一歩手前の幸せ


 


結末はわかりきった現実。


「カガリ、入るよ?」

ドアを開くと誰もいなかった。
ここにいると聞いていただけに姿さえ見れず落胆する。

「あ……」

部屋に足を踏み入れるとソファの寝転がり寝息をたてている少女を見つけた。
落胆した気持ちがすぐに浮上する。
後ろに下がりドアを閉めてからソファに近付く。

「ん……」

起きてしまったかと足を止めて様子を見てみる。
まだ起きてはいないみたいだ。
目の前まで近付き床に膝をついた。

「……カガリ」

声が出ないぐらいの息を吐くだけぐらいで少女の名を呼ぶ。
顔にかかる髪を触れながら流す。カガリは僅かに動くけど目は開かない。
気がつけば唇を重ねていた。
それはほんの少しの悪戯心。でもこのあとはわかりきっている。
少しだけの期待。
触れるだけのキスをして離れる。
きっと見えないけどまだ目を開かない彼女にふっと笑いかけた。
それ以上を望まないと言ったら嘘になる。
望めばわかりきった現実が訪れる。
訪れて去る君。
それはとても幸せで悲しい未来。

「昨日来たんだけどカガリ寝てたみたいだから、何も言わずに帰ったんだ」


昨日来たかという問い掛けに明るく答える。
知っている。
僕も君も。
この嘘を真実としていかなければいけない事を。
遠くて近い君だから。
一歩手前の幸せの中で笑っていよう。
その先は哀しみに溢れた幸せなのだから。



H18.2.28



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