余裕なんてなくて


 


「どうやったらキラみたいに余裕持ったように見えるんだろうな」
「何だかその言い方だと僕が余裕がないのに余裕だと見せてるみたいじゃない?」

カガリは肩肘をついて僕をジッと見ていた。見透かしたいのか射抜きたいのか。
きっとどちらでもないのだろう。

「余裕がなさそうなのに余裕に見えるからな」
「そうかな」

特に意識してるわけじゃない。顔にでやすいせいか段々と出さないようにしつつもある。

「怒らないんだな」
「何で?」
「余裕がないとか言われてるんだぞ?」

さっきよりも更に不思議そうにするカガリ。
勿体つけるように宙に視線を漂わせてみる。しばらくそうしてれば怒りながら呼んでくる。
予想通りの反応に笑いながら歩み寄って机に軽く腰掛けた。

「行儀悪いぞ、キラ」
「ちょっとぐらい許してよ」

それでも許してはもらえず、寄り掛かる程度にする。

「僕にはそんな事聞く理由がわからないな」

カガリに背を向けた状態で僕は少し上を見上げた。

「自然と身についちゃうものだし、カガリは表ではしっかりしてるし」
「どういう意味だ!」

怒ったカガリが今度は軽く拳を背中にぶつけてきた。
今度は声を出して笑ってしまい、もう一度拳をあてられる。

「カガリには余裕がない事ばれちゃってるし、一緒じゃない?」
「あ……」

軽く振り返るとカガリは口を開けて僕を見上げていた。
すぐに口を閉じて口端を上げて笑う。

「そうだよな!私にはキラの余裕のなさがわかってるんだから一緒だよな!」
「そんな嬉しそうに言われると複雑」

今度は手の平で数度背中を叩いてくる。
凄く軽くのつもりなんだろうけど前のめりになりかけるぐらいの威力だ。

「でも顔に出やすいのは違うからね」
「……キラって意地悪だよな」

喜びは一瞬で消え去る。ジト目で見られるのもいいものだ。

「そんなカガリも可愛いよ」
「褒められても嬉しくないし、机に乗るな!」

さっきよりも深く腰掛けてカガリの顎を指先で上げた。
その行動に驚いて口をぱくぱくと開閉させていた。段々と顔の赤みも濃くなる。

「悔しかったら僕の余裕をなくさせてよ」

悔しいのか口を引き締めている。すぐに顎を上げていた手を掴み取られて、そのまま引かれた。

「一緒に余裕がなくなるんだからな」

唇が重なる手前で呟かれた。だから僕もそうだねと小さく呟いた。
カガリは僕の手を掴んだまま、椅子から立ち上がり僕に近づいた。



H20.9.25



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