君が頷いてくれるなら僕はまだここにいよう。


 


少し後ろに下がれば見えるかな。
それとも君に背を向けて来た道を歩けばいいのかな。
君が見えないんだ。

「……ラ、キラ?」
「ん……まぶし」

目を覚ますと僕を呼ぶ人の姿が窓から強く差す陽で見えない。
わかるのに、見えない。

「ごめん。今閉めるな」

カーテンを閉める音が聞こえ、目をこするとはっきりとその姿が視界に入る。

「おかえり、カガリ」
少し笑っていうとカガリは赤くなって頷いてくれる。
「こんな所で待ってどうしたんだ?」

カガリの仕事部屋ともいえる部屋。いる時もあるけど僕が来るといない事が多い。
カガリが普段座っている椅子に座り、待っていたら机に伏して寝てしまっていたみたいだ。

「キサカさんに聞いたらすぐ戻ってくるって言われたから」
「私が聞きたいのはそうじゃなくて、何か用があったのかって事だ」

横に立っているカガリに抱き付く。胸に頭を押しつけると何だか甘えてるみたいだ。

「何かあったのか?」
「ううん。カガリにおかえりって言いたかっただけ」

僕がそう言ったきりカガリも僕も何も言わなくて、僕はカガリから離れなくて。
頭を軽く叩かれて撫でられると余計離れられなくなった。

「ただいま、キラ」


彼女のかえる場所でありたい自分。
彼女をどこにもかえしたくない自分。
少しだけ位置をあげてしまえば変わってしまうのだろう……何もかも。
君の音を聞いている僕。
位置をあげればきっとその音を奪ってしまいたくなる。
僕だけで生きればいい、と。


「もう少しだけこうしててもいい?」


君がまだ触れてくれるのならこの音を静かに聞いていよう。
君を見ずに君を感じていよう。
君が頷いてくれるなら僕はまだここにいよう。



H18.2.9



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