…そして君に花束を
「だから……」
わなわなと右手拳をふるわせながらキラはアスランに怒鳴った。
「何かある度に邪魔しにこないでよっ!」
「落ち着け、キラ」
隣にいるカガリがキラをなだめる。
毎度おなじみのキラ宅。例のごとくアスランはキラ宅に押し掛けていた。
「今日はコサージュを作ってたのか」
テーブルの上におかれている花や針金を見てアスランは平然と言った。
「そうだよ!お互いにコサージュを作ってプレゼントしようと思ってさ」
キラは開き直って言うがアスランはそんなキラの話は聞かず作りかけのコサージュを見つめた。
「アスラン?」
キラは嫌な予感がしてアスランに呼びかける。
するとアスランは素早く材料を懐に忍ばせ立ち上がった。
「「こらこらっ」」
二人に行動を突っ込まれ一時停止するがそのまま駆け出すアスラン。
「「あっ逃げた」」
二人は急いでアスランを追うが残像だけ残しアスラン本体は走り去っていた。
「……ねぇカガリ」
「なんだ」
アスランの行動に慣れたのかあまり突っ込みがない。
「アスラン……作り方知ってるのかな?」
「さあ?」
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「困った……」
クライン邸の目の前まで走ってきたアスラン。しかし重大なことに気づき呼び鈴を押すことができずにいた。
「材料だけ持ってきてどうしろと言うんだ」
今日はホワイトデー。
いつものごとく今日までそれに気づかなかったアスラン。
そしてキラに相談しにいったはいいが材料だけ奪いここまできてしまったというわけだ。
バレンタインデーの時は自分も渡したがラクスからも貰えた。つまり返さなきゃいけないわけである。
「……どうしよう」
「何か困ったことでもあったのですか?」
「うわっ」
困ったように呟くと背後から心配そうに訪ねてくる声が返ってきた。
驚きの声をあげ後ろを振り向くと……。
「……こんにちは、ラクス」
「こんにちは、アスラン」
誰がいるかはわかっていたためあいさつをしながら振り返った。
そこには予想通りの人がいてアスランの笑顔はひきつった。
「何か困ったことがあったのですか?」
いつものようにお茶をだしながらラクスは聞いた。
“困った”と明らかに言ってしまった手前今更“何でもない”と言えばおかしく思われるだろう。なにより何か隠してると思われるのが嫌だった。
「最近……」
俯きながら小さな声で話し出したアスランにラクスは耳を傾けた。
「最近眠れないんです」
はっきりきっぱりと言ったアスラン。しかしそのあとに待つものは沈黙。
さすがにいきなりすぎたか……そもそも眠れなくて困ってそれを言ってラクスにどうしろというんだ
などと自分の言動にツッコミをいれていた。
「アスラン!」
「へっ?」
アスランの手を両手で包みなぜかうるうる瞳のラクス。
「眠れないなんて……それはさぞ辛かったでしょうね」
「あ、あの……」
眠れないアスランを想像したのか切なげな顔をしてアスランをみる。
「でももう大丈夫ですわ!今日から一緒に寝ましょう」
「えぇ!?」
嬉しいのか驚いてるのかよくわからないアスランのリアクション。
「私がいては余計眠れませんか?」
そりゃあもう眠れたら男じゃありませんと言いそうになるが慌てて口をつむぐ。
「では匂いなんていかがですか?ちょうど今日アスランにロウソクを渡そうと思ってたんです」
ラクスは包みをアスランへと差し出す。
「……もしかしなくても手作りですか?」
「開けていないのによくわかりましたわね」
アスランの発言に驚くラクス。
そりゃあホワイトデーにプレゼントとくればラクスのことだから手作りのものをくれるに決まっている、そう思った。
「俺……」
アスランが何か言おうとした瞬間懐に隠していたものが一気に落ちた。
「あらあらまあまあ」
落ちたものを拾おうとするラクス。
「ラクスっ!」
アスランの大きな声に呼ばれ屈みながらアスランを見上げた。
「俺、実は今日」
「そういえば今日はホワイトデーでしたわね」
「えっ?」
アスランの声にかぶりながらラクスはわざとらしく言った。
「今突然思い出しましたわ」
「ラクス……」
「まぁこんなところにお花や針金が落ちてますわ」
わざとらしい演技は続きアスランが落としたものを拾いだした。
「……コサージュを一緒に作りませんか?」
これはラクスが自分のために作ってくれた流れだとわかった。なかなか言い出せない自分に対して強要するわけではなく言う流れ。
「はい」
「……」
「かすみそうは小さなお花ですからこうして……」
機械には詳しくても植物に対してはまったくわからないアスランは自分が言い出したコサージュ作りに苦戦していた。
そしててこずっているとラクスが手本を見せてくれる。アスランのを手伝うわけではなく見せるだけだった。
「で、でき、たぁ?」
喜びの声をあげようとしていざ自分の作ったものを見るとすでにできあがっているラクスのものとは明らかに違いひどいものだった。
そんなラクスは疲れていたのか机に突っ伏して寝ている。
「こんなのあげられないな……」
「いただけませんの?」
「わっ!?」
今日は驚かされぱなしだとアスランは思うがそれよりも自分が作ったものを隠さねばと後ろ手に隠そうとした。
「いただけませんの?」
ラクスはもう一度聞く。
「……こんなのでよければ」
アスランは苦笑しながらできあがったばかりのものをラクスへと手渡す。
「嬉しいですわ。とても綺麗で」
お世辞にも綺麗とは言えないコサージュを左胸につけラクスはアスランに笑いかけた。
「きれいです」
不思議とラクスがつけるとコサージュも綺麗に見えた。
それは幻覚なのか。はたまたアスランが作ったものをラクスがつけたからといいことかもしれない。
「私のも貰っていただけますか?」
「もちろん」
ラクスが作ったコサージュをつけアスランも笑った。
「先ほどのキャンドルもいただきます」
アスランの言葉にラクスは嬉しそうに笑い抱きついた。
アスランは抱きついてきたラクスの耳元へそっと囁いた。
「二人の夜にぴったりな匂いだと思いますから」
−人間すぐに変われるものじゃない
元から記念日を忘れやすいとか
女性の扱いがうまくないとか
恋愛に免疫がないとか
そんなのすぐに変えられるものじゃない
だけど君からの愛の嵐で何かがほんの少し変わった気がする
穏やかな風が激しく何かを奮い立たせる風に
いつしか嵐は澄んだ空となる
いつ嵐になるかはわからないけど
それは嫌なことじゃない
君からの愛の嵐に
吹きすさぶ花びらを
舞わせる花びらには花束を
微笑む君には愛を
俺の愛で咲いて
咲き誇れる花になり風となって…
君から愛の嵐
…そして君に花束を−
H16.3.14執筆物
H17.3.6修正
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