番外編×章 hesitation
○はじめに○
この話は吸血鬼パラレル幻想祈叶の番外編となっています。
アウルとラクスばかりの話でアウラク要素有りです。
アウラク編2となっていますので1から続いています。
裏場面があるため苦手なかたはご注意ください。
場面転換が多く読みにくく、展開も話にも無理やり感があります。
幻想祈叶のネタバレ要素があるためこの章からの閲覧はお勧めできません。
以上を了承していただけましたらお進み下さい。
惹かれる
ナニニ?
引いてる
ナニヲ?
読んでる
ドウシテ?
呼んでる
ドウシテ?
全て分かりきった
運命を
まだ
……まだと
迷っていた
迷路の中
「アウル?」
人通りが少ない小道を歩いていると、隣を歩いていたアウルが離れた。
「どうかしたのですか?」
草むらに駆け込み屈んでいるアウルにラクスは近付いていく。
「まだ来んな!」
制止の言葉でその場に立ち止まる。どうしたのだろうと不安になるがアウルが来るなというのなら行けない。
でも“まだ”という事はいつかは行ってもいいという事なのだろう。
「いつか……」
「ラクス」
呟きながら空を見上げるとすぐ近くから呼び掛けられ、視線を向けた。
「はいっ」
「これは……?」
何かを頭に乗せられた。アウルは満足そうな表情をしていた。
「花冠、これで作ったんだ」
アウルの手には摘んだ白詰草が握られていた。これを作っていたから近付くなと言ったのかと思うとラクスは微笑んだ。
「器用ですわね」
「何でか作り方知ってたんだよねー僕これで仕事できるかも」
「花冠を作る仕事なんて素敵ですわね」
「ここはそんな仕事ないって突っ込む所だろ」
アウルの言葉にラクスはあ、と口を開けて二人はしばし見つめあった。
そして吹き出して笑った。
出会ってからこうして旅を始めて四年が経っていた。
アウルも出会った頃よりも身長が伸び、顔つきも変わった気がした。
ラクスは何も変わらない。
それを寂しく思うもアウルの成長を見れるのが嬉しい。
特に何をするわけでもないが他愛ない事が楽しく感じた。それはきっとこの少年といるから。
ずっと笑っていてほしい少年。
でもこの四年疑問に思っている事がある。それを聞けずに次の町へと着いた。
「この町にもラクスの屋敷があんの?」
「はい。しばらく来ていないので埃っぽいかもしれませんが」
段々と人通りが少なくなりしばらく歩いていくと大きな屋敷に行き着いた。周りの木は覆い茂り、天気もよくないため何かが出そうな雰囲気をかもし出していた。
「アウル」
屋敷を見上げていると屋敷の扉を開けたラクスに呼び掛けられ、急いで駆け寄った。
「気分悪いよねー」
「大丈夫ですか?やはり埃っぽいですわね」
そういう意味で言ったわけじゃないんだけどと小声で言うがラクスには聞こえなかったようだ。
町に行けば必ず怯え罵るようなたくさんの視線がラクスに集まった。
腹を立てたアウルが一度どなろうとしたが止められた。いいのです、と。
俯いて歩いて何がいいのか。いいことなんてない。
段々と怒りを思い出してくる。でもこの少女は再び止めるのだろうと少し先を歩くラクスの背中を見つめた。
「あっ」
「どうしたのですか?」
大きな声が聞こえ振り返ると、立ち止まったアウルが何か企んでいるかのような笑みを浮かべた。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「服……ですか?」
