4章 memory
○はじめに○
時代パラレル同様何時代なのかよくわからないパラレルとなっています。
趣味突っ走りな吸血鬼ネタ交えのパラレルです。
CP要素はないに近く若干アス→ラク。
登場キャラはアスラン、ラクス、アウル、ステラ、キラ、カガリ、シン、ミーア。
場面転換が多く少々読みにくさに拍車をかけております。
過去話が話の大半を占め、話のネタバレ編となっているのでこの章から読む事はお勧め致しません。…大したネタはありませんが。
以上を了承いただけましたら次ページへおすすみください。
不死の吸血鬼といわれている一族がいる。
純血種。吸血鬼の中でも稀な存在。
高貴な者。
だが稀にとんでもない事をやらかす輩がいた。
純血種は人間の血を吸わなくても生きていける。
それなのに人間の血を吸ってしまった。
生き残った人間は吸血鬼となる。
純血種ではない吸血鬼は血を欲する。欲望のままに。
そして増え続けた。
純血種は身を潜め、そうでない種は血を求め続けていた。
「アウルー!」
町中で見慣れた人影を見つけシンは手を振りながら呼び掛けた。
「何?」
アウルに駆け寄り息を整える。
「今日さっ、隣町に買い物頼まれちゃったんだ」
「ふーん」
興味のなさそうな返事を返されシンはショックを受けたと言わんばかりに少し涙目になった。
「うっそ。頼まれたなら仕方ないじゃん」
「ごめん」
遊ぶ約束をしていたのに急に断る事になってしまい申し訳なくなる。
「明日があるじゃん。明日も駄目だったら何か奢ってもらうからな」
「わかった!明日いつもの時間にあの場所で!」
アウルはシンに軽く手を振ると町外れの方へと歩いて行った。
「はぁ…行かなきゃ」
そしてシンはアウルが歩いて行った方とは反対へと歩き出した。
アウルは最近越してきた。初めは取っ付きにくそうに感じ嫌煙していたが、ある事をきっかけに仲良くなった。
町外れにある広い野原。
普段人があまり訪れず寂れた場所といえば寂れた場所だ。
でも遊ぶ場所がない子供にとってそこは楽園のような場所だった。
「へへっ」
何だか笑いたくなって思い出し笑いをすると駆け出した。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「ラクス様、不穏な動きがあるようです」
古い廃屋の一室に青年が入ってきた。
ラクスと呼ばれた少女は窓から外を眺めている。
「やられたらやり返す……ですか」
「そのようです」
「あの事件では人間も被害にあったのでしょう?」
ラクスは青年に振り返った。青年は声を出さずに頷く。
数か月前から若い吸血鬼が立て続けに殺された。
そして数日前にそれが人間の仕業だとわかった。
数人で犯し、殺した。
その人間達は吸血鬼によって殺された。
「どう……しますか?」
「止めなければいけません。今日にでも近くの町を襲うでしょう」
黒い衣服に黒いコートを着込みラクスは部屋を出た。
時刻はもうすぐで夜を告げる。
闇に隠れるように身を外へと出した。
クライン家は純血の吸血鬼と言われている。
私が物心ついた時にはそう言われていました。
純血は不死。
でも私には父も母も、親族もいない。
いつの間にか私の世話をするようになった青年が一人だけ。
でも信じてはいなかった。
生きるとは独りでいる事だと思っていたから。
でもどこかで信じていたのかもしれない。
裏切られた時気付いたのです。
独りでは生きていけないのだと。
あの少年の瞳が、羨ましいと感じた。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「ステラー」
