箱の中に詰められて
「ん……いてっ」
目を開けたはずなのに視界は暗く、動こうにも体は丸まったまま身動きを何かに阻まれた。
「何だ……?」
見回せる体勢でもないが見回さなくてもわかる。
狭い箱か何かの中に閉じ込められている。
あいにくいつ意識を失い、こうなったのか記憶にない。
終始微動に揺れてる事から運ばれているのか……?
「おい!何で俺をこんな所に閉じ込めて…いたっ!」
声を張り上げ、外にいるであろう誰かに言った。
言い終わる前に下に落ちる感覚がし、強い衝撃。
何か反応するかと少し待ったが再びの浮遊感に微動な揺れ。
「はぁ……」
窮屈な箱の中でため息を吐いた。
クリスマスだというのに何でこんな事に。
「そうだ。俺はラクスへのプレゼントをどうしようかと考えてたんだ」
そこから記憶がない。
キラに相談しに行って……
「ラクスに聞いたならいいじゃない」
「でもな……」
「女の子にそこまで言わせて迷うならかっこ悪いんじゃない?」
「なっ!?」
「でも」
呆れたような態度だったキラが何度か見た事のある怪しい笑顔を見せた。
ぱっと見は変わらない。
でも楽しそうに、何かをたくらんでいるようで。
「よ、用事があるのにいきなり押しかけて悪かったな」
雲行きが怪しくなり俺は立ち上がった。
いや、立ち上がったはずだった。
「……キラか」
こんな状況でも全く慌てない自身は何となくわかっていたのかもしれない。
じゃあ、今運んでるのもキラという事だろうか?
しかしどこに?
何のために?
せっかくのクリスマスを邪魔した俺を葬ろうと?
箱に詰めるよりその場でやった方が……って、だめだ。思考が変な方向に行っている。
本気でこんな事は思ってない。
冗談でも考えなきゃやっていられないじゃないか。
「ラクス」
名前を口にするだけで寂しさが増す。
暗い、暗い箱の中。
狭い、狭い箱の中。
なのに、寂しさは大きくて。
「ラクス」
同じように口にして、目を閉じれば先程の寂しさはなくなる。
“私は歌をうたいます。貴方の中で私は流れるのです。私は、私を貴方の中に……だから”
暗い、暗い箱の中。
狭い、狭い箱の中。
目を閉じれば歌が流れる。ラクスがくれた歌。
歌と共に浮かぶのは振り返る彼女。流れるような動作は現実のようだけど、少しぎこちない。
優しく微笑んで、歌を唄い俺を待っている。
「ラクス」
「はい?」
一瞬、自分の中のラクスが返事をしたのかと思った。
目を開ければ同時に視界が明るくなり、こもった空気は出ていった。
「メリークリスマス」
見上げれば、彼女が微笑んでいた。
「アスランがクリスマスプレゼントなんて素敵ですわ」
あのあと箱から出た俺はそこがラクスの家なのだとわかった。
いつのまにか目的地に着いていたらしい。
入っていた箱はリボンや包装紙でラッピングされていた。
随分と手がこんでいるような……。
結局クリスマスプレゼントは用意できていない。
「ラクス、クリスマスプレゼント用意できなくてすみません」
「私はアスランをくださいなと言ったのですから」
「いえ、そうじゃなくて」
そう。ラクスは俺が欲しいと言った。
別に変な意味はない。そういう関係にはもうなっているわけだし。
「俺は……もう、ラクスのものというか。すでにあげてるものなのでという意味なんですが」
さすがに恥ずかしくなってきて顔を下に向けて言った。
ものというのも変だが俺はラクスから離れるつもりもなければ、離すつもりもない。
と、言えればいいのに誤解されてないかが心配になってくる。
「ラクス……?」
目線をあげながら呼び掛けるとラクスは少し驚いたように俺を見つめていた。
少しの間のあとラクスは口を開いた。
「こんな嬉しい言葉をいただいていいのでしょうか?ずっとアスランは私の中にいるのに、貴方は……」
そっと頬に触れてきた手は少し冷たくて、ほてった顔には心地よかった。
“だから、私の歌が聞こえたなら戻ってきて下さい”
それは昔彼女が言った言葉。
「俺の中でラクスの歌が流れ出した時から、俺はずっとラクスのものです」
「……はい」
「だから」
「はい?」
頬に触れ続けるラクスの手をにぎった。俺の言葉の先を待ち、ラクスは首を傾げる。
「クリスマスプレゼントは何がいいですか?」
「アスランが欲しいですわっ」
やっぱりそうなんですかと言う前に抱き着かれて倒れた。
欲しいと言われて抱き着かれるなんてまるで貰ったみたいだ。
「メリークリスマスですわ」
そう嬉しそうに言うラクスを抱きしめた。
箱の中に詰められて
想い浮かぶのは
君の歌、髪、振り返る仕種
そして笑顔
暗い、暗い箱の中
狭い、狭い箱の中
寂しさの中で
流れるのは君の歌
くれた想いを
あげた想いを
互いの箱に詰めて
大事に抱えて
何度でもプレゼントする
箱から溢れて想いは
君に触れて伝える
H19.12.25
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