君のいる冬


 


君のいる冬を知って、君のいない冬を知った。


「マフラーを編もうと思うのですが、アスランは何色がいいですか?」
「そう……ですね」

少しの間のあと思案げにそう言うとすぐに答えに繋いだ。
わずかなその間に昔の自分の答えを思い出した。

「あまり目立たない色なら……」
「わかりましたわ」

正直あまりマフラーを使用する機会は少なく思えた。寒さにはある程度耐えられるし、軍服も薄手ではない。
でも彼女の好意を払う事はしたくなかった。
だからせめて付けやすい色をと思って言ったのだ。



しばらくしてマフラーはクライン邸を訪問した帰りに手渡された。訪問する回数も減り、次の冬に渡された。

「送ろうと思ったのですが直接お渡ししたくて。遅くなってすみません」
「いえ、いただけて嬉しいです」

マフラーだと告げられたラッピングされたものをそのまま受け取った。
手づくりのものなのにまるで何かの形式に則るような受け取り。



帰りの車の中でふとマフラーを巻いてみた。車の中なのだから暖かい。外も寒いわけでもない。
それでも彼女の微笑みが、彼女と話しながら飲んだお茶が、彼女との時間を思い出させるようで。
ここに彼女はいないのに。
暖かいのに寒いのは何でだろう。

そばにいた君を思い出すとこんなに暖かいのは何でだろう。

その時のマフラーの色は深い青だった。


「ピンクがいいです。淡いピンク」
「ピンク……ですか?」

意外だと言うように確かめるように聞いてくるラクス。あまりこういったラクスは見れないから貴重だ。

「昔雑誌で見たんですよ。ラクスがつけていて暖かそうだなぁと思って」

まぁと言いながら口に手を宛てるラクス。実際あまり俺は雑誌とかは見なかった。たまたま見かける機会があっただけ。

「でもそれを身につける事ができるのですか?」
「え……も、もちろん!ラクスの手編みなら七色だろうと蛍光色だろうとつけます!」

試すような表情に負けないように言い切る。さすがに言い過ぎに感じるが嘘ではない。

「暗がりでは光るようにしてみましょうか」
「事故に合わずにすみますね!」

くすくすと笑うラクスにからかわれたのだとわかる。わかってはいてもこう答えてしまうのは性格だ。

「では一緒に毛糸を買いに行きましょう?」
「はい!」


君のいない冬を知って、君がいた冬を知った。

それを編んでる時間は俺の事を考えていてくれたのだろうか。
どう渡そうかとか悩んでくれたのだろうか。

一編み一編みに俺の知らない気持ちがあって、一秒一秒に俺の知る君が思い浮かぶ。


この冬は君の手から巻かれるマフラーと握る手で暖かいのだろう。

君のいる冬はこんなにも暖かいんだ。



H20.1.12




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