僕と彼女の感謝
生まれた日に感謝する
何に対して?
そうだね
僕は……
「キラ?」
「あ、何?」
隣にいたカガリに呼ばれて我にかえった。
店のショーウインドウの中を眺めたまま、ぼーっとしてしまったみたいだ。
「これが欲しいのか?」
眺めていたと言っても別に物を見ていたわけではなかった。
でも見ていたのに欲しいわけじゃないと言えば不審に思うだろう。
カガリの事だから何かあったのかとか聞いてきそうだ。
「あっ、何笑ってるんだ」
「別に。カガリだなーと思って」
自然と浮かんだ笑みを向けながらカガリの頭を撫でる。
こんな風に誰かの事を考えるのは楽しい。それは彼女だから。
でも彼女には僕の事を考えてほしくない。
きっと彼女の中の僕は違う僕だから。
その自分にすら嫉妬してしまう。
「カガリがこういうの欲しいんじゃないかと思って見てたんだ」
ショーウインドウには可愛らしいぬいぐるみが飾られていた。
店内の装飾も可愛らしい。
「何でそう思うんだ?」
少し不機嫌そうな表情。でも決して不機嫌なわけじゃない。
「あまりこういうの持ってないでしょ?」
「持ってないのは欲しくないからかもしれないじゃないか」
視線を僕から逸らしぬいぐるみ達をチラリと見て、地面に移す。
「そうだね。でも僕も持ってないけど欲しくなってきたかな」
抱きしめたら気持ちよさそうなぬいぐるみ達。ふわふわした中身が全てを受け止めるように、凹んだ体が自身を表すように。
ぬいぐるみは好きだけど嫌いでもあった。
触られるだけ、抱きしめられるだけ。寂しいような気がした。
「カガリ、色違いで買おうか?」
「えっ、でも」
渋るカガリをいいからいいからと手を引き店内へと入った。
なんだかんだ言いながらいくつかカガリにこれは?と聞いてみると大きさや色、質感と色々こだわった。
明日が互いの誕生日というのもありお互いの物を買い、預かる事にした。
深夜、カガリの部屋の前。ノックをするかためらう。
日付が変わるにはまだ少しだけ早い。
「わっ」
「……キラ?」
目の前の扉が突然開き、驚いて後ろに後ずさる。
カガリの視線は僕の持つ包みへ。僕の視線もカガリが持つ包みへ。
「同じ事考えてたみたいだね」
「そうみたいだな」
そう言ってカガリは扉を大きく開き招いてくれた。
「ありがとうな、キラ」
「何が?」
「私こんなだろ?だからあまりこういうの貰ったり買ったりもしなくて」
「やっぱり欲しかったんだ?」
少しからかう風に言うとカガリは少し顔を赤らめ顔を逸らした。
「……ありがとう、カガリ」
何に対して礼を言われたのかわからず不思議そうに僕を見るカガリ。
聞かれる前に僕は包みを差し出した。
もう日付が変わる。
「誕生日おめでとう」
カガリは僕から包みを受け取ると、僕にも包みを差し出す。
「キラ?……っ」
包みに手を伸ばしそのまま少し止まる。
そしてその手でカガリの腕を掴み引き寄せた。
呼び掛けられたみたいだけど僕はカガリをただ抱き締めるだけで、何も言えなかった。
少ししてカガリも僕を抱き締めてくれた。
僕は一言だけありがとうとだけ呟いた。
「カガリ、今日もいい天気だよ」
「ん……キラ?」
部屋のカーテンも開けると陽が差し込み、カガリは眩しそうに目を細めた。
まだ眠そうだ。
「カガリ」
「ん〜?」
「好きだよ」
「なっ!?」
目を見開き驚くカガリ。笑いながら僕は部屋を出た。
部屋からは僕を呼ぶ声が聞こえる。その声にまた笑った。
感謝する
僕が彼女を抱き締められる事に
彼女が僕を呼ぶ事に
抱き締められる事に
呼ぶ事に
告げられる事に
まだ伝えられない想いを抱いて
僕はまた感謝する
H18.5.19
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