「ちょっとした気分転換にさ、真っ白にしようよ」
町へと戻るとアウルはラクスの腕を引き、服屋の前へと来た。
黒いワンピースに比較的暖かい地方のため黒いカーディガン。それがラクスの服装だった。出会ってから何も変わらない。
アウルは気分でその時着る服を着るため統一はされていない。
「何故白を?」
ラクスは決していつもの柔らかい口調ではなく問い掛けに拒否を混ぜたような言い方に感じた。
それでもアウルは引かない。着飾らない笑顔を向けながら言った。
「僕が見たいから」
「明日っからそれ着てよ」
「いつか着ますわ」
ラクスが持つ紙袋を指さしながら言うとラクスは苦笑混じりに答えた。
「えー、着ないともったいな……っ!」
「アウル……?アウル!?」
並んで歩いていたはずのアウルが地面に倒れこむ勢いで屈んだ。
苦しいのか肩を上下させ息を乱している。乱れた息が聞こえないようにか手で口を押さえているがそれも無意味だった。
ラクスも屈みアウルの肩に触れる。一瞬震えるがラクスに顔を向け弱い笑みを浮かべながら大丈夫と言った。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
ずっと引っ掛かっていた事がありました。
彼を吸血鬼にしたのは私。
あのまま朽ち果てればこんな苦しみを味あわせる事なんてなかった。
でも私は。
彼はあの時以来正気を保っている。血を吸う事なく。
もしかしたら私と一緒になってしまったのではと不安になりながらも嬉しいと思ってしまいました。
いつか来るその時が来る事がないのだと。
そんなはずはないのに。
もう楽になるべきなのかもしれない。彼には笑顔でいてほしい。苦しむ顔なんて見たくない。
それでも私は。
聞けないでいた。
血が欲しいのですか、と。
でも貴方が苦しいというなら私は……。
「大丈夫……僕は大丈夫。……ラクス?」
屋敷の一室のベッドの中にくるまっていると部屋の扉が開く音がした。
「わっ!何!?」
体を起こそうとしたが何かに押し倒され仰向けになっていた。
部屋が暗い。でも自分を押し倒したのがラクスだとすぐにわかった。
「どうしたの?」
聞くとラクスは何も言わずアウルに覆いかぶさる。首筋が口許に近くてまるで誘われてるかのよう。
「あの時から欲する自身を抑えてきたのですか?」
「……何の事?意味がわかんない」
「血が……欲しいのでしょう?」
ラクスの言葉にアウルは目を見開くが何も言わなかった。言葉が思い浮かばない。
「何故白を選ばれたのですか」
「え?」
暗闇に慣れてきた目がラクスの服を映す。昼間に買った白い服。白いブラウスに白いスカート。
始めは本当に気分転換のつもりで白と言った。正反対の色。
「僕の世界が白いから……ラクスが僕の全てだから、だからっ」
泣くつもりはなかったのにアウルは涙を流していた。
「ないんだ、何も。僕の世界には僕がない。ラクスの中にも……僕はっ」
前に進もうと思った。
前しか見なければいい。
後ろなんていらない。振り向く事なんてしない。
でもそれは何も過ぎていない。
僕は何も失わないし何も得られない。
真っ白。
振り向くと霧が白く立ち込めていた。
見えない。
何もない。
忘れたくない記憶が薄れていく。
前に進めばいいんだ。
だけど……
本当はそれは進んでさえいない。
何も変わらない。
僕は何処?
何処に行ったの?
