけなんだろ?」
「連絡器具が破壊されたんですって」

協会の者は服に小型携帯器のようなものをつけている。これで居場所もわかる。
基本的に中に着ている服につける事が義務づけられ、定時連絡を怠ってはならない。

「壊れただけかもしれない」
「そうかもしれないわね」

そうは言っても認めざるを得なかった。

「俺、失格かも」
「どうして?」
「……安心してる」

今にも泣きそうな表情を向けたシンをミーアは何も言わず抱き締めた。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇


「一人で住んでんの?」
「うん」

お金をあまり持ち合わせていないという少女は代わりに家で何か作るとアウルを家にあげた。
広い一軒家に少女が一人。

「名前聞いてなかったよね」
「ステラ・ルーシェ」

何かを作りキッチンに立っている少女は名前を告げた。
目眩がした。意味もなく頭がふらふらする。

「僕は……アウル・ニーダ」

自分の名前を告げるとアウルは椅子に座り、テーブルに顔を突っ伏した。

「親とかいないの?」
「死んだの。最近……この町に来てアスランに面倒を見てもらってる」
「アスランと知り合いなの?」

聞き覚えがある名前に顔をあげステラに問い掛けた。

「お父さんにお世話になった……って、私の面倒を見てくれてる人」

よくある事だ。
師弟関係か何かで置いていかれた親族の面倒を見る。
お人好しそうな感じがしたし別に驚きはしない。
でもステラに感じる引っ掛かりが気になって仕方なかった。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇


「どこか行くの?」

リビングのドアが開き、かけられているコートを手にしたシンにキラは声をかけた。

「少し散歩をしてこようかと思いまして」

先ほどまでの事がなかったかのように笑みを浮かべドアを閉めた。

「散歩にしては随分と危険だよね」
「キラ?」

独り言のように呟いたキラにカガリは呼びかけた。
キラは無表情だった顔に笑みを浮かべた。

「シン、寒がりねー」
「違うよっ」

アスラン宅を出るとコートを羽織っていないミーアがいた。
黒いブラウスに銀のネックレス。黒いフリルのミニスカートにニーソックスと黒ずくめだ。

「このコートを着ないと殺せないから」
「ケジメってやつ?」
「違う。ただのエゴだ」

コートに袖を通し羽織ると歩き出した。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇


「貴女は吸血鬼なんですか?」

そう言った瞬間息が苦しくなった。
微動だに動かず微笑むラクス。
何もかも見透かされているよう。

「なぜそう思われましたの?」

アスランの目は気にせずに立ち上がり下着や服を着る。
アスランはさすがに視線を逸らした。

「“クライン”という名前は……純血の吸血鬼の一族の名だと」
「博識なのですね」

ラクスはコートを羽織り、もう一つのアウルのコートは胸に抱き座った。

「あの事件に関わったんですか?」
「人は一面しか見ようとはしません。自分達と違うものを見つけると悪いと決めつけ続ける」

一瞬ラクスから微笑みが消え、背筋にひんやりとしたものを感じた。いや、それよりももっと中からくるもの。
すぐに微笑みが戻るがその感覚は消えなかった。

「昔話はお好きですか?」

その問い掛けにアスランは考える間もなく頷いていた。



★3章 完★

H17.8.23




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