同じようで違う日を君と二人で


 


「キラ、変なところないか?」
「うーん」

軽く聞いた事なのに、キラは顎に手をあてて俺の全身を眺める。

「いつも変だからわからないね」
「それが言いたかっただけか」
「あれ、怒らないの?」

息を吐いて顔を横にそらすとキラが不思議そうに聞いてくる。
いつもの俺ならツッコミをいれているところだ。いや、俺は別にツッコミがしたいわけでも、ツッコミ役でもないが。
でもそれをせずに余裕にかまえているのが不思議なんだろう。

「今日はアスランの誕生日で今からラクスのところに行くんだよね?」
「ああ。つっ!?」

突然キラに頬を掴まれたあげく伸ばされた。
その手をすぐにふりほどくが頬にひりひりした痛みは残った。

「何なんだっ」
「いつもならあわあわしてそうなのになって」
「いつもとは違うんだ」

余裕の笑みを残し、キラの家をあとにした。
今年はいつもとは少し違っていた。なぜならば、俺から誕生日にほしいものをお願いしておいたからだ。
先程キラが言っていた事を思い出す。いつもなら慌てたりしどろもどろになってしまったりする。それは何故だろうと考えた。
ラクス相手だから?
もちろんそれもなる。
ラクスを前にして冷静でいられるわけがない。
だが冷静に平静で余裕のある俺もいるのだと知ってほしい。

「ラクス」
「お誕生日おめでとうござ……」

ラクスの家を訪ねるとラクスが笑顔で出てきた。
開口一番に言おうとしていてくれたのだろう。祝いの言葉を言いかけて、口を手で押さえていた。

「誕生日おめでとう、アスラン」
「ありがとう」

言い直された言葉に笑顔で返す。
俺がラクスにお願いした事。それは今日一日は敬語を使わないでほしいというものだった。


『でも私だけですとすぐに戻ってしまいそうですわ』
『それなら大丈夫です。俺も使いませんから』


俺だけ敬語を使わなければいい話だが、それをいきなり実行する自信がなかった。
だからラクスも敬語を使わないでくれれば俺も使わずにいられるかもしれないと思ったわけだ。

「誕生日ですから……だから、ケーキを焼いてみたんで……みたの」

あらかじめカットされていたケーキを差し出しながら言ってくれるが、おかしい。
変な意味ではなく、律儀に言い直しながらも守ってくれるラクスがいつもと違う感じがして、それが可愛く感じた。

「どうぞ」
「うん、美味しい」
「よかった……わ」

白いクリームとイチゴというシンプルなケーキだが美味しい。
ケーキも嬉しいがやはりラクスの話し方が気になって仕方がなかった。
本来なら“よかったです”と言うところだがかろうじて止めたようだ。
止まりきらずに“わ”がついてしまったというところだろうか。

「ラクス、ハロの調子は大丈夫か?」
「は……ええ、大丈夫よ」
「よかった。それと今度、行きたい場所を決めておいてくれ」
「わかり……わかったわ」

つい聞きたくていつもより話し掛けてしまう。
そういえばラクスが敬語以外で話すところを見た事がなかった。
俺と違って常にその口調ならばこうなっても当たり前なのかもしれない。

「アスラン……いじわる、よ」
「“よ”はなくてもいいんじゃないか?」

ラクスが気付いたらしく恥ずかしいのか怒っているのかわからない表情で見てくる。
それがまた可愛くて笑みが自然と浮かぶとラクスの頬が少しだけ膨れた気がした。

「たまにはよくないか?」
「よくない……ですわ」

ついに我慢できなかったのか口にしてしまい、あっと言う前に口を押さえた。

「ラクス?」

俯いて黙ってしまいさすがにやりすぎてしまったかと思った瞬間、ラクスは勢いよく立ち上がった。

「アスラン」
「え、ぅわっ」

ラクスが身を乗り出し、両肩を掴んだと思ったら唇に何かが触れてきたのは一瞬だった。
一瞬のあとは長くも短く、唇と舌が触れ合う。

「よくないですけど、いいです」

ラクスの顔が離れるといつもの微笑んでいる彼女がいた。
一瞬だったはずなのに顔が熱い。長いキスだったはずなのに俺はされるがままで悔しい気持ちと違う気持ちがあった。

「どっちなん……だ」
「今、敬語になりかけましたわね」

ラクスからあんなキスをされるとは思わず少なからず動揺してしまった。

「今度は一日敬語禁止で、使ってしまったら罰ゲームとかはどうでしょう?」

ラクスも先程までこんな気持ちだったのだろうか。
悔しいのに嬉しい。好きだから振り回されてしまう。でもそれは相手も同じで振り回されてるとかそんなのじゃないのかもしれない。

「望むところだ」


同じようで違う日を君と二人で。
それはずっと続く二人の記念日。



H20.10.29




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