アウルはシンと約束していた場所、広い野原に来るといるはずの少女の名を呼んだ。
「アウル」
ステラと呼ばれた少女は草の上に座りこんでいた。
「シン来れないって。明日会わせるからさ」
「うん」
少し前にここで知り合った少女。
自分達しか知らない場所にいた少女が物珍しくてアウルは話かけていた。
なかなかシンと会わす機会がなく、今日こそはと思っていたが今日も駄目だった。
「何作ってんの?」
「冠……」
自分と年は変わらないように思えるが言葉が拙い気がする。
自分と同じく最近越してきたらしく友達もいない。
病気がちで転々としてきたらしいがもうその病気も治り、この町に居続けるとこの間言っていた。
「冠にしてはおっきくない?」
ステラの隣に座り、白摘草で編まれたわっかを見ると頭に乗せるには少々大きい気がした。
「そう……かな?」
「貸してみ」
出来上がったばかりのわっかをステラの手から取ると、ステラの頭に乗せた。
「あははっ、やっぱでかいじゃん」
「ん〜?」
わっかはステラの頭をすり抜け、首に落ちた。
ステラはよくわかっていないようで首を傾げる。
そんな他愛ない事や話をして過ごした。何でもない事なのに楽しくて仕方がなかった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「すっかり暗くなっちゃったな」
隣町での用事を済ませると辺りは暗くなっていた。
「何か騒がしいな」
広場の方が騒がしくなり人だかりができていた。
特に興味もないがシンはその人だかりに近寄った。
「何かあったんですか?」
「隣町が吸血鬼の大群に襲われて火の海になったらしい。こっちにも来なければいいが……」
歩いていた男性に聞くとそんな返答が返ってきた。
状況が飲み込めずその場に立ち尽くす。
「嘘だっ!」
自分の町が襲われたと気がつくとシンは走り出した。
俺が町に辿りつくと時刻はすっかり夜中だった。
それでも町は明るい。
何もかも焼きつくす火が町を照らしていた。
「あ……どうしてっ」
町に足を踏み入れると火の熱気が体を熱くさせた。
それだけじゃない。怒りが熱くさせていた。
見回すと死体らしきものが転がっていた。
焼けて何だかはわからない。形だけがかろうじて人だった。
「家は……!?」
俺は俺の家を目指す。辺りに生々しい死体が転がっているのがわかるが今は回りを見ている余裕がなかった。
「シン!!」
聞き覚えのある声がして振り返るとそこにはアウルがいた。
この町で無傷な人間はもういないと思っていた。
「アウル!どうしてこんな事になってるんだ?」
「わかんない……気がついたら町が燃えてて」
困惑した顔で俺を見るアウル。どうやら俺もアウルも町にいなかったため助かったらしい。
「逃げなきゃ、見つかったら」
「逃げる……?」
ここにいれば見つかってしまう恐れがある。まだこの町に襲った奴等がいるかもしれない。
わかっている事なのにわかっていないかのように聞き返してしまう。
「シン?」
自分が行こうとしていた方向を振り返ると燃えていた。自分の家が。
「やめろぉぉーー!!」
「シンっ!?」
俺は叫びながら走り出していた。後ろから呼ばれるがその声さえ聞こえないように。
「はっ…」
家の前まで来ると誰かが倒れていた。
「父さん、母さん……マユっ」
家族を見つけた。倒れている中、一人だけ立っている人影がある事に気がつく。
少女だ。俺と背格好は変わらないように思える。
妹ではない。だって倒れているのは三人。
燃えている家の火で照らされはっきりと見える。もう生きていないと。
こちらに背を向けている少女がゆっくりと振り返る。
俺は動けずに佇んでいた。
怖い……?何が……?この少女が?