「貴方の中に私は流れてますわ。それは確かな真実で貴方を苦しめて」
「ちが……う」
弱々しくラクスの言葉を遮ると両手でラクスにしがみついた。
「ごめん……違う。僕はラクスと一緒にいられればいいんだ。だからラクスが苦しむ顔を見たくなかった」
アウルはそう言うとラクスの髪に触れた。首筋が自分に見えるように髪を避ける。
「私が選んだ道です。苦しくなんてありませんわ」
「僕も苦しくない。ラクスといれば幸せだから」
二度目。
アウルはラクスの首筋に歯を立てた。以前のような罪悪感はない。どちらにも罪悪感などなかった。
「アウル」
アウルが自分から唇を離すと体を起こし跨がったまま、アウルの頬に触れた。
「うん……んっ」
呼ばれた事を嬉しそうに返すと唇に暖かいものが触れた。
「ん……ラクス」
「不快に思われましたら私を撥ね除けて下さい」
アウルのシャツのボタンをはずしながら言うラクスにアウルは首を横に振った。
「嫌なわけないじゃん」
笑うとラクスのブラウスのボタンをはずし始めた。
ラクスはシャツのボタンを全てはずすと胸に触れた。
「んっ」
反応してくれた事が嬉しくて微笑み、手を下部へと下げていく。
「なっ、何でそんなとこ」
「止めたら私の中に入れませんわ、アウル」
どこに触れようとしてるのかわかったのかアウルはラクスの手首を掴んだ。
しかしラクスの中という言葉がよくわからなかったのか掴んだ手の力が弱くなった。
「あっ……やめ」
ズボンのファスナーを下げアウル自身を取り出した。年相応で小さく感じる。
それを手で包み上下に動かす。初めての快感に身体が強張る。
「くっ……ぁ」
何かはじけた感覚がしたかと思うと強張った身体から力が抜け、乱れた息を整えようとする。
「アウル、まだですわ」
「え?何……ぅあ、あっ」
ラクスはアウル自身から放たれた液を指で拭い、自分の秘部に潤滑剤になるよう塗り込めた。
そこにアウル自身を挿入した。
「ぁ…アウル、見て…ください」
長く白いスカートを捲りあげた。アウルは言われるがまま視線を向けた。
「僕、ラクスの中にいんの……?」
繋がったそこは決して綺麗なものとは言えない。でもこの不思議な感覚がラクスの中にいる事を感じさせ視覚でそれを確認できて嬉しかった。
「はっ……はぁ、何か変」
「私も……んっ」
ラクスが腰を上下に動かすと不思議な感覚が増す。またはじけるような感覚が迫ってくるのがわかる。
「ラクスっ……」
「ぁ……アウルが私の中に」
「うん、流れてる」
アウルがラクスの頬に触れるとラクスはアウルに口づけた。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「帰ろ?」
「……あの町に、ですか?」
翌朝、朝食の仕度をしているとアウルが突然言った。
正直反対したいがアウルが帰りたいと強く願うならそれを無下にはできない。
「違う、違う。思い出たくさん作ってさ。帰って、話して、また旅すんの」
月日は流れ、4年経っていた。
あれからアウルは血を欲した。純血の吸血鬼でないかぎり欲し続ける。
そしてラクスの血を飲んだ。
お互いがお互いを必要とし一緒にいるための儀式のようなものにさえ感じる。
人を襲う事はなかった。旅をしている中、吸血鬼討伐が実行されほとんどの吸血鬼が死んだ。
二人は生き続けていた。
アウルの記憶は吸血鬼になる前のものはほとんど霧がかかったような状態になり、それを悲しむも今があると笑った。
何かきっかけがあれば思い出す事はわかっていたためもしかしたら旅の中で思い出すかもしれない。
「別にお礼言われるような事してないし」
「それでもありがとうございます」
ラクスは吸血鬼の中でも有名だった。そのためか町を歩けば痛いほどの視線が向けられる。
最近は怒鳴らずに人を遠ざける方法を身につけた。本当は怒鳴り散らしたいがそれでは逆効果だ。
「じゃあ次の町行こっか?」
少し照れながらアウルはラクスに手を差し出した。ラクスははいと返事をしてその手を取る。
町を出て、次の町へ行くために人の通りが少ない道を選び歩いていく。視線を向けられるのは町の中だけで十分だ。
「ラクスってさ、いつから年とってないの?」
気になっていた事だが聞けずにいた事。少しずつ踏み出していこうと決めた。だから聞いた。
「何年前なのかはわかりませんわ……生まれた年さえ忘れてしまいました」
