苦みと未知の甘み


 


「キラっ!」

勢いよく差し出されたのはあからさまな箱。
今日はバレンタイン。何かはすぐにわかった。

「何?」

でも少しいじわるをしてみたくなるんだ。
だってそんな格好してたらしたくなるじゃない?

「だ、だからっ今日は……」
「今日は?」

箱を持って真っ直ぐ伸ばされた腕はそのままで、カガリは顔を赤らめて口をぱくぱくさせていた。
カガリがスカートを履く事が少ない。動きにくいという理由があるみたいだけど、前に自分には似合わないからと言っていた。もったいないと言ったら怒られたりもした。

「いらないならいいっ!」
「僕にくれるの?」

箱を引っ込めると同時に拗ねるように顔を背ける。
僕が知らないはずがないと思ったのだろう。
そう、この日を知らないはずがない。

「ごめん……不謹慎だった」

カガリの顔から赤みはひいていた。
普段は着ないであろうフリルの服。
予想していなかった事につい自分を隠すようにいじわるを言ってしまった。

「チョコ、だよね」
「え……あ、あぁ。キラ?」

僕はカガリの後ろへ回ると隠すように引っ込められた箱を取った。

「あ!勝手に取るな」
「一度は僕に差し出されたものでしょ?あれ?これ……」

取り返そうと手を伸ばしてくるカガリから遠ざけるように手を向ける。
そして箱をよく見てみるとリボンの結びが少しいびつだった。

「返せ!」

カガリは僕の背中に抱き着くように脇から手を伸ばす。前に回りこめばいいのにそんなところも可愛いと思ってしまう。

「手づくり?」
「う……悪いか!」

見えなくても恥ずかしそうにしてるのがわかる。
それでも僕からは離れず、箱を取ろうと伸ばされていた腕は僕を抱きしめた。

「キラはやっぱり意地悪だ……」
「ごめんね。カガリはやっぱり可愛いから」

照れて背中に埋められた顔は熱かった。見たいけどこの腕は離してくれないだろう。

「チョコ、一生懸命作ったんだからな」
「うん」
「でも旨くなかったらごめん……」
「大丈夫だよ。カガリと一緒に食べるから」
「なっ!?ば、ばか!」

顔が背中から離れてカガリにそう言われる。
何か変な事を言ったか考えるとすぐにわかった。

「カガリはチョコのあとにね」

カガリは何も言わずに再び背中に顔を埋めると僅かに頷いてくれた。


意地悪をしてしまうのは
ない余裕を作るため

意地悪をしてしまうのは
ある可愛さを見せてほしいから

片方は甘くなくて
片方は甘い

まだ完全な甘さには辿りつけないけど
少し苦い方が僕らしい

甘さは君の中にあるから
全て欲したなら
どれだけの甘さが待っているのか
それはまだわからない



H20.2.21




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