「むっ……!」
少女が振り返る直前に口を塞がれ、横から引き込まれた。
「気付かれたら貴方も殺されてしまいますわ」
「む……んん!」
殺されてしまうんではないかと俺は手足をばたつかせ抵抗した。俺を掴む女からする血の匂いが鼻につき恐怖心を煽る。
俺より一回り大きいため力では敵わない。
「ごめんなさい」
「んっ……」
口を塞がれたまま首に激しい痛みを感じると俺は気を失った。
幼い僕らはただ見ているしかできない。
ただ殺されるだけ。
逃げる事さえできない。
置いていきたくない。思い出を。
ただそれだけなのに。ただ…。
目を覚ましたらどうなっているだろう。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆
私が来ると町は火の海でした。
「もう遅かったなんて……」
回りには食い散らかされた死体だけ。
だけのはずなのに人の気配がした。
「お姉ちゃん……誰?」
黄色いセミロングの髪の少女。年は私より幼い。
一見ただの少女。
「貴女も……吸血鬼なのですね」
虚ろな目で怖いほどな笑みをうっすらと浮かべる口は…赤かった。
赤い口紅を塗ったように。
服にも血痕がつき、指先もわずかに赤いものが付着している。
「ふふっ」
「待ってっ!」
少女は笑うと走り去った。もう生きている人間はいないように思えるがここで食い止めなければならない。あの少女のためにも。
虚ろな目で殺戮を続けないように。
「ラクス様」
「貴方は……」
いつの間に私の前に立ちはだかっていたのか、私の回りにいつもいる青年がいた。
「貴女はもう眠られるべきです」
「何を言って……くっ」
腕に痛みが走った。銃で撃たれたようだ。
しかし青年は動いていない。
気がつけば幾重もの視線や気配がある事に気がつく。
「我らの時代なのですよ、ラクス様」
「人間を殺して……ご自分の世界でもお創りになるおつもりですか?」
私の問いに答えるまでもないと言った風に青年は笑んだ。
その瞬間何人もの吸血鬼が姿を現し私に向かってきた。
ここで朽ち果てるのもいいかもしれない。
そう思ったのに、私は自分の手を血に染めていた。
裏切られたのが悲しいわけじゃない
信じていたものなんてないんだから
でもどうしようもない怒りが
私の中にあるのを感じた
あの少女を見つけた。でもまだ生きていた少年がいた。
この少年だけでも助けなければ。
「ごめんなさい」
そう謝って少年の意識を失わせた。
町外れの野原まで来るとその少年を横たえた。
もう襲われる事はないだろう。自分が全て殺したのだから。
「あの子を……」
少女を探しに痛む体を気にしないように私は町に再び戻った。
そして瀕死状態の少年を見つけた。さっきの少年と同じ年ぐらいだろうか。
壁にもたれかかり必死に息をしようとしている。
俯いていた顔がゆっくりと上がった。青白い顔。肩には吸血鬼からつけられた傷がある。
「生きたいですか?」
息さえまともにできないというのに、その瞳は輝いてみえた。
涙が火の光でそう見せただけかもしれない。
“生きたい”
そう言っているよう。私は羨ましく感じた。
こんなにも強く願う事ができる幼い少年が羨ましくて仕方がなかった。
「うっ……あ」
私は少年の肩にある傷に唇に触れさせた。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆
何が起こったのかわからなかった。
シンが走って行ってしまったあと、僕は気を失った。
そして今は息ができない。
記憶が混乱しているだけなのか、ただその記憶は始めからないものなのか。
今は考える事さえできない。
息もできない。
呻きなような声と涙が流れ出るだけ。
もうこの世界を感じれない。僕の中に何も入ってはこない。
上を見上げると少女がいた。長い髪を風に靡かせて。
あぁまだ見ていられる。まだこの世界を感じられる。
嬉しさと共に絶望が襲って涙が止まらない。
終わる。終わるんだ。この思考も止まるんだ。
「生きたいですか?」
ずっと自分の中の音が響いていたのにその言葉が聞こえた。
答えられない。
だから僕は少女を見つめ続けた。
少女は僕に近付き屈んだ。
「うっ……あ」
僕の肩に柔らかいものが触れたと思うと鋭い何かに刺されたような感覚がした。
そして流れこむような感覚。
熱い。おかしくなりそうだ。
少女の背中にしがみつき爪をたてた。
僕は息を吸い込むと意識を手放した。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「誰が悪くて悪くない……それは誰にもわからないのです。そんな事はありもしないのかもしれません」
ラクスから語られた話は嘘のように感じた。でも真実。
アスランは手で目を隠すように宛てた。
「悲しい……ですね」
「泣く貴方は優しい方ですわ」
そう言われてアスランは自分が泣いているのだと気がついた。
どうして泣いたのかはわからない。
語るラクスが痛々しく感じたからかもしれない。
決して語りたい事ではないのに自分に聞かせたラクスが痛々しくて、愛しく感じた。
★4章 完★
H17.8.24
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