時には悲しみにもよりそって


 


ふと花屋の前で立ち止まっていた。
数年前の誕生日にラクスから鉢植えが届いたのを思い出したからかもしれない。
ただ紫色の蕾をつけた鉢植えが届いただけで、メッセージカードがないから違和感を感じたのを覚えてる。
結局花が咲く姿は見れずに枯れてしまったが。

「アスラン?」
「えっ?」

いつの間にかあの鉢植えと同じものを探していた事に気がついたのは、その声に呼ばれてからだった。

「ラクス?どうしてここに……」
「待ち合わせ場所からアスランを見掛けたものですから」
「え、あっ!」

慌てて腕時計を確認すると針は約束した時間から5分過ぎてることを示していた。

「すみません」

待ち合わせ場所から見える場所だったからよかったが、もしそうでなかったらラクスを長い時間待たせてしまう事になってしまったかもしれない。

「大丈夫ですわ。それに……」

言葉を待つとラクスは横にある花屋に視線を移した。

「何か気になる事があったから立ち止まっていたのでしょう?」

前にもラクスにあの時の鉢植えが何の花だったのかを聞いた。
でも決して花の名前を教えてくれることはなかった。

「“ラクスであり俺である”と言われた事が気になりまして」
「そのままの意味ですわ」 
ラクスはくるりと俺に背を向けてゆっくりと歩き出した。俺はそれに続く。


花には花言葉があるというのは知っている。
そういったものを使って男性が女性にさりげない好意を示すらしく、俺もラクスに花を贈った事がある。
でもあの鉢植えはあまり見ないものだし何より花を咲かせなかった。
花言葉を調べようにも何という花かわからないし。
あの時は“紫”だからなのかとも思ったけど。

「少し意味深にするぐらいがいいのです」
「……まさか俺がわからないのをわかった上でわざと、ですか?」
本来の待ち合わせ場所まで着くとラクスはまたくるりと回って今度はこちらを向いた。
「ラクス」
「はい?」

とても楽しそうな彼女に何と言っていいのやら。でも俺も楽しくなっていた。
彼女が俺を見て表情を変えれば、俺も変わって。その反対もあって。

「ずっとあなたに」
昼を告げる時計の鐘が鳴り響いてラクスの言葉は最後まで聞こえなかった。


それがもしかしたらあの鉢植えの答えだったのかもしれないけど、聞き返す事はしなかった。
答えはラクスであり、俺なのだから。はっきりとした答えがなくても一緒にいれば自ずとわかるものだ。


「買い物に行きましょうか」
「はい。アスラン、欲しい物考えてきました?」
「それがなかなか……」

言いにくそうにしているとラクスは俺の手を取り、歩きだした。

「では探しましょう?一緒に」
「はい」


嬉しさにも、時には悲しみにも寄り添って。
見つけた答え。



H19.10.29




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