苦笑しながら答えるラクスにアウルは満面な笑みを見せた。
「僕もいつの間にかそうなってないかなー」
前を向きながら言われた言葉。強く握られた手。
「そう……ですわね」
ずっと一緒にと言われたようでラクスは少し俯き涙ぐんだ。
「次はこんな寂れた街ー?」
「素敵な街ですわ」
街に入る手前。アウルは不満そうにぼやいた。活気がなさすぎる。人が少ないのはいいが。
そんなアウルとは裏腹にラクスは楽しそうにほほ笑んだ。
寒い地方に入ったため黒いロングコートを着込んでいる。しかしラクスは腕を通さず、羽織っているだけだった。
「来た事あんの?」
アウルは聞くがラクスは微笑みを向けるだけで何も言わない。
「いっつもそーだよなー……うわ」
それ以上聞く気がないように言うと冷たい風が吹き抜けた。
「あらあら」
「あらあらじゃないだろー。だからちゃんと着とけって言ったんだよ」
風に吹き飛ばされたラクスの黒いコート。
ラクスはさほど慌てた様子もなく飛ばされた方を見上げていた。
「取りに行ってくるから〜……あそこの建物ん中で待っててよ」
開いてそうな建物を見つけ指をさす。ラクスが頷くとアウルはコートが飛ばされた方へと走って行った。
「どこまで飛ばされたんだろ……」
飛ばされた方向に歩いてきてはいるものの見当たらない。
「あっ、あった」
地面に落ちているコートを発見すると駆け寄り拾いあげた。
「……何だ?」
話し声が曲がり角の先から聞こえ、気になり壁に身を隠しながら様子を見た。
「吸血鬼だろっ」
「何言ってるんだ?」
「黙れ!」
黄の髪の少女が黒ずくめの男二人に銃を向けられていた。
討伐によりいなくなったはずの吸血鬼を何故探してる?
外見だけでわかるなんてどういう事だ?
普通の少女じゃないか。
「う……」
いくつもの疑問が頭の中を巡り目眩がした。
「まず……い」
血を欲する感覚だとわかる。目を瞑り唾を思いきりのみこむとラクスがいる礼拝堂へ走り出した。
知らない
知らない
邪魔しないで
まだ迷ってたいんだ
この白の世界で
まだ側にいたいんだ
だから
どうか
祈るのは僕
叶えるのは僕
いつか
淡い色に染まる
その時まで
どうか……
「ラクス!」
礼拝堂の扉を勢いよく開けると見知らぬ少年がいた。
「アウル、見つかりましたか?」
少年を睨むように見るが、何も言わず手にしていた物をラクスへと渡した。
「飛ばされんなよなー。中は白で目立つんだから」
「気をつけますわ」
アウルは怒った風に言った。だが怒っているわけではない。
少年が何故ラクスの前にいるのか。その苛立ちが口調にでているだけだった。
「それでは私達は行きます」
「あ……はい」
受け取った黒いコートを羽織りラクスは扉へと向かった。
後ろをつくようにアウルも歩き出す。
「貴方のお名前をお聞きしてもいいでしょうか?」
「ラクス、何言って……」
ラクスが少年に予想外な言葉を言いアウルは驚くが、ラクスの手で制され口を噤んだ。
少年に微笑むラクス。ラクスの行動を制限するつもりはない。
でもこんな事は初めてで複雑な気持ちになった。
「今日はどこで一晩明かしましょうか?」
礼拝堂を出て無言で歩いているとラクスがそんな事を言い出した。
「えっ、この町には屋敷ないの?」
「以前来た時になくなって……どうしてなくなったのでしょう?」
「僕に聞かれても……」
考えこむラクスにアウルはため息をついて笑った。
「さっきの礼拝堂でいいんじゃない?」
「そうですわね」
二人は歩いてきた道を引き返した。
いつもと変わらぬラクスに安心するが胸騒ぎがした。
出口が近付いてる
「アウルっ………」
泣いてる
誰が泣いてる?
幸せだから
……だから泣かないで
始めから
わかってたんだ
君も僕も
だから
謝らない
僕達は
悪い事なんてしてない
ただ幸せを祈って
それを叶えただけ
だから……
あれ?
何だっけ
忘れちゃったよ
まだ迷っていられるからかな
これが
何なのかわからない
恋?
愛?
わかんないよ
知らないから
ただ一緒にいれたら
シアワセ
かえろうよ
思い出たくさん持って
約束
シアワセの約束
「アウル、大丈夫ですわ……」
「……うん」
君を抱けて
シアワセ
H17.9